「緻密な歌もの」を体現する4人組・Nagakumo、論理と肉体を往復する制作美学「ロジカルとフィジカルがミルフィーユ状になっているんじゃないか」
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Nagakumo オオニシレイジ(Gt) 撮影=浜村晴奈
「音楽って、色んな人から受け継がれながら、新しい解釈が連鎖的に続いていくものだと思う」。2021年1月に活動を開始したレペゼン大阪の4人組・Nagakumoのソングライターであるオオニシレイジ(Gt)は、取材中こんな言葉を口にした。この発言に相応しく、「ネオネオアコ」なるコピーを標榜する彼らは、ネオアコや渋谷系といった先人達が築き上げてきた音楽をいかに継承し、リクリエイトするかに思考の糸を張り巡らせている。こうした理知的な一面と、ライブで鍛え上げられたバンド筋力を存分に発揮した肉体性を撚り上げるNagakumoが、8月26日にドロップした1stアルバムが『NGKM』である。スキルフルでありながらも、確かな耳馴染みの良さを宿した全14曲に通底する「緻密な歌もの」の美学。そして、ロジカルとフィジカルの均衡。バンドの頭脳たるオオニシに話を訊いた。
Nagakumoの「緻密な歌もの」を築いた制作美学
ーーNagakumoは、絶妙な均衡の上で成立しているスキルフルな演奏を、柔和な表情で提示してくれるバンドだと受け止めています。まずは、オオニシさんがNagakumoをどのように捉えているのか、を教えてください。
おっしゃっていただいた通り、Nagakumoを一言で伝えるなら、緻密な歌ものだと思っていて。ボーカルが主役でありながらも、それぞれの楽器が主役になる瞬間が随所にある。そういう個性の混ざり合いが、楽曲のスリリングさというか、変さや面白さにも繋がっているんじゃないかなと。
ーー歌を中軸に据えた上で、各パートがドンと個性を出していく、というか。
そうですね。それこそ、Nagakumoのコピーバンドをしてくれた方が「めっちゃ演奏が大変でした」と言ってくれることが頻繁にあって。歌だけではなく、演奏もある程度難しいことをやっていると思いますね。ただ、僕が目指しているのはプログレッシブなバンドではなくて。ポップスとして聴けるけれど、よくよく聴いたときに「あれ?実は難しいことしてない?」みたいなバランスを1つの美学として追求しています。
ーーその美学はどうやって形成されたものなんでしょう。
マインドの部分で言うと、星野源さんの影響が大きいと思います。俳優さんだと思っている人もいるくらいお茶の間の認知度も抜群なのに、音楽好きも唸る作品を作り続けている。そのバランスがすごく格好良いなと思っているんですよね。
ーーそれこそ、オオニシさんは、星野源さんや小山田圭吾さんをフェイバリットとして挙げていらっしゃいますよね。
そうです。あとは、清竜人さんや津野米咲さん(赤い公園)とかも。やっぱり、ポップスと音楽オタク的な側面の両立が自分の中での芯になっているんです。
ーーちなみに、そもそもオオニシさんはポップスとプログレッシブのどちらに軸があるんです? 音楽オタク的な性格が強い上でポップスを志向しているのか、それともポップスに対するベクトルが大きい中でプログレッシブな側面を混ぜ込んでいるのか。
どちらかにいるとか、その中間地点にいるとかではなく、大きい自分自身が全部を覆い被すように立っているイメージかな。というのも、僕は小学生のときにYouTubeで音楽をディグったのをキッカケに音楽へのめり込んでいったから、ジャンル的な偏りがあまりなくて。インストゥルメンタルのジャズもプログレッシブもJ-POPも平等に好きですし、自然と平等に捉えられていたからこそ、今の音楽性に繋がっていった気もします。
ーー雑多に聴いてきた音楽をミックスした上で、先ほどおっしゃっていただいた制作美学のフィルターを通していく、みたいな。
インプットに関しては自然なんですけど、アウトプットはある程度人工的に脳みそを使っている部分はあって。自然に培われた多種多様なジャンルのインプットを、上手くミックスしていくことは意識していますね。……あの、Nagakumoがインディーズバンドとして関西を拠点に音楽をやる意味を考えた時、音楽業界に新しいジャンルというか、まだ誰も見たことのないものを提供したいという気持ちがずっとあるんです。だから、シーンを強く意識していて。音楽業界ごと盛り上げていく、インディーズシーンごと引っ張っていくことが自分の定めだと思っています。
ーーそれって素晴らしいことだと感じる一方、その覚悟って並大抵のものじゃないと思うんですよ。インディーズシーン、そして音楽シーンを関西から盛り上げていくぞ、という気概はどこから生まれてきたものなんでしょう。
自分が目撃してきたバンドの影響は大きいと思っていて。関西を拠点に誰も見たことのないことをやっていくという側面では、DENIMSの背中を見ていました。今では主催のイベント(『ODD SAFARI』)にも呼んでもらえるくらい、お兄ちゃん的な存在なんですけどね。あと、職人的な制作活動への憧れで言うと、Lampの影響が大きくて。マイペースでありながらも誰にも真似できない楽曲を生み出し続けていて、なおかつその音楽が評価されている。そういうスタンスは自分の考え方に影響を与えていますし、希望だなって。
ーー確かに、海外での反響も含め、Lampの活動は全く新しい道筋を示してくれた感じもします。Nagakumoの代名詞である「ネオネオアコ」というキャッチコピーについても伺いたくて。いわゆる渋谷系やネオアコをベースにしながらも、理屈っぽすぎないフィジカル面を大切にポップスを拡張していくようなイメージをこのキーワードに抱いているのですが、「ネオネオアコ」にはどのような意図を込めたんですか。
言っていただいた通り、ただのネオアコや渋谷系のフォロワーではなく、独自に過去の音楽を解釈し、なんなら破壊して再構築するという態度が表れたフレーズで。そもそもはレコーディングスタジオのエンジニアさんが冗談で「Nagakumoの音楽ってネオネオアコだよね」と言わはったのがキッカケだったんですけど、結果的に僕らにピッタリの言葉になりました。
ーーNagakumoに「ネオネオアコ」というワードがしっくりきている理由は、何だと思いますか。
そもそも音楽って、色んな人から受け継がれながら、新しい解釈が連鎖的に続いていくものだと思うんですよ。「ネオアコ」という単語自体が「新しい=ネオ」を冠している上で、もう一つ「ネオ」を重ねるところに、音楽の連鎖を感じるというか。自分たちも音楽業界を盛り上げるピースであることを体現してくれているので、気に入っています。
ーーもとを正せば、エンジニアさんの思いつきで出てきたこのキャッチコピーが、お話いただいたような音楽的継承や再構築を象徴するようになっていったのはいつ頃?
えー、難しいですね。なんか気づいたら、って感じなんですよ。……ただ、今回初めてフルアルバムを作るってなったときに、改めてNagakumoの音楽を見つめ直して。そのときに「ネオネオアコって何なんやろう」と自分に問いただしたんです。なので、アルバムの制作にかかった3年半で固まっていったものな気もしますし、Nagakumoの制作におけるルールというか、自分にとってのお守りみたいなものでもあるんですよね。ネオアコからどれだけ飛び出しても、1回目の「ネオ」が全ての責任を背負ってくれるので(笑)。
「バンドが14曲演奏したアルバムだな」と思ってもらえるのが1番の理想
1st Full Album ”NGKM” Trailer
ーー聞けば聞くほど、これ以上ないキャッチコピーだなと。では、ここからは8月にリリースされた『NGKM』について訊かせてください。先ほど3年半をかけて編み上げていったアルバムだとも語っていただきましたけれど、Nagakumoにとって今作はどのような1枚になったと考えていますか。
集中的に短期間で作ったアルバムではないので、数年間の軌跡というか、僕らの成長を記録した作品になりましたね。レコーディングを1年空けて実施したり、ツアーやフェスに出演したりする中で生まれた曲がそのまま収録されている。ある種の活動記録みたいな1枚になったかなと。「アルバムを作らなきゃいけないから、良い曲を書くぞ」ではなく、「良い曲が出来たから収録しよう」「収録したからアルバムにしよう」みたいな感じなので。良い曲だけが入っている作品になっていたら嬉しいです。
ーーそれは間違いないと思いますよ。オオニシさんは今作に対して「生バンドによる最高の演奏アルバム」とコメントを寄せていましたが、この言葉はどのような思いで記されたものなのでしょう。
Nagakumoは4人から出ている音だけでライブをするバンドなんで。他のサポートメンバーを加えたり、音源を一部流したりすることもできる中で、Nagakumoは自分たちの身体から生まれるリズムやグルーヴにこだわってきた。だからこそ、アルバムのトラックも極力バンドの音だけで構成しているし、編曲も必要最低限にしている。『NGKM』をつるっと聴いてもらったときに、「バンドが14曲演奏したアルバムだな」という感想を持ってもらえるのが1番の理想なんです。
ーー4人でアンサンブルを構築することへのこだわりは、「緻密な歌もの」に対する美学とも紐づくものなんですかね。
どうなんだろうな。正直なところ、自然とそうなっていったというのが回答にはなるんです。ただ、ホウダ(ホウダソウ/Dr)は大学生のときに一緒にジャムセッションをやっていた仲間でもあるので、ライブもアドリブが主体になるんですよね。そういう意味では、それぞれがその日の音楽自体を楽しもうとする姿勢がある。だからこそ、4人の音で、その日のグルーヴを大切にしようとしている気はします。
ーーそのライブ感は、冒頭でお話いただいたロジカルな側面とバッティングすることはないんですか。
DTMを使ってデモを作る時は、頭で考えたアレンジが先に存在しているから、めちゃくちゃロジカルですね。それこそ、そのデモはベースやドラム、メロディ、なんなら仮歌も入っているくらいなんで。で、そこからライブで演奏するようになったり、レコーディングするにあたって、それぞれが自分のプレイスタイルに落とし込んでいくので、一段階フィジカルになっていく。その上で、最終的には僕が監督みたいに「そこは落ち着いてほしい」「ここはもっと自由に演奏してほしい」と調整していくんです。なので、ロジカルとフィジカルがミルフィーユ状になっているんじゃないかな。コンポーザーとしてのロジカルと、アレンジャーとしてのロジカルが僕の中に2人存在しているというか。
ーーアレンジャーとしてのロジカルな部分で言うと、メンバーの自由演技をジャッジしていく際の判断軸はどこに置いているのでしょう。
いろいろありますし最終的には感覚なんですが、一つは他のメンバーの邪魔をしていないか、ですね。ある1人の個性が強すぎると他の色が見えなくなってしまいますし、Nagakumoの面白いところは曲の中で表情がコロコロ変わるところだと考えているので。そのバランスが崩れないよう、極力リスナーとして俯瞰的に捉えるよう意識しています。だから、上から指示するような調整というよりは、ペースランナー的なイメージかもしれません。
歌として切り取ることで、書き手の暮らしの一欠片が宿る気がする
ーーよく分かりました。リリックについてもお伺いしたいのですが、オオニシさんはどこから歌詞を書き始めることが多いんですか。
普段の生活から着想を得ることが大半なので、何かメッセージを込めたり、思いを叫ぶような感覚で歌詞を書くことはほとんど無くて。生活している中でぼんやり思っていることというか、誰かに話すわけではないことをわざわざ歌として切り取ることで、書き手の暮らしの一欠片みたいなものが宿る気がするんです。作詞では、押し付けすぎない世界観を意識していますね。
ーーその人だからこそ気付ける些細な部分をピックアップしてくる、みたいな?
そうですね。それこそ「スウィート・スペース」なんて、「おうち大好きすぎる」っていうだけの曲なんですよ。ただ「家、最高」という気持ちだけが曲になっていて、「家を好きになろうよ」「外に出たくない」とは一切言っていない。些細なことを歌詞に書いて、そこにメロディーが乗ったときに、ありふれたことが美しく輝いて見える。それが素敵だし、音楽の魔法なんじゃないかなと。
Nagakumo「スウィート・スペース」(Official Music Video)
ーー「スウィート・スペース」もそうですし、〈偶然に見つけた ストライプのシャツだった〉と歌う「ストライプ・ストライプ」もそうですけれど、Nagakumoのリリックには衣食住を想起させる単語と雨や雲、宇宙みたいなワードが対照的に出てきますよね。
あぁ……初めて言われましたけど、物すごく的を射ているかもしれないです。確かにNagakumoは衣食住と自然現象の話が多いですね。やっぱり身近なものからアイデアを得ることが多いですし、音楽が聴いてくれる方の生活に根ざしてほしいと思っているからなのかな。作り手の日常から曲が生まれて、聞き手の日常に還っていく。そういう流れが見えると嬉しいですね。
ーーさて、『NGKM』を引っ提げたリリースパーティー『It's like a supermoon』が東京と大阪で開催されます。まずは9月26日(土)東京・キネマ倶楽部での公演はどのようなライブにしたいですか?
Nagakumoのワンマンとしても最大規模なんですよ。関西を拠点にしている僕らがあの場所に立つのは間違いなく緊張するだろうなと思いつつ、せっかくならキネマ倶楽部でしか浴びれない音を浴びてほしい。リッチでゴージャスで、いつにも増して格好良いNagakumoを見てもらえる1日にしたいです。
ーーでは、9月27日(日)大阪・心斎橋Pangeaでのライブはどうしましょう。
やっぱりNagakumoは関西を中心に活動しているバンドなので、緊張感のある東京公演とは対照的に、リラックスした可愛いNagakumoが見れるんじゃないかなと思います。同じ曲だとしても東京と大阪で全然違って聴こえると思いますし、大阪ではアットホームでアグレッシブな僕らを見せたいです。
取材・文=横堀つばさ 撮影=浜村晴奈
ライブ情報
2026年9月26日(土)東京・キネマ倶楽部
open/start 15:15/16:00
一般 ¥4,800 / 学割 ¥3,800 / 2F ¥5,000
2026年9月27日(日)大阪・心斎橋Pangea
open/start 16:30/17:00
一般 ¥4,800 / 学割 ¥3,800
リリース情報
2026年8月26日(水)リリース
配信リンク:https://nex-tone.link/NGKM
FORMAT:特装盤(CD + NGKM BOOK)
型番:SRCD-077 価格:5,500円(税込)
FORMAT:通常盤(CD only)
型番:SRCD-078 価格:3,300円(税込)
01 NGKM
02 Supermoon
03 コートを着て
04 ストライプ・ストライプ
05 贅沢な週末を
07 悠久の星
08 帰路
09 スウィート・スペース
10 White Dish, Blue Spoon
11 Christmas Card
12 (afterglow)s
14 あるところ
<関連サイト>
X:https://x.com/ngkm_band
Instagram:https://www.instagram.com/ngkm_band
HP:https://nagakumo.jimdosite.com