エルスウェア紀行、自身最大規模公演で交わした約束「私たちはきっとエルスウェア紀行をずっと続けていきます」

レポート
音楽
2026.10.2
エルスウェア紀行

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エルスウェア紀行「夢幻飛行2026」2026.9.13(sun)EX THEATER ROPPONGI

9月13日、エルスウェア紀行が単独公演「夢幻飛行2026」をEX THEATER ROPPONGIで開催した。「夢幻飛行」はエルスウェア紀行が毎年開催している定期公演。今年2月にトイズファクトリーからメジャーデビューをして、2人にとって過去最大キャパシティでの公演となったこの日は、アンコール含めて全23曲が披露され、会場を埋めたオーディエンスを一夜の旅へと誘った。

ルームランプやレースのカーテンで装飾されたステージに安納想とトヨシが登場すると、まずは2人だけで「For the unseen」からライブがスタート。そこにキーボードのノ上が加わって、トヨシがアコギを弾きながら「足ドラム」を叩く「微光奏=アコースティックセット」では「いつか」や「まなざしはブルー」が披露されていく。安納が「一人ひとりの夢幻に潜っていくような、そんな私たちだけの音楽の旅をぜひ最後まで自由に楽しんでください」と話して始まった「ひかりの国」は、ストリングスの入った音源のバージョンとは異なる、微光奏だからこその生身の温もりが伝わるような名演だった。

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逆再生や踏切の音などが聴こえるエレクトロニカ風のドラマチックなSEが流れて、ここからは「遠景奏=バンドセット」での演奏へ。メジャーデビュー曲の「のびやかに地獄へ」から始まり、「少し泣く」や「ムーンドライバー」といった曲たちを、ギターのqurosawa、ベースの千ヶ崎学、キーボードのsugarbeabsというお馴染みのメンバーと披露していき、安納が「実家バンド」とも呼ぶこの5人での演奏は安定感抜群。「地獄から、銀河から、月を運ぶところまで、随分とスケールの大きい場所を巡ってきたんですけど、ここで一旦視点を体の方に戻してみたいと思います」「緊張感のある曲が続いたんですけど、肩の力を抜いて聴いてもらえたら、抜き方によってはちょっと肩こりとかもよくなるかもしれません」と笑って話して披露された「素直」と「無添加」は、悲しみと幸せがないまぜになったハッピーサッドな感覚が実にエルスウェア紀行らしい。

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ここで雰囲気が一転、「初めて皆さんの前でやるんじゃないかなっていう曲をやりたいと思ってまして」と言って披露されたのは1stアルバム「エルスウェア紀行」に収録されている「タンタカタンロック」。お酒をテーマにしたユーモラスな曲を、エルスウェア紀行としては珍しくオーディエンスと一緒に歌うことを提案して、「みんなで歌おう、みたいなのをやったことがないから助けて欲しい」と、ちょっとだけ複雑な歌詞とリズムを何度か練習。その甲斐もあって、実際に曲が始まるとサビの「タンタカタカ タンタカタカ タンタカタンロック」では一斉に合唱が起こり、安納は嬉しそうに「ありがとうございます!めっちゃ楽しかった!」と感謝を伝えた。「臆病で頑固」を自認する2人が、「一人ひとり」であることを大切にしながらも、「みんな」で共有することの喜びも表現していく。そんなエルスウェア紀行の開かれた現在地を感じさせる一幕だったように思う。

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しっとりとしたバラード風にアレンジされた「マイ・ストレンジ・タウン」を終えると、安納が一人ステージに残って、口上を聴かせ、「天国暮らし」を弾き語りで披露。すると今度はトヨシのドラムソロがスタートして、手数や強弱自在のプレイを続けると、後半から4つ打ちになって、場内には徐々に手拍子が広がっていく。「オンドラムス、トヨシ!」という安納の紹介に歓声が上がり、エルスウェア紀行の中でも随一のロックナンバー「天才は今度」へ。ここからは再び遠景奏の5人の演奏となって、ダンサブルな「ロマンチックサーモス」からの「あなたを踊らせたい」ではステージ上でミラーボールが光り輝き、クラップをするオーディエンスも多い。攻撃的でプログレッシブな「冷凍ビジョン」や「鬱夢くたしかな食感」は「魔改造シティポップ」の真骨頂で、大きな盛り上がりを見せた。

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前身バンド時代から演奏され続けていて、3月にリリースされた「ghost walk e.p.」に再録が収録された名曲「ベッドサイドリップ」を情感たっぷりに届けると、「これまで悲しみとどう手を繋ぐか、別れの先に何があるのか、そういうことを書いてきた4年くらいだったんですけど、こうやって皆さんと出会うことができて、そろそろその先のことを書けるんじゃないかと思って書いた曲です。一人で歩くって、自立するってなんだろうと思った時に、自分の中の光というか、自分の中にある良いところを自分一人でも思い出せるようになることなのかなと思いました。今日のこの旅で感じられた自分の良いところがあったら、今夜が終わっても、一人の時もね、思い出してもらえたらいいなと思って歌います」と話して、9月にリリースされた新曲「雨と光線」を披露。さらに多彩な展開が開放感を生み出す「温度と一部」を続けると、この日を迎えることができた感慨と感謝を伝えて、本編ラストは雄大なスケールの「とわの祭り」で締め括った。「温度と一部」や「とわの祭り」で消えることのないつながりを描けたからこそ、悲しみや別れの「その先」に進むことができた「雨と光線」。この3曲の流れは一夜のハイライトだったと言える。

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アンコールではエルスウェア紀行にとって初のタイアップ曲として、10月4日よりTBS系で放送されるテレビアニメ「アオのハコ」Season2のエンディングテーマ「blue in」を書き下ろしたことに触れ、「青春とか恋愛とか、一つのテーマに括れない素敵な作品で、たくさんの煌めきが詰まった作品で、私たちも絶対にアニメを見るので、みなさんもぜひ一緒に楽しんでいただけたらと思います」と話して、「blue in」を青い照明の中で初披露。物語に寄り添うチャレンジをしながらも、一聴して印象に残るサビのリズムチェンジからは、変わることのない遊び心も確かに感じられた。

「あっという間の旅でしたが、私たちはきっとエルスウェア紀行をずっと続けていきますので、奇妙で温かい街を作れたらいいなと夢見ながら、これからもやっていきたいです。夢幻飛行は年に1回なので、健康診断みたいにお互いの元気を確かめ合う、そんな約束ができたらなと思います」ともう一度感謝を伝えて、最後は遠景奏にノ上も交えた6人編成で「イマジン」を演奏。「地に足つけず、自由に実験的に」を掲げた「ghost walk e.p.」から始まったエルスウェア紀行の新たな旅は、これからもまだ見ぬ景色や感情を届けてくれるに違いない。


取材・文=金子厚武 撮影=髙野立伎

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ツアー情報

『strange town tour 2026-2027』
2026年11月27日(金) 栃木・高根沢 陽だまり保育園
2026年12月12日(土) 京都・紫明会館(登録有形文化財)
2027年1月17日(日) 愛知・瑞寶山 秀葉院
2027年2月6日(土) 東京・ヤマハホール(銀座)
演奏形態:微光奏(acoustic band)※会場により編成が異なります。
 
単独公演『夢幻飛行2027』
2027年6月4日(金) 大阪・GORILLA HALL OSAKA
2027年7月3日(土) 東京・EX THEATER ROPPONGI
演奏形態:遠景奏(full band set)※会場により編成が異なります
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