LAUGHIN’ NOSEには哲学があり、SAには美学がある 2つのバンドが『DON’T DENY THE GLORY』ツアーファイナルで見せた現在進行形の姿
LAUGHIN’ NOSE × SA 2MAN TOUR「DON’T DENY THE GLORY」
LAUGHIN’ NOSE × SA
2MAN TOUR「DON’T DENY THE GLORY」
2026.9.20 EBISU LIQUIDROOM
9月6日からスタートしたラフィンノーズ、SAのツーマン・ツアー『DON’T DENY THE GLORY』のファイナルが9月20日、恵比寿 LIQUIDROOMで行われた。すべての会場でソールドアウトという大盛況の背景には、ラフィンノーズ、SAが長きに渡り日本のパンクシーンを牽引してきたという功績もあるだろう。しかし、それだけではない。その大きな要因は、この2つのバンドが、常に “今” を完全燃焼し続け、リアルであり続けていることだ。これがラフィンノーズの哲学でもあり、SAの美学でもある。
そしてこのツアーはNAOKIの悲願でもあった。彼はメジャーデビュー期のラフィンノーズを支え、2002年のSA加入後は、サウンドの核として四半世紀近くステージに立ち続けている。そう考えると “栄光を否定するな” という今回のツアータイトルは愛すべきギタリスト、NAOKIに捧げられているのかもしれない。
ライブ当日、東京は台風25号の接近に伴い、激しい雨に見舞われていた。それでも恵比寿 LIQUIDROOMには早い時間から多くのファンが詰めかけていた。彼らの笑顔、そして熱っぽく語っている様子を見ていると、この日の期待値がどれだけ高いものだったのか一目瞭然だった。そしてフロアに入ると、ステージ後方にはラフィンノーズ、SAのバックドロップが並んで掲げられている。この光景を見ただけで胸が高鳴ったのは僕だけではないはずだ。
SAの面々がステージに登場すると、フロアの歓声と振り上げられた拳が早くも熱狂を生み出す。1曲目は「DON'T DENY, GIVE IT A TRY!!」だ。イントロのドラミングから、わずか数秒で生まれるバンドのグルーヴ。前だけを向いて、がむしゃらに突き進んできた彼ららしいオープニングだ。そして「さらば夜明けのSKYLINE」へと続く。「朝焼けのあの約束が今でもオレの背中を叩く」という歌詞が心に突き刺さる。TAISEIの描く歌詞世界は、ドリーム・カム・トゥルーの帰結に則ったハッピーエンドではない。青春の焦燥を歌い、光と影を歌い、たとえ最悪の結末が待ち受けていようと鼻にもかけず、向こう見ずな強さが潜んでいる。そして、歌詞の中で描かれる青春が、決してノスタルジーではなく、今も聴き手の心の中に燻っているリアルであるから、ライブではより一層観客の心にコミットする。
そして3曲目の「KIDZ IGNITE」は、もはやアンセムといっていいだろう。ここでより強固にステージとフロアが一体化する。ここにSAの美学が凝縮されている。言葉だけではない、音だけではない、理屈ではないSAのライブの凄みが見事に浮き彫りにされる。中盤、NAOKIがMCで「こんな景色が待っていると思っていた」と語っていたが、それはまさにこの光景だったと思う。
この世界観がより深くフロアに染み渡っていき、「ロックで人生台無しだ」と叫ぶ「runnin' BUMPY WAY」、そして「誰かのROCK AND ROLL」がプレイされる。僕はいつもこの曲を聴くと涙ぐんでしまうのだが、この日は格別だった。TAISEIが歌う「誰かが小さな声で叫んでいる」というのは、まさに自分のことであり、この日、この場所に集まったファンだと思わずにいられない。
SAは、誰かの小さな声を、叫び声に変えるステージングを常に見せてきた。そして、それはこの日も変わらない。この曲が終わりTAISEIは、二度深く頭を下げる。この場面がやけに印象的だった。ANNYの堅固なドラミングにKENのリッケンバッカー、そしてNAOKIのファイヤーバードが織りなすSAサウンドは、ロックンロールのベーシックな部分をしっかり踏襲しながら、パンクロックのエナジーを最大限に引き出す極めて独自性の高いものだ。そして、ここにTAISEIのヴォーカルが相まって限りなくタフな音の塊が構築される。
そして後半戦の「RALLY-HO!」から、そのタフさがよりクリアになっていく。NAOKIがホイッスルを鳴らすSAコールで観客はさらにヒートアップ。TAISEIが自らを鼓舞するかのように「俺たちは、まだまだ五分咲き」というMCを添えた「赤い光の中へ」、ラストナンバー「DELIGHT」では究極のシンガロングを展開させ幕を閉じた。
そしてラフィンノーズの登場だ。
ステージのライトが灯され、いつものようにシンフォニックな「PARADISE」のSEが鳴り響く。オープニングも「PARADISE」だ。ステージにメンバーが揃い、CHARMYが前屈みに声を発した瞬間、若き日のCHARMY幻影が重なる。それはラフィンが背負っているものの大きさでもあり、ファンが共に歩み続けた時の長さかもしれない。しかしCHARMYは、その幻影を振り払うかのように力強くシャウトする。過去を振り切り、今このステージだけが全てというCHARMYの凄さをオープニングから目の当たりにする。
この日のラフィンのセットリストは攻めていた。VAP時代のアルバム『LAUGHIN' NOSE』、『LAUGHIN' ROLL』を中心に構成されている。2曲目は畳み掛けるように「TAKE YOUR SITUATION」、そして「COULD BE SO LONELY」へと続く。PONのベースがドライヴし、SEIJIのギターリフには疾走感が漲っている。中盤、一旦CHARMYがステージを降りて、PON、Seiji、Toruの3ピーススタイルとなり、PONがリードヴォーカルをとる「LAST TEEN」が奏でられる。作詞・PON、作曲・NAOKIのこの曲は、PONの代名詞といってもいいだろう。
「そうさYOUR DREAM叶えられるぜ」という歌詞も時にはシニカルに、時には笑い飛ばしながらもファンに寄り添い続けるPONのアティテュードそのものだ。
そしてSeijiが「WILD MUSIC」でヴォーカルをとる。この曲は、91年にリリースされた『PUNK IT UP』に収録。ラフィンが “パンクロックはティーンエイジャーのもの” という方向性を明確に打ち出していた頃の楽曲で、これをSeijiが歌うのがなんとも感慨深い。
Seijiのヴォーカルは、どこか青春の日々のように儚く、そして未来を突き抜ける鋭さが共存している。
再びCHARMYがステージに登場すると、暗闇の中に一筋の希望の光を見出すようなバラード「BRIGHT’N SHADOW」が奏でられる。CHARMYの魂を振り絞るような声が響き渡り、曲が終わった一瞬、フロアに静粛が広がる。ここからが後半戦だ。「ここには愛しかない」というCHARMYのMC通りに多幸感が漲る「FALLIN’ FALLIN’ INTO YOUR HEART」、エッジを効かせた「戦争反対」。
メンバー全員がヴォーカルをとる「R&R DESIRE」でToruの声が聴けるのも嬉しい。ここで今のラフィンの状態が、いかに最高のものなのかがダイレクトに伝わってくる。
この疾走感をそのままに「BROKEN GENERATION」、「LAUGHIN’ROLL」と続き、オンリー・ワンのラフィン・ワールドが展開されてゆく。そしてラストは、今のメンバーで作り上げた最新曲「BE FUN, BE FREE, LAUGHIN'NOSE」だった。この日のラフィンのステージの観客とのコール&レスポンスを見ていると、ここで歌われている「Be Funおまえも Be Free いつでも Be Fun ラフィンノーズ」が幻想じゃなく、とびっきりのリアルだということがわかる。ラフィンはこの日も変わらず現在進行形を貫いていた。この日のCHARMYは右足の親指を骨折というアクシデントを抱えたままステージに登ったが、それを微塵も感じさせない圧倒的なステージングだった。
アンコールでは再びNAOKIが登場して「GET THE GLORY」だ。熱狂の渦のフロアからコールが湧き上がり、ステージではNAOKIがCHARMYに寄り添い、PONがNAOKIに寄り添う。目頭が熱くなる場面ではあるが、そこに懐かしさは微塵も感じなかった。常に “今” を更新し続け、リアルであり続けているラフィンとNAOKIの邂逅は、お互いにとってひとつの通過点であり、さらなるGLORYへの序章だ。
最後に。今難病と戦っているNAOKIの弟、TAISHO(註:THE WANDERERS/DOG FIGHT)にこのステージは届いただろうか。いつもTAISHOの傍にあるCHARMYとNAOKIの思いは、存分にステージで体現されていた。それをひと言で表すなら “完全燃焼”だろう。ラフィンノーズとSAには、 “あきらめないぞ” という思いが溢れていた。
『DON’T DENY THE GLORY』はこうやって幕を閉じたが、両バンドは余韻に浸ることもなく、次のツアーに向けて動き始めている。ラフィンノーズは、10月31日、小倉WHIPPING POSTを皮切りに『冬のワチュロウパーティ2026』がスタート。そしてSAは12月6日、甲府KAZOO HALLから始まる『GOSH YOU GIG TOUR 2026 〜今年はツアーで総決算!〜』を控えている。ラフィンノーズ、SAはこれからも現在進行形で走り続ける。
文=本田隆
撮影=根本風太、MAYUMI、石澤瑤祠
ツアー情報
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セットリスト
2MAN TOUR「DON’T DENY THE GLORY」
2026.9.20 EBISU LIQUIDROOM
01. DON’T DENY, GIVE IT A TRY!!
02. さらば夜明けのSKYLINE
03. KIDZ IGNITE
04. 破滅型ダンディー
05. runnin' BUMPY WAY
06. 青春に捧ぐ part2
07. 誰かのROCK AND ROLL
08. RALLY-HO!
09. 俺は俺
10. 赤い光の中へ
11. DELIGHT
◼︎LAUGHIN’ NOSE
01. PARADISE
02. TAKE YOUR SITUATION
03. COULD BE SO LONELY
04. CRAZY SATURDAY NIGHT
05. IN THE CITY
06. LAST TEEN
07. WILD MUSIC
08. BRIGHT’N SHADOW
09. DRINK & DRUNK
10. FALLIN’ FALLIN’ INTO YOUR HEART
11. 戦争反対
12. R&R DESIRE
13. BROKEN GENERATION
14. LAUGHIN’ROLL
15. BE FUN, BE FREE, LAUGHIN’NOSE
01. GET THE GLORY
02. LAUGHIN' NOSE with NAOKI