ニューヨーク・フィルハーモニック次期音楽監督決定

2016.1.30
ニュース
クラシック

(ニューヨーク・フィルハーモニック公式サイトより)



元コンセルトヘボウ管のコンサートマスターを指名

今月27日、ニューヨーク・フィルハーモニックは公式サイトで「次期音楽監督としてヤープ・ヴァン・ズヴェーデンを指名する」と発表した。正式に就任するのは2018-2019シーズンからだが、現在の音楽監督アラン・ギルバートが退任する2017-2018シーズンには本格的にオーケストラとの仕事を始める、という。

現在来日中の指揮者、アラン・ギルバートが「2016-2017シーズンを限りにニューヨーク・フィルハーモニックの音楽監督を退任する」と発表したのは昨年2月のことだった。その際、退任の理由として「2019年から予定されているオーケストラの本拠地であるデイヴィッド・ゲフィン・ホールの改装工事の前後を、次期音楽監督に託す」との意向が示されたが、ウィーン・フィルに並ぶ歴史を誇るオーケストラの、初のニューヨーカー音楽監督との関係は良好だったこともあり、彼の決断は少なくない驚きをもって世界に受け止められた。彼はメトロポリタン・オペラにも登場し、ニューヨークのクラシック音楽界の顔として活躍していたからなおのことだ。

さらに言えば、これまで何度となく当サイトでも世界のオーケストラの指揮者選びについて報じてきたとおり、2015年前後は任期終了を見据えて世界的にマエストロの人選が進められた時期であり、その中で急遽次期監督探しをすることになったニューヨーク・フィルハーモニックの後任選びは難航が予想された。しかし、オーケストラはアラン・ギルバートの退任表明から一年弱で次期音楽監督を選び出したことになる。

このたび就任が発表されたヤープ・ヴァン・ズヴェーデンは、かつてロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の名コンサートマスターとして活躍し、のち指揮者に転じた人物だ。バーンスタイン晩年のマーラーなど、いくつかの名録音でコンサートマスターとしてクレジットされていた彼の名前に見覚えのある方もいることだろう。EXTONレーベルから録音をリリースしているからその演奏は日本でも聴かれているのだが、意外なことに指揮者としての来日はまだない。

指揮者に転向して以来、これまで途切れることなくいくつかのポストに就任しており、現在も香港フィルハーモニー管弦楽団とダラス交響楽団の音楽監督を務めている。ニューヨーク・フィルハーモニックとは2012年の初共演から良好な関係を築いており、この選任は妥当なものと受け取られているようだが、前任者に比べて現代の音楽に積極的ではないレパートリーなどについては現地で懸念もあるようだ。

ともあれ、昨年末からクルト・マズア、ピエール・ブーレーズとかつての音楽監督たちを続けて喪ったばかりのニューヨーク・フィルハーモニックはヤープ・ヴァン・ズヴェーデンとの未来を選んだ。彼らの前途が輝かしいものとなることを祈ろう、そして遠くない時期に来日して充実した音楽を聴かせてくれる日を待とうではないか。