ミュージカル「Tell Me on a Sunday」主演を務める濱田めぐみにインタビュー！

ミュージカル界のディーヴァとして話題作への出演が相次ぐ濱田めぐみが、活動２０周年を記念し、アンドリュー・ロイド＝ウェバー作曲のソロ・ミュージカル「Tell Me on a Sunday」で主演を務めることとなった。イギリスからアメリカへ渡った女性の恋と自立を描くこの作品は、サラ・ブライトマンやバーナデット・ピーターズらそうそうたる顔ぶれが演じてきたもので、今回が待望の日本初演となる。濱田に意気込みを訊いた。

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――ソロ・ミュージカルという珍しい上演形態の舞台です。

最初、そこになかなか気づいていなくて、アンドリュー・ロイド＝ウェバーさんの曲が歌えるのがうれしいなあと思って、よく見たら“ソロ・ミュージカル”って書いてある？　と（笑）。大人数が出演する作品に参加することが多くて、これまでの最少出演人数も四人ですし、一人で舞台に立つのはもちろん初めて。作品世界が古代エジプトだったり、アフリカ大陸だったり、死神が出てきたり、フランス革命を描いていたり、壮大なテーマ、スケールの作品がほとんどだったので、ごく普通にいる一人の女性の日常、誰にでもあるような個人的な悩みや経験を演じるということも初めてで。私にとっては普通でないこと、とんでもない世界で生きる方が普通だったから、その意味では大きなチャレンジですね。

今回演じるエマという女性は、イギリスからアメリカン・ドリームを求めてニューヨークにやってきて、年下に恋したり、妻子ある人を好きになったり、失恋を経験したり、夢をもった強い人なんです。私自身、とにかく東京で仕事をしようと思って福岡から一人で出てきた、そんな共通点はあるなと。ただ、自分自身、舞台上の生活の方が圧倒的に長くて、舞台以外の日常生活や自分自身にはあまり興味がもてないんですね。お腹がすいたら食べるし、眠くなったら寝るけれども、三食きちんと食べてとか、時間に従って過ごすとか、そういう日常のルーティンがわからなくて、何だか下手で（笑）。

そして、舞台上では、役柄の人格に身体を貸している感じなんですね。感情が垂れ流しになったりとか脱線してやりすぎになってお客様に引かれない程度に監督して、操って。それが私の普通という状態なんです。それをしているととても充実しているという。私自身が素のままで生きるというのがわからない。だから、エマの普通を表現するというのが今まだ感覚としてよくわからないなとも思うんですが。それに、普通って人それぞれで違ったりもしますよね。とにかく楽曲がすばらしい作品なので、曲に乗ってうまく物語を運ぶことができたらと思いますね。

――これまで多く経験されてきてのロイド＝ウェバーの楽曲の魅力、そして今回の作品における楽曲の魅力についてはいかがですか。

これまで感じてきたのは、メロディラインはシンプルで口ずさみやすい親近感があるけれども、大人数のオーケストラの演奏に似合う壮大で格式、特別感があって、遠くて近い魅力があるなと。それが、今回の作品について言えば、もちろん彼のセンスやテイストは変わらないながらも、少人数編成、例えばギター一本やピアノだけでも成立するような、身近な音を集めて作り上げたような魅力があって。聞いている人を励ましながら前に進んでいくような、そんな気がしますね。エマが傷ついたり泣いたりしているのを後押ししていくような。カップとか椅子とかテーブルクロスとかフランスパンとか、そういった身近なものを音に変えて表現しているイメージですね。セリフはないながらも音楽劇のような雰囲気で、カフェに立ち寄るように気楽に観られて、リフレッシュしてすっきりして帰れる、いわば足つぼマッサージみたいな（笑）作品になったらと思いますね。

今回が日本初演ということで、作品の紹介、楽曲の紹介、これからいろいろな女優さんが演じていったらそれもおもしろい作品だと思うんですね。演出の市川洋二郎くんは劇団四季時代の戦友。彼が翻訳も訳詞も担当して、演出家として日本で初めて発表する作品になるので、彼の紹介にもなりますね。そして、私を長年観てくださってきた方はとりわけ、私の舞台を観ることを通じて自分の人生のさまざまな記憶を追体験したりするところがあると思うので、その意味ではコンサートに近い形式にもなるのかなと。エマという女性を、親近感のある、リアルに生きている女性として大切に演じたいと思っています。

取材・文＝藤本真由（舞台評論家）　撮影＝福岡諒祠