“長い長い一夜”の果てに──PONKOTSU-BARON project 第2弾『回転する夜』、開幕!

2016.2.2
レポート
舞台

演出は和田憲明、リアルで骨のある一本。

赤澤燈・西島顕人・味方良介・安田純平(本作は欠席)の4人の俳優による演劇企画ユニット〔PONKOTSU-BARON project〕。その第2弾公演となる『回転する夜』が、1月30日より紀伊國屋サザンシアターにて幕を開けた。

 おそらくPONKOTSU-BARON projectとは、エンタメ性の高い作品を中心に経験を積んでいる若い俳優たちが、表現者として自らにより負荷をかけ、力をつけていこうと研鑽する姿をリアルタイムで観客に感じさせることがひとつの大きな目的になっているのだろう。ユニットとしては約2年ぶりとなる今回、彼らが選んだのは蓬莱竜太が自身の劇団〔モダンスイマーズ〕で上演した『回転する夜』。また、演出には妥協のないリアルな表現で役者を丸裸にしていく和田憲明を配し、真正面からストレートプレイに挑んでいく姿勢を表明。その“宣言”通り、本作は息を詰めて観ずにはいられない閉塞感を伴った、骨のある一本となった。

 歳の頃は20代後半、熱で寝込んでいるノボル(赤澤)は自室のベッドの上で繰り返し“あの日”の悪夢を見る。友人との距離を感じ、兄に人生を出し抜かれてしまったことが決定づけられた“あの日”。悔やんでも悔やみきれない人生の分岐点が、熱に浮かされた頭の中で何度も何度もループするのだ。今でも鮮明に思い浮かぶ“あの日”の最悪のやりとり…。しかしその成り行きは、繰り返すたびに少しずつ変容していくのだった。「実際はこうだった」「でももしあいつが部屋にいなかったら?」「あそこで兄貴に反論できていたなら…」「みんなの顔色をうかがうことなく自分の気持ちを遠慮なくぶつけてさえいれば」──と。

 貿易業を営む両親が与えてくれた広い部屋に籠もりモラトリアムな時間を持て余しているノボルは、誰が見ても人生に甘えている人間に思える。一方、友人のアッくん(味方)、やーすけ(島丈明)、ニッキ(逸見宣明)はノボルから見ればいい加減な奴らなのだが、地元という限られたフィールドの中でそれぞれに世の中に揉まれ、自分なりにその立ち位置を確保している自立した社会人でもある。兄貴のさだお(西島)も他所から来た女・ちほ(木乃江祐希)も、夢と身の丈と現実とのバランスを計りながら、なんとか折り合いを付けて大人として生きている。しかし、ノボルにはそれが見えない。最悪の今から“あの日”に舞い戻るたび、会話の中から自分を責め立てる“異分子”を選り分け、消去し、繰り返し繰り返し、自分の望んでいる今に辿り着くことを渇望する。

 海辺の町の丘の上のお屋敷、眺めのいい窓から吹き抜ける風、飾り気なく交わされる石川弁のやりとり、気のいい仲間たち。これら牧歌的で開放的なはずの道具立てが舞台上で際立つほど、観客は逆に閉塞感に縛られていく。そんな和田の不穏な空気作りと、リアルな表現でそこにしっかりと応えていくバロンメンバー、そして客演陣の確かなサポートがしっかり噛み合った瞬間の力強さは本物。座組の真摯な思いが伝わる丁寧な語り口にも好感が持てた。

 熱が下がり、繰り返す“あの日”の夜がとうとう明けた朝。そこにはただただあたりまえの答えが転がっている。劇的なハッピーエンドなど不要な日常の断片、誰にでもある生活の中のストーリー。「この世界はままならない」。そう、ノボルの物語は、決してノボルだけの物語ではないのだ。
(取材・文=横澤由香)

 

赤澤 燈、味方良介、西島顕人からの公式コメントもご紹介

赤澤 燈コメント

リアルな人間模様を追求し、段取りなどの決まりごとやセリフ感なく、その場に生きてるように演じる稽古を積んできました。それって実は当たり前のようで凄く難しいものなんですが、和田憲明さんご指導の元、どうにか、ここまで来ました!!リアルで生々しい人間模様を舞台上で表現できるよう、精一杯頑張りますので、皆さまには、是非、その目撃者になって頂ければと思います。

 

西島顕人コメント

和田憲明さん演出の元、リアルなストレート芝居に挑戦しており、いい作品に仕上がってきております!今まで観たことのない、僕、赤澤燈 味方良介をお見せできるかと!また、ストーリーも非常に奥深いものとなっておりますので、1度と言わず、2度3度と劇場に足をお運び頂ければと思います。お待ちしております!

 

味方良介コメント

いよいよ初日を迎えますが、2年ぶりの第2弾公演をできることを非常に嬉しく思います。本作は男のやせ我慢と人間臭さの詰まった非常に魅力的な作品です。役者力が試される非常に難しい戯曲に挑戦していて、日々ハードな稽古を積んできました。スタッフさん・キャスト一丸となって、良いものを送り届け、必ず、第3弾公演につなげたく思っております。皆さん、劇場でお待ちしております!

 

公演情報
PONKOTSU-BARON project 第2弾公演 『回転する夜』

日時:2016年1月30日(土)~ 2月7日(日) 全9回
会場:紀伊國屋サザンシアター

■作:蓬莱竜太
■演出:和田憲明 
■出演::赤澤 燈 西島顕人 味方良介/島 丈明 逸見宣明(Dotoo!) 木乃江祐希(ナイロン100℃)

■公式HP:http://www.nelke.co.jp/stage/PBP2/

 

 

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