ソプラノ歌手・山田姉妹&ピアニスト川﨑龍登場!第11回 “サンデー・ブランチ・クラシック”1.24ライブレポート
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山田姉妹・川﨑龍
今週も、日曜日がやってきた。渋谷の喧騒を抜け、そのビルのエレベーターに乗り込めば、ちょっと時間の流れが変わる。LIVING ROOM CAFE(リビングルームカフェ)by eplusが贈る、「サンデー・ブランチ・クラシック」。1月24日(日)も、第11回となるライブが行われた。
13時が近づくにつれ、客席がどんどんと埋まっていく。この日は、ソプラノ歌手の山田姉妹&ピアニストの川﨑龍が登場した。定刻になると、スーツ姿の川﨑が現れ、グランドピアノの前に座る。そっと鍵盤に手を触れると、心地良いメロディが流れ出す。山田姉妹はどこに?!とそわそわ辺りを見回すと、会場の後方から二人がメロディを纏いながら華麗に登場!白い可憐なドレス姿の姉妹・山田華と山田麗がステージに立つと、一気に空気が華やいだ。
山田姉妹・川﨑龍
この日、1曲目に歌われたのは、映画『リトルマーメイド』よりアラン・メンケン作曲『パート・オブ・ユア・ワールド』(日本語版)。メインの旋律を華と麗の二人の声が追いかけながら、いつしか絡み合うように美しいハーモニーを紡ぎ出す。
「ねぇ、これ欲しい?20個もあるの」「なんて言った?あ・・・足!」
川﨑の奏でるピアノが、二人の声と陸の世界への憧れを乗せて上に上にと誘うようで、聞いていてゾクゾクするような感覚を覚えた。
川﨑龍
一気にファンタジックな空気が満ちたカフェ!続けて、同じく映画『リトルマーメイド』からアラン・メンケン作曲『アンダー・ザ・シー』(日本語版)が軽快に流れ出す。じっくり歌い上げた前曲とは一転して、軽快に身体を揺らしながら楽しげな表情で歌い上げていく。サビにくると、二人のユニゾンがばっちりとはまる。それがまた、耳にストンと入ってきて大変気持ちがいい。客席も歌声に合わせて自然と揺れ出した。
2曲を終えると、「皆さま、こんにちは!」と元気いっぱいに呼びかける二人。「最初にちょっとだけ、自己紹介をさせて頂きます。長袖の方のドレスを着ております、華です!」「長袖じゃない方の、麗です!」と、まさかの袖の長さの自己紹介。「見ておわかりになるでしょうか?」というのもこの姉妹、双子なのだ。華の方が7分先に生まれ、麗の方が600g小さく生まれたそうで、現在も華の身長の方が高いことから「華の方が養分を結構持っていって(笑)」などと誕生秘話のネタも飛び出した。双子だが、性格も趣味も全然違うという二人。「唯一の共通しているのが歌うことが好き」だということと言う。
山田姉妹・川﨑龍
そんな二人の息の合った澄んだハーモニーが、「こちらも皆さん耳馴染みの曲ではないでしょうか」と次に届けてくれたのは、ミュージカル『王様と私』からリチャード・ロジャース作曲『シャル・ウィ・ダンス』。『王様と私』と言えば、3月に王様役で渡辺謙がブロードウェイに再登板というニュースが飛び込んできたばかりで、非常にタイムリーだ。川﨑が奏でるハートウォーミングなメロディの上で、二人の声がくるくると踊る。ここであることに気づいた。
普通、デュオなどで歌う時、タイミングを図ったり、相手とコミュニケーションを取るためにアイコンタクトを取る場面を見かける。しかし華と麗は、まったくその瞬間がない。緩急があるメロディにも関わらず、メロディに入るタイミング、抑揚をつけるタイミングなどすべてばっちりなのだ。後で、そのことを二人にぶつけてみると「確かに!あんまり気にしたことなかった・・・」と言うから、さらに驚きだ。双子によく聞く以心伝心パワーは、音楽でもいかんなく発揮されていた。
「次は、バリバリのクラシックをお送りしたいと思います。2曲続けて、イタリア語の曲をお聞きください」と、まず1曲目に紹介されたのは、ルイージ・デンツァ作曲『フニクリ・フニクラ』。軽快なリズムに、カフェからは自然と手拍子が生まれた。
山田姉妹・川﨑龍
プッチーニ作曲 歌劇≪ジャンニ・スキッキ≫より『私のお父さん』は、「歌詞がわからないといけないので、ここで麗の方から歌詞のご説明をします」と華からMCを渡された麗が、「喋るのがあまり得意じゃないので、いつも華に任せっきりなんですが・・・」と言いつつ、「この曲は、若い女の子が“私この人が好きで結婚したいの!許してくれなかったらこの橋から飛び降りちゃうよ!”って、お父さんを脅しながら歌っている曲ですっ」と、一生懸命教えてくれた。ちなみに、歌詞の中に出てくる“ポンテヴェッキオ”という部分が、その橋の名前だそうで、イタリアに実在するという。ライブをご覧になった方は、聞き取れただろうか。
皆さんがよく耳にしたことのある曲を、と次に紹介されたのはスコットランド民謡に日本の歌詞を乗せた『広い河の岸辺』。連続テレビ小説『マッサン』の中で歌われていたあの曲だ。ちなみに、華が「この中で、『マッサン』を見ていた方はどれぐらいいらっしゃいますか?」と問いかけると、客席からは半分くらい手が挙がった。さすが朝ドラ!続く『タイム・トゥ・セイ・グッバイ』は、盲目のテノール歌手ボチェッリとサラ・ブライトマンのデュエット曲。ソプラノのデュエットで聴くと、まるで教会で歌われるような荘厳さがあり、新鮮だった。
楽しい時間はあっという間で、「次が最後の曲です」と華が口にすると、何やら麗が水を飲んだり喉を揉むような仕草を見せたりと、入念な準備を始めた。最後に聴かせてくれたのは「心の準備と身体の準備をしないと、ちょっと歌えない曲なんです」というソプラノの代表曲とも言えるモーツァルト作曲 オペラ≪魔笛≫より『夜の女王のアリア』だ。ソプラノの中でも最高音域を使うこの曲、実際にどのぐらい高い音を使っているのか、川﨑のピアノに合わせて麗が実演してくれたのだが、その幅実に3オクターブ!あまりの高さに、カフェからはどよめきが。本来一人で歌う曲を二人で歌えば、迫力も二倍。二人の女王による圧巻のソプラノがカフェに響き渡った。
盛大な拍手に応え、アンコールではミュージカル『マイ・フェア・レディ』よりフレデリック・ロウ&アンドレ・プレヴィン作曲『踊り明かそう』が歌われ、会場は再び手拍子で大盛り上がり。15時からの第二部では、一部セットリストを入れ替え作曲者不詳『アメイジング・グレイス』も歌われ、本日も大盛況の中ライブは幕を閉じた。
山田姉妹・川﨑龍
終演後、姉妹と川﨑に終演直後の感想を伺ってみると、三人ともとても満足そうな、晴れやかな表情。30分ずつの短い時間だったが、非常に楽しく演奏されたようだ。
かれこれ、もう5年くらい一緒にやっている山田姉妹と川﨑。本日歌われた曲も、もともとは一人で歌う曲を姉妹のために川﨑がアレンジしたものになっており、「(川﨑の編曲は)私たちの声をすごくわかって作ってくれるので。もう、他の編曲者に頼めないんですよ」と華は絶賛する。麗も「他の人と歌うとぶつかってしまうような音の組み合わせをわざと使っていたりするんですけど、それが絶妙ですごく歌っていて気持ちがいいです」と、その編曲の妙を明かした。
そんな姉妹に絶大な信頼を寄せられる川﨑は「(双子ゆえに)声も似ているんですけど、硬さや色味もちょっとだけ違う。それが、普通だったら生まれないハモりを生むんです。それがとってもおもしろいんですよね」と、双子のソプラノ歌手という二人の魅力を語った。
今後、やってみたいことは?尋ねると「クラシックに限らず、お客さんがコンサートに来て一緒に口ずさんでくれるコンサートを作りたくて」と華が答えると、すかさず麗が「私もそれ言おうと思ってた!」と同意。今年の目標は「CDを出すこと!」だと言う。
山田姉妹・川﨑龍
最後に、今日のライブを経ての想いを「二重唱にすることで、クラシックをより親しみやすく気軽に聞けるものにできたらいいなと思います」(華)、「お客様がとてもあったかくて、もうちょっと歌いたかったなという気持ちが残るコンサートになりました」(麗)、「昔の音楽家たちがサロンなどで演奏していたように、クラシックを気軽に聞けるこういう場所が、もっとあったらいいなと思いました」(川﨑)と、三者三様の想いを語ってくれた。
山田姉妹は、2月22日(月)にティアラこうとう 大ホールにて『ティアラ ワンコインコンサート 2016』への出演も決まっている。また川﨑は、現在TVアニメとして放送中の『霊剣山 星屑たちの宴』(A-TX金曜深夜224:00、TOKYO MX土曜深夜25:30など)の音楽を手がけている(ライブの中で、主人公とヒロインのテーマを少し披露してくれた!)。どちらもぜひチェックしてみてほしい。
「サンデー・ブランチ・クラシック」では、お料理も毎週メニューの一部が変わるかも?とのこと。この日は、初めて“ビーフストロガノフ”がメニューに登場。口の中でとろけていくぐらい、よーく煮込まれたお肉がとても美味しかった。次回は、どんな美しく楽しい音楽と、温かなお料理に出会えるだろうか。お楽しみに!
ちなみに、1月14日(木)から、座席の予約もできるようになった。対象エリアは、ステージ正面パティオのエリア。予約は3週間前から受け付けているそうなので、慌てずによい席を確保したい!という方は、ぜひご予約を。
撮影=原地達浩 文=友成礼子
姉の華は、東京藝術大学声楽科卒業。在学中に安宅賞を受賞。2011年度ミス鎌倉。現在二期会マスタークラス在籍中。
妹の麗は、国立音楽大学声楽科、オペラソリストコース、共に首席卒業。卒業時に武岡賞を受賞。女優として「3年B組金八先生」などに出演。現在二期会マスタークラスに在籍中。
2009年同コンクール作曲全部門第1位。中川英二郎氏(Trb.)、エリック宮城氏(Trp.)などによる金管アンサンブル侍Brassのアルバムに作曲で参加。東京オペラシティでのライブでも演奏される。2012年にノーベル文学賞を受賞した莫言氏の戯曲『ボイラーマンの妻』、青井陽治氏の舞台『コーパス・クリスティ』の音楽を担当。日本を代表するサクソフォニストの須川展也氏による委嘱作品や、Zoorasian Brass、Knockout Brassのアルバム、東京ディズニーランドバンド、TV-CMなど作編曲多数。東京藝術大学作曲科在学中。
第1部 13:00~13:30 / 第2部 15:00~15:30
MUSIC CHARGE: \500
2月14日(日)
岩崎洵奈(ピアノ)
第1部 13:00~13:30 / 第2部 15:00~15:30
会場:LIVING ROOM CAFE(リビングルームカフェ)by eplus
MUSIC CHARGE: \500
2月21日(日)
塚越慎子(マリンバ)
第1部 13:00~13:30 / 第2部 15:00~15:30
会場:LIVING ROOM CAFE(リビングルームカフェ)by eplus
MUSIC CHARGE: \500
こぱんだウインズ from ぱんだウインドオーケストラ
第1部 13:00~13:30 / 第2部 15:00~15:30
会場:LIVING ROOM CAFE(リビングルームカフェ)by eplus
MUSIC CHARGE: \500
反田恭平(ピアノ)&上野耕平(サクソフォン)
第1部 13:00~13:30 / 第2部 15:00~15:30
会場:LIVING ROOM CAFE(リビングルームカフェ)by eplus
MUSIC CHARGE: \500
3月20日(日)
La Dill
第1部 13:00~13:30 / 第2部 15:00~15:30
会場:LIVING ROOM CAFE(リビングルームカフェ)by eplus
MUSIC CHARGE: \500
公式サイト:http://livingroomcafe.jp/