【動画6分】出演者0名のダンス公演に挑む長谷川寧にインタビュー/演劇人に聴いてみる vol.001
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長谷川 寧(冨士山アネット主宰)
エントレのインタビューシリーズ「演劇人に聴いてみる」の第一回目。2月に行われる観客参加型公演「DANCE HOLE」に挑む長谷川寧(冨士山アネット主宰)に話を聴いてみた。
今回から始まったエントレのインタビュー企画「演劇人に聴いてみる」。第一回目の演劇人は冨士山アネットを主宰する長谷川寧に、劇団を立ち上げたときのこと、最近のこと、次回行われる観客参加型公演のことなど、いろいろと聴いてみた。【動画6分】
長谷川寧と言えば、2015年11月に森山未來主演の舞台「死刑執行中 脱獄進行中」の企画・構成・演出・振付を手掛け、銀河劇場をはじめとした全国ツアーを成功させて、好評を博したばかり。
森山未來主演舞台「死刑執行中脱獄進行中」舞台写真 撮影:生井秀樹
長谷川寧
「企画から公演に至るまでに4、5年くらいかかったんですよ。ようやく去年公演をさせてもらって。自分がまだまだこういうサイズの作品をやるっていうことについて、すごく勉強になりました。みなさんに作ってもらった公演という感じでした。」
■冨士山アネットについて
―――そんな長谷川が主宰するユニットが「冨士山アネット」だ。冨士山アネットはどのようなキッカケで生まれたのだろうか?
長谷川寧
「学生時代に劇団をやっていたんですが、もうちょっとパフォーマティブなことをしたいと思って冨士山アネットを作ったんです。」
冨士山アネット「PiNQ(2005)」
―――当初はせりふを使ったものも上演していたが、次第にダンス色、パフォーマンス色の強い作品に移行してゆく。
長谷川寧
「ダンスに移行したっていう意識はなくて。国内外問わず外国人にも見られる作品ってなんだろうとか、せりふがない、ノンバーバルなものならお客さんは見やすいだろうっていうのがあり、せりふの無い作品を作ったんですね。」
冨士山アネット「火星の生活(2005)」
―――それがこの「火星の生活」だ。しかし長谷川にはひとつの葛藤があった。
長谷川寧
「せりふの無い作品だと、俳優がただやるだけだと、下手なマイムになってしまう。それだったらダンサーの方にも、マイムをやる方にも失礼だと思ったんです。俳優がダンサーに勝るものって何だろうと思った時に、いい意味で だらしない体をパンっと出せるっていう、感情を爆発させる表現は、俳優さんっていいなと思ったんです。
台本を書いて、読み合わせをして、せりふのダメ出しとかまでして、その関係性を元に感情をどんどん誇張していって動きをやり取りするっていうことをやっていったんですね。」
FujiyamaAnnette ×Dance Theatre 4P「The Absence of the City(2013)」 写真撮影:生井秀樹
―――独特な手法を元に、冨士山アネットは創造的なビジュアルを次々に生み出し好評を博していく。2012年からは韓国カンパニーとの共同制作を行うなど、国内外を問わず活躍の幅を広げていった。
■新作は出演者0名の公演!?
―――そんな冨士山アネットの次なる挑戦は、出演者0名、制限時間60分、観客は各回10名限定という観客参加型の公演。
「DANCE HOLE(ダンスホール)」と名付けられたこの公演は一体どのようなものになるのだろうか?
冨士山アネット「DANCE HOLE」フライヤー
長谷川寧
「体験型とか参加型とかいろんな作品があるんですけど、例えば美術館とかも参加型ですよね。インスタレーションとかでは人がいる場合もありますけど、基本的には人がいない。この場合はお客さんが能動的に動くじゃないですか。最近で言うとリアル脱出ゲームとかもそうですね。」
―――ワークショップとは違うのでしょうか?
長谷川寧
「ワークショップではないですね。リアル脱出ゲームに参加している人もワークショップとは思っていないでしょうし。でも、ある種のルールがあるゲーム的なものなのかもしれないです。ただ、僕は現実っていうものをどう考えるのかっていうのはやりたいことなので、そこは向き合おうと思っています。」
長谷川寧
「お客さんによってはダンス初心者なんですけど大丈夫ですか?とか聞かれることがあるんですけど、それは全然大丈夫です。『さあ、踊ってください。』っていう作品では絶対にない。能動的な気持ち自体は持った方がたぶんこういう作品は楽しめると思いますけど、だからと言って能動的にリズムをとってもらおうというつもりも、こちらとしては無いです。
ダンス公演とか、ダンスってなんだろうって考えること、現実に即して何ができるのか。何かがお客さんそれぞれに返るものにしたいと思っています。リアル脱出ゲームとはまたちょっと違う、ある種フィクションで完結しないものとしてお客さんに残したいなと思っています。」
インタビューに答える長谷川寧
ダンス未経験の筆者としては、『踊ってくださいとは言わない』と聞けてずいぶん安心したが、それでもまだこの公演の全容はおぼろげにしか見えてこない。ただ、長谷川氏からはお客さんに楽しんでもらい、エンターテイメント体験を持って帰ってもらいたいというサービス精神を強く感じた。
なかなか前例のないであろう出演者0名の公演。思い切って飛び込んでみると新しい世界が見られるのかもしれない。
本作は2月4日(金)から横浜で、3月18日(金)から京都で公演される。
詳しくは冨士山アネットの公式サイトで。
舞台「ダンスホール」公式サイト
(映像中の音楽:DIVA SYNDROME
See You Again (+Remix) 作曲:Kimy
The Sun Was Slowly Sinking 作曲:brightwaltz)
(写真撮影:長谷川美津子、映像撮影・編集・文:森脇孝/エントレ)
舞台「DANCE HOLE」
【日程】2016年3月18日(金)~3月21日(月)/京都(本公演) ARTZONE