「静かなだけではない」禅の世界に感じた戦い 上坂すみれが音声で案内する、特別展『大徳寺』の魅力

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インタビュー
アート

特別展『大徳寺 本朝無双之禅苑』ナレーター・上坂すみれ

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京都紫野の地に七堂伽藍を構える「大徳寺」。その開創700年を記念した特別展『大徳寺 本朝無双之禅苑』が、2026年10月14日(水)から12月6日(日)まで東京国立博物館 平成館で開催される。禅の厳かな世界、名僧たちの足跡、茶の湯や水墨画をはじめとする数々の至宝――。その魅力を音声で導くナレーターを務めるのが、声優・アーティストの上坂すみれだ。
「禅の世界は、ただ静かなだけではない」。大徳寺に連なる僧たちの波乱に富んだ人生や、作品に刻まれた歴史に触れ、上坂が感じた“精神的な戦い”とは何だったのか。ナレーションで大切にした「聞き疲れしない声」へのこだわり、そして初めて大徳寺展を訪れる人にこそ音声ガイドを勧めたい理由を聞いた。

特別展『大徳寺 本朝無双之禅苑』

多くの人々の尽力があったから、歴史が刻まれてきたと感じた

――今回、音声ガイドのナレーターを担当されると聞いたとき、どのように感じられましたか。

こうした展示の音声ガイドを務めさせていただく機会はめったにないので、すごくありがたいと思いました。一方で、私は禅にあまり馴染みのない生活をしているので、どのようなガイドになるのだろうという思いもあって。初心者としての気持ちを持ちながら、楽しみにしていました。

――実際に担当されてみて、いかがでしたか。

本当に、初めて触れるものがたくさんありました。今回は貴重な品々が数多く公開されるそうですが、背景を知らずに見るのと、音声ガイドを聞いて「こういうものなのか」と知ったうえで見るのとでは、印象が大きく変わると思います。水墨画やさまざまな絵画、茶の湯を彩った椀などを通して、多くの人々の尽力があったからこそ、大徳寺の700年の歴史が刻まれてきたのだと、あらためて感じました。

――大徳寺は1326年に開創され、長い歴史を重ねてきた寺院でもあります。

そうですね。幕府など、その時々の権力ともうまく関わっていかなければ、お寺の存続そのものが難しくなる。かなり波乱に富んだ歴史を持つお寺だったことが分かりました。

僧侶も、ただ禅を追求するだけではなく、寺を運営していくことが必要だった。そのなかで数々の素晴らしい名品が生まれたということが、とても印象に残りました。ぜひ実物を見てみたいですね。

上坂すみれ

――音声ガイドのナレーションは、アニメーションや映画での声優としてのお仕事とは、また違う雰囲気だったのではないかと思います。言葉の温度や間合いなど、意識されたことはありますか。

音声ガイドはいろいろな方が聞かれるものなので、まずは聞き疲れしないトーンを意識しました。重すぎず、軽すぎず、聞きやすく、鑑賞の邪魔をしないことを一番大切にしました。

今回は初めて聞くような言葉も多いと思うので、そうした部分をはっきり伝えられるように心がけました。私自身も文章を理解しながら読んでいく感覚でしたし、声優としてお芝居をすると気持ちが入りやすくなるのですが、今回はナレーションとして、みなさんが静かに鑑賞できるよう、あまり癖を付けないことを意識しました。

――上坂さんご自身は、美術展に行かれる際、音声ガイドを利用されることはありますか。

使ったことはありますし、使わずに自由に、自分が気になったものを見て回るのも良いと思います。今回の音声ガイドは、私のように日本史や禅に普段から触れていない方には、すごく助けになると思います。ある程度見どころを絞って作られているので、展示のハイライトがとても分かりやすいのではないでしょうか。

自分の精神世界や芸術性と向き合い、戦った人々の軌跡

――先ほど、禅にはあまり触れてこなかったとお話しされていましたが、あらためて大徳寺の禅の美は、上坂さんの目にどのように映りましたか。

大徳寺にゆかりのある仏像や、禅僧たちの人生をあらためてたどらせていただきました。例えば大徳寺の開山である宗峰妙超は、晩年に足を痛めて坐禅が組めなかったそうですが、死期を悟って無理にでも坐禅を組んだ、というエピソードがあります。

一休宗純も、かなり型破りな人生を送っていて、木剣を携えていたといいます。幕府と円滑な関係を保つために、僧侶たちがさまざまな努力を重ねてきたことも含め、とてもドラマがあると感じました。禅の世界は、静かに自分と向き合うものという印象がありますが、ただ静かなだけではない。禅寺ならではの戦いのようなものを感じる歴史でした。

――展示作品の中で、特に気になったものはありましたか。

そうですね。重要文化財の《百鬼夜行絵巻》は、色彩も鮮やかでポップな印象がありました。どこか漫画にも通じるような、動きのある絵で、かわいらしいなと思いながら見ていました。由来にも謎が多いそうなので、そこを考えながら見るのも楽しいと思います。

重要文化財《百鬼夜行絵巻》(部分)伝土佐光信筆 室町時代・15世紀 京都・真珠庵蔵 ※半期で巻替え

――最後に、上坂さんの声とともに味わってほしい大徳寺展の魅力を、読者へお聞かせください。

禅の世界と聞くと、少し難しいのではないかと思う方もいらっしゃるかもしれません。私自身、ナレーションをする前は「自分にできるのかな」と感じていました。ただ、作品を通して、過去に強く生きた僧たちの精神的な戦いの跡を感じられる展示だという印象を受けました。戦に向かうという意味での戦いではなく、自分の精神世界や芸術性と向き合い、戦った人々の姿です。

力をもらえるエネルギッシュな作品が多いと思いますし、初心者の方にこそ今回の音声ガイドをおすすめしたいです。ガイドを聞きながら、この作品がどのような歴史をくぐり抜け、今この場所で自分と出会えたのかを、強く感じられると思います。ゆっくり楽しんでいただけたらうれしいですね。

上坂すみれ

特別展『大徳寺 本朝無双之禅苑』の前売券はイープラスほかプレイガイドで販売中。


取材・文=加東岳史 写真=オフィシャル提供

イベント情報

開創700年記念 特別展『大徳寺 本朝無双之禅苑』
会 場:東京国立博物館 平成館
会 期:2026年10月14日(水)~12月6日(日)
※会期中、一部作品の展示替えを行います。
[前期]10月14日(水)~11月8日(日)
[後期]11月10日(火)~12月6日(日)
休 館 日:月曜日(ただし、11月2日、11月23日、11月30日は開館)、11月24日(火)
※11月30日は大徳寺展のみ開館(東博コレクション展は休館日のため観覧不可)
開館時間: 9:30-17:00
※毎週金曜・土曜日および11月1日(日)、11月2日(月)、11月22日(日)は20時まで開館
※入館は閉館の30分前まで
主 催:東京国立博物館、大本山 大徳寺、NHK、NHKプロモーション、日本経済新聞社
協 力:表千家不審菴、裏千家今日庵、武者小路千家官休庵
協 賛:大林組、住友不動産、TOPPANクロレ
展覧会公式サイト:https://daitokuji2026.exhn.jp/
お問い合わせ:050-5541-8600(ハローダイヤル 9:00~20:00)
※展示作品、会期、展示期間、開館時間、休館日、入館方法等については、今後の諸事情により変更する場合があります。最新情報は展覧会公式サイト等でご確認ください。
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