Kalafina 歌が紡ぐ8年の軌跡と彼女たちの未来、ツアーファイナルレポート
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Kalafina、左からHikaru、Keiko、Wakana
Kalafina LIVE TOUR 2015~2016 “far on the water” Special FINAL 2016.1.31 東京国際フォーラム ホールA
2年半振りに発売された待望のオリジナル・アルバム『far on the water』、そのタイトルを引っさげて行われたLIVE TOUR 2015~2016 “far on the water”、昨年から国内7都市10公演、国外2都市4公演(香港・台湾)を行い、Special FINALとして東京に凱旋。東京国際フォーラム ホールAで行われたそのライブは観客の想像を超え、まるで幻想の世界のようなとてつもない内容だった。
舞台の前に釣られた幕に映し出されるのは流れ行く雲、その向こうに透けて見えるのはWakana、Keiko、Hikaruの3人。まるで絵巻物の登場人物のように現実味無くステージに現れたKalafinaは「こいびとの昔語りの夕暮れの」を歌い奏で出す。1音目を聞いた瞬間に魂が吸い付けられるような感覚に見舞われる、稀代のサウンドメイカー梶浦由記に見出された3人の歌姫は想像を遥か超える実力を身につけていた。
「昨年から始まったツアーですが、始まるとあっという間、今日は目一杯楽しんで貰いたいです」とWakanaが語るように、Kalafinaは今回のツアーで得た全てをステージにさらけ出していく。どこか蠱惑的で、ムーラン・ルージュを思わせるような「monochrome」から「五月の魔法」、「空色の椅子」とアルバムからの新曲を披露したかと思えば、「lapis」「輝く空の静寂には」などの名曲も歌い上げ、世界は彼女たちの色に染まっていく。
”色彩の旅”がテーマという今回のツアーだが、まさに一曲一曲に色を感じるパフォーマンス、ステージ演出として効果的に用いられる照明、映像表現は勿論なのだがそれ以上に彼女たちの”歌”に色がある、まるで幻灯機を見るように、湖畔の春から荒野の冬に景色を変えるその歌声の妙。
劇場版アニメ『空の境界』主題歌プロジェクトを発端として始まったKalafina、その後もTVアニメ『黒執事』、『ソ・ラ・ノ・ヲ・ト』、『Fate/Zero』『魔法少女まどか☆マギカ』、『アルドノア・ゼロ』などアニメソングのエポックメイキング的名曲を多数生み出してはいるが、所謂「アニソン枠」にもう収まる器では無いことを実感した。
「むすんでひらく」、「storia」、「misterioso」などの曲を絶え間なく歌い続ける彼女たち、驚愕すべきは圧倒的なコーラスワーク、歌唱力だけではない。派手とは言わないが均整の取れたダンス、静かに佇むように歌っていたかと思えばステージの端から端まで走り回るパフォーマンス。どれだけ動いても、どれだけ歌いあげてもその歌声は乱れることがない、そしてステージドリンクを手に取る事が恐ろしく少ない。天賦の才を持って生まれたと思われる3人の日々のトレーニングが垣間見えた。梶浦の楽曲のポテンシャルをほぼ完璧に歌いあげることが出来る奇跡の3人、その認識は間違っていない。だがもう彼女たち3人はその思惑の範疇を超え、唯一無二の存在になったのだと思わざるをえない。
ピアノの調べに合わせて丁寧に歌った「灯影」、「うすむらさき」、ニューアルバムでも屈指の激しい楽曲「identify」、そして「signal」、「音楽」という構成に会場はただ立ち上がり、拳を突き上げる。闇を切り裂くようなHikaruの歌声、そこに絡みあうKeikoの低音とWakanaの高音の美しいハーモニー、切り替わるようにKeikoのソロの低音が響き、心がざわめく。圧倒されるライブはある、驚愕するライブもある、ただKalafinaのライブは”吸い付けられる”のだ、目でもなく、耳でもなく、心が彼女たちが歌い紡ぐ世界の色に吸い付けられる、そして満たされる。
「heavenly blue」の興奮の後のMCで「変化していくライブが私たちは好きなんだな、と実感しました」とKeikoが言ったように、全ての曲、全ての音がくるくると代わり、見える世界は変貌していく。その根幹として決して揺るがない”歌”がある、”歌の力”なんて使い古された表現を信じたくなるくらいの”人間の可能性”がそこにはあった。
「8周年を迎えました、原点に戻れる曲です、聞いて下さい」そう言って披露された「seventh heaven」、ただ頬を涙が伝う、感動したからではない、彼女たちの歴史を目の当たりにした時、筆者の目からは涙がこぼれた。
アンコールでは白い服に身を包み、オープニングの映像にも出てきた白い旗を掲げた3人は「ring your bell」を熱唱。仄暗い照明の中では純白に見えた旗は実は赤茶けた汚れを帯びていた、それはきっとKalafinaの3人が8年間で体験してきた経験、挫折、苦労、喜びなのかもしれない。それでも「真昼」、そして最後の「far on the water」を歌い終わった後に見る旗は、純白で、燦然とはためいて居るように見えた。きっとそれはKalafinaが満員の客席に投げかけた思いの色なのだろう。
「今日、ここにいることを選んでくれてありがとうございます」とHikaruが語ったように、彼女たちには届けたい音がある、伝えたい歌がある、共に見たい世界がある。
ライブの最後では2月にメキシコでのソロライブを開催すること、そして5月に中国上海最大の音楽イベント『上海乃春国際音楽祭』に中国政府公認アーティストとして出演、ワンマンライブを行うことも発表された。国内でも初となるアリーナライブの開催を発表し、休むこと無く精力的に動き続けるKalafina。
Wakanaが最後に「どこまでも続いていく音楽を作っていきたいです」と言ったように、音楽に国境も地平線もない、彼女たちが歌い続ける限り、世界は広がっていく。Keikoがステージを去る前に叫んだ「2016年、まだまだKalafinaは旗を立てていきます!」、次にはためくその旗は何色に見えるだろうか、何色に見せてくれるのだろうか。
圧倒的な実力、ステージング、パフォーマンス。終演時は誰からとでもなくスタンディングオベーションが巻き起こった。本当に素晴らしい物を目の当たりにした時、人はただ賛辞を送るのだろう。
今Kalafinaを体験したことない人は急いだほうがいい、彼女たちは奇跡と努力と絆が産んだ”希望”なのだから。
文=加東岳史
01.こいびとの昔語りの夕暮れの
02.monochrome
03.五月の魔法
04.空色の椅子
05.lapis
06.輝く空の静寂には
07.むすんでひらく
08.storia
09.misterioso
10.One Light
11.Piano soro~nightmare ballet
12.into the water~in every nothing
13.闇の唄
14.believe
15.灯影
16.うすむらさき
17.identify
18.signal
19.音楽
20.heavenly blue
21.seventh heaven
[ENCORE]
22.ring your bell
23.真昼
24.far on the water