adieu「またここから生まれ直す、リボーンな感じがする」――新曲「ささくれ」制作の過程で何を感じたのか、現在地を訊く
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adieu 撮影=菊池貴裕
adieuが新曲「ささくれ」を9月25日にリリースする。前作「Wanna me」からわずか2ヵ月という短いタームでのリリースについて「現在地点を皆さんに届けられることは嬉しい」と語る彼女。アニメーション映画『我々は宇宙人』の主題歌となっている本作について、どのように向き合い、そして制作の過程で何を感じたのか。adieuの現在地を訊いた。
――前作「Wanna Me」以来、2ヵ月ぶりになります。
はい。お世話になりました。いつもありがとうございます。
――前回のインタビュー後に、「Wanna me」はTVアニメ『本好きの下剋上 領主の養女』第2期のEDテーマとして流れ始めました。実際にアニメの画がついたものをご覧になってどう感じましたか?
やっぱり『本好きの下剋上』の画と自分の歌声がテレビから聞こえてくると、すごく嬉しい気持ちになりました。今までadieuという存在を知らなかった方にも作品を通して知っていただけるようになったなと実感しているので、すごく嬉しい巡り合わせだったなと思っています。
――オフィシャルYouTubeを見ると、アニメから来た人のコメントが多いですよね。
ね! 嬉しいですね。海外の方からもコメントをいただいて。そういう反応もすごく嬉しかったです。世界中で愛されている作品を通して adieuっていう存在を知っていただけたことはすごく大きいですし、作品の力にも助けられているなと思っています。
――そして、前作から 2ヵ月という短いタームで新曲がリリースされます。
やっぱり新曲を次々と出していけることはすごく嬉しくて。現在地点を皆さんに届けられると言いますか。新しい曲を更新していくたびに、“今のadieuはこういう感じなんだな”っていうのを感じていただけるのはすごく幸せだなと思っています。
――しかも、2作連続でアニメ作品とのタイアップになっています。
そうですね、何かの作品を通して音楽を紡がせていただくということは、すごく責任があるなって思います。やっぱり自分だけじゃない。歌を歌う時も、その作品の世界や登場人物だけなく、その作品に携わっていらっしゃる制作の方々も頭の中に浮かびますし、いつも以上に自分の歌の責任みたいなものは感じます。自分も歌うたびに、その作品からいろんなエッセンスをもらって想像力を広げていけるので、歌う上ではとても助けになるなっていうのは感じています。その物語が好きな方もadieuの曲を好きになっていただけるといいと思っているので、このような形で作品が続くことは、すごく嬉しいことだなと思いますね。
――ちなみにadieuさんご自身はアニメはお好きですか?
小さい頃から精通していたっていうわけではないんですけど、大人になってからアニメーションに興味を持つようになって。というのも、大学で映像の勉強をしていたんですけど、いろんなアニメーションの制作について勉強する中ですごく興味を持つようになって。特に今敏監督の作品がすごく好きで。
――『パプリカ』ですか?
私は『パーフェクトブルー』が大好きですね。幻想と現実が交差していくような描き方はアニメーションならではだと思いますし、実写映画ではできないこと、アニメーションでしかできないことや可能性がすごくあるなって実感しています。
――では、大学在学中にアニメ『未来のミライ』に声優として出演されていますし、現場を経験しながら、大学でアニメーションを学んでいた?
そうですね。座学での学びと現場での学びは全然違う種類のものですけど、多角的にアニメと向き合えるっていうのはすごく贅沢だなと思っていました。
――新曲「ささくれ」はアニメーション映画『我々は宇宙人』の主題歌となってますが、作品とはどんな向き合い方でしたか? 先に脚本やプロットを読みましたか?
初めて見せていただいたのが完全版ではないんですけど、ちょっと下絵とか、まだ色がついてない部分もあるようなもの。あれは何て言うんでしょう?
――いわゆるラッシュの状態ですね。
だから、余計に“あ、こんな風に物語が作られているんだな”っていうプロセスを肌で感じながら歌に向かっていけたっていうのはすごく大きくて。本当に人の手を感じる作りだったんですよね。この1秒とか0.5秒ぐらいに一体どれだけの時間と熱量が費やされているんだろう?って思いました。劇中では小学生の時代の描写が多いんですけど、自分が使っていた目覚まし時計とかスニーカーとか、全く同じものが出てきたりして。
――ええー! そうなんですね。
私、小学校の時に進研ゼミをやっていまして。それの特典だったか、応募してもらうものだったかは覚えていないんですけど、コラショのアラームを私も持っていました。自分が幼い頃の風景に触れるような描写がたくさんありましたし、とにかく記憶の中の描写が本当に細かくて。その一個一個がトリガーになって、自分にもあんな時間があったなとか、恥ずかしい思いをしたなとか、恐れていたなとか。アニメの中の一つひとつの描写がとても他人事とは思えないと言いますか。全部、自分の実体験のように感じられるようなリアリティがあったので、ものすごく胸に突き刺さって。きっとこれは、いろんな人にとっての追体験であり、自分の物語として咀嚼していかれるんだろうなという気持ちになりましたね。
――小学生時代のどんな思い出がよみがえってきました?
とても普遍的なことなんですけど、学校の教室の空気とか、机に絵を書いていたなとか。
――何を書いてたんですか?
(笑)彫ったりはしてないですけど、なにかの絵を描いてましたね。あと、友達と紙を折ってお手紙交換していたなとか、こういうジンクスは私の幼い頃にもあって、みんなで怖がっていたようなとか。そういうことが思い起こされて。何と言うんでしょう。今までにない映像の体験というか、すごく胸が苦しくなるような気持ちになりました。
――予告だけを拝見している段階だと、ノスタルジックさだけじゃない不穏な空気も感じますが、物語にはどんな魅力がありましたか?
主人公2人の少年の30年にわたる青春のノスタルジーなお話なんですけど、やっぱりどうしても生きていると忘れていってしまうこととか、ずっと覚えてトラウマみたいに突き刺さっていることとか、みんな人それぞれにあって。そういう気持ちのどちらも包んでくれるような物語だなと思いました。実は今作の門脇康平監督が今29歳ぐらいで、私が今26歳で。
――同世代なんですね。
そうなんです。同世代の方がこういう作品を生み出されるっていうこともびっくりしましたし、同世代だからこそわかるなっていう映像の中の空気感があって。自分がこういう形で携わっていなくても、絶対に見に行っていたし、絶対に自分にとって大切な作品になっていただろうなっていうぐらい、とてもいい出会いをさせていただきました。
――そして、主題歌「ささくれ」は、劇中の音楽も担当されているYaffleさんが手掛けています。Yaffleさんといえば、adieuさんの数多くの楽曲でアレンジを務めています。
実は、Yaffleさんが作詞・作曲、そして編曲全てをやっていただく曲は初めての経験だったんです。だから、いつも以上にYaffleさんのこの曲に対する愛みたいなものをすごく感じて。それをちゃんと受け取って、自分なりに表現していかないとっていう気持ちはすごくありました。
――楽曲を受け取って最初の印象はどうでした?
本当にいい曲だな~と思いました。賛歌っぽいというか。人は誰もが決して綺麗に生きてるだけじゃないと思っていて、過去の後悔とか、自分がやってしまったことに対する思いとか、そういうものを包んで背中を押してくれそうな曲だなって思いましたね。あと、《Hello hello goodbye》っていうフレーズをコーラスが繰り返すんですけど、そこにすごく希望を感じるというか……何て言うんだろう……「ナラタージュ」という自分のデビュー曲に《はじめまして/さようなら》っていうワードがあって、そこともリンクするといいうか。出会ってまた別れていくっていう、切なさをすごく感じる曲だなと思いました。
――前作に再録された人気曲「よるのあと」にも《さよなら》というフレーズがあるという話を前回のインタビューでもしたと思いますが、やはり“さようなら”を歌うことはadieuの原点で本質でもありますよね。
そうですね。もともと、“さようなら”っていうものから生まれたのがadieu(フランス語でさようならの意味)だったりするので。この曲を今のadieuとして歌えるっていうのも、これもまた現在地点だなと思ったりしました。これまでの曲であり、これからの未来の曲でもあるなって感じたし、adieuの中でも長い時間をかけて大事にしていきたい曲がまた生まれたと思いましたね。
――歌詞はどう捉えましたか? “君と僕”や“あなたと私”ではなく、《君と私》という人称や歌詞からは、昔の記憶を懐かしんでいる時間の長さを感じました。adieuさんはどんな人間関係や風景が思い浮かびましたか。
やっぱり、『我々は宇宙人』の中に出てくる小学3年生の翼と暁太郎っていう主人公の顔は浮かびましたし、《私》も《君》も同じ自分、過去の自分に呼びかけているようでもあるなと感じたりもしました。
――うんうん。
なんとなく、昔の自分に対して歌っているようにも感じる。自分の大事なものへの問いかけ、呼びかけのような気がして。でも、そこはいかようにも解釈できるのが歌の面白いところだなと思ったので、具体的にこの人であるとかっていうのは決めずに、フラットに解釈して歌えたらいいなと思いながら歌いました。
――歌詞にある《かさぶた》になっているような幼少期の思い出は何かありますか。
メキシコに住んでいた小学一年生の時に、入学式の朝にすごいウキウキしていて。高いところから飛び降りて、鼻にかさぶたを作ったことがありまして(笑)。そういうかさぶたを思い出したりとか。これはちょっと違う話かもしれないですけど。
――(笑)心ではなく、体の傷ではありますけど、小学校の入学式も一生に1回しかないですからね。
そう、かさぶたが残るって、すごく悲しかったなと思ったりはしましたね。大人になっても、何もしていないのに、気づいたらなんか擦れてて、かさぶたができていたりすることってあるなって思う。何か出血したところを止めるもの、自分を守ってくれるもの、みたいなニュアンスもあるなと思ったりして。時が経っても自分の中でズキリと痛むものという感じでしょうか。
――サウンド的にはストリングスも入った、スケールの大きいエモーショナルなサウンドになっていますが、レコーディングにはどんなアプローチで臨みましたか。
Yaffleさんを迎えてレコーディングするときは、すごくリラックスできて。Yaffleさんとのお付き合いも長いので、言葉を交わさなくとも分かり合えるような感じが徐々にできてきているなと思っていて。ディレクションもすごく端的ですし、わかりやすくいろんなことを教えてくださるので、割とそこに素直に応えていくような時間だったかなと思います。
――どんなディレクションがあったんですか?
「今、どういうことを感じてる」とか、「どういうテンションでいますか?」とか。そういうことを問われて。「今、こういう感じです」と答えると、「じゃあ次はもうちょっとこういうテンションでやっていきましょうか」っていう流れになる。いつも割と会話の中で確かめながら進んでいくっていう感じなんですけど、「ささくれ」に関しては歌い出しが――。
――歌始まりですよね。
アカペラっぽい感じで始まる。映画の本編が終わって、画面が暗くなってすぐ流れることを考えると、いつも以上に繊細に歌い出したいなという気持ちがあったので、歌い出しのテイクはかなり重ねました。何度も何度も話し合いながら、粘って録った記憶はあります。
――物語の主人公になって歌ったというのとは違いますか?
この曲に関しては、もっとじっとりとした自分の暗いところ……自分の内側にある暗がりから曲が始まっていくようなイメージがありましたね。ある意味、自分の心のままのモノローグみたいなところから、どんどんどんどん曲が広がっていくような感覚があったので、その入り口はすごく探ったというか。
――曲はまさに人生讃歌のようにダイナミックに広がってきますけど、内省に入っていく感じなんですかね。
そうですね。曲調は広がっていくけど、気持ちはどんどん内に入っていくような部分がありました。この曲の一番の核って、後悔とか、リグレットみたいなものである気がしたんです。広がってそのまま終わっていくっていう感覚よりは、どんどん内側に入っていって、それこそ、かさぶたをちょっと剥がすような、痛むような気持ちが自分の中にはありましたね。
――最初に作品からエッセンスをもらうってことをおっしゃっていましたが、この曲に関してはどんなエッセンスをもらえました?
やっぱり自分の中にあるノスタルジーとか、幼い頃の記憶とか、昔嗅いだものの香りとか。この作品と付随して、自分の過去から引っ張ってくる要素が多かったような気がして。自分の小学校の頃に見ていたものや感覚を引っ張りながら、懐かしみながら歌う感覚はありましたね。
――初号でこの曲が流れてどんな感想を抱きましたか。
いやー、本当にずっとボトボト泣いて。まだ泣くところじゃないよなっていうタイミングでも、わけもわからず涙が出てしまったりして。なんでなのかわからないですけど。懐かしさやら、いろんなものが自分を刺してくるような感覚になって。例えば、自分は小学校の頃の大事な友達にちゃんと大切に触れられていたんだろうか?って考えたりとか、久しぶりにあの子に連絡したいなっていう気持ちになったりして。うん、きっとこれは、みんなが自分事として捉えて、痛んだり、涙が出たりする作品になるんじゃないかなと思います。
――劇場に足を運ぶ皆さんにはどう届いたらいいなと思いますか?
『我々は宇宙人』っていう作品が、近年まれに見る名作だし、私はものすごく衝撃を受けた一作と思っているので、とにかく映画館に足を運んでいただきたいです。そして、本編が終わった時に、私はいろんな気持ちが渦巻いたんですけど、その気持ちを一個一個整理して、胸に収めていくような歌になるといいなと思っているので、作品と一緒にこの曲を愛していただけると嬉しいです。
――adieuのディスコグラフィーの中ではどんな一曲になりましたか?
私は、また新たに生まれ直す感じがあったんですよね。「ナラタージュ」のような曲とまた出会い直すような気持ちになった。来年10周年を迎えるんですけど、またここから生まれ直すと言いますか、リボーンな感じがするなと思います。ここからまた一歩踏み出して歩んでいきたいなっていう、再出発の気持ちをもらいましたね。
――再出発した先はどんな道になっていくんですか?
今までadieuが表現したものを、私は全部愛していて。これからもっともっとadieuという存在をたくさんの人に知ってもらいたいですし、自分が音楽を好きでいることとか、自分が響かせているものを嘘なく大事にできることが一番だなと思っていて。そういう気持ちが自然に派生していって、これからの曲につながるといいなと思います。
――10周年イヤーに突入する前に、10月にいくつかライブも控えていますね。まず、上白石萌音さん初の主催野外フェス『Mone Kamishiraishi 10th Live《bouquet》for ALL』があります。
今年10月に歌手デビュー10周年を迎える姉が開催するフェスに出させていただきます。いや~、とても楽しみですね。お芝居で共演したことはあっても、お互いの音楽方面で交わることが今まで全然なかったので。私も姉の音楽が大好きですし、お互いを讃え合うという意味でも、すごくいい時間になるだろうなと思っています。本当に両親が喜ぶ時間になりそうですね。
――そして、Billboard LIVE TAIPEIでのワンマンライブも開催しますね。
台湾でライブをするのは初めてなんですけど、台湾は自分にとってすごく大事な場所なんです。普通に観光する場所としてもすごく好きで、プライベートで一番訪れている場所で、気づいたら年に1、2回ぐらい行っていて。この前は家族を連れて行ったくらい、大事な場所になっています。日本人にすごく親切で、日本の文化を愛してくれている感じがあるし、人がとっても温かくて大好きなので、自分の台湾への愛を恩返しできたらいいなと思っています。他にも楽しみにしているフェスがあるので、各地の方にいい音楽を届けたいなと思いますし、来年の10周年に向けて、より良い表現をしていけるように、これから先の下半期は過ごしていきたいなと思っています。
取材・文=永堀アツオ 撮影=菊池貴裕
リリース情報
上映情報
キャスト:坂東龍汰 岡山天音 ※W主演
松井ケムリ・山﨑天 他
主題歌:adieu「ささくれ」
音楽:Yaffle
企画・制作:NOTHING NEW
配給:TOHO NEXT・NOTHING NEW
ライブ情報
<25日 1日券>https://eplus.jp/sf/detail/4353820001-?P0030003P021002
<24~25日 2日券> https://eplus.jp/sf/detail/4353820001-P0030003P021003