ミケランジェロ弦楽四重奏団のベートーヴェン全曲演奏、完結へ

2016.2.11
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クラシック

今年も名手たちが集まってベートーヴェンの真髄を聴かせてくれる。ミケランジェロ弦楽四重奏団 (c)Marco Borggreve

ヴィオラの名手、今井信子らによる弦楽四重奏の挑戦

「作品の中にムダな音は一つもない」などというとどこかで聞いたようなフレーズになってしまうけれど、ベートーヴェンの室内楽を聴くときはいつも以上に強く、そう感じさせられるものだ。雄弁な交響曲やピアノ・ソナタでも感じられるではあるが、切り詰められた語りの室内楽ではよりその傾向が強まるように思う。なかでも演奏者同士のコミュニケーションが緊密でなければ、曲そのものが成立しない、とさえ思える彼の弦楽四重奏曲の密度の高さたるや。そんな難曲揃いの弦楽四重奏曲全16曲を、二年がかりでミケランジェロ弦楽四重奏団が取り上げる演奏会の後半が今月16日から三回、銀座の王子ホールで開催される。

ミケランジェロ弦楽四重奏団は、2003年にヴィオラの今井信子が中心となり、ソリスト、室内楽奏者、教育者としてそれぞれに独自の活動をしている演奏家たちで結成したアンサンブルだ。常設の四重奏団ではないものの、互いに信頼しあう音楽家たちが期間を決めて集中的に演奏会に取組み、その都度真摯に作品に向き合うことで毎回新鮮な演奏を聴かせてくれる弦楽四重奏団として世界的に高く評価されている。

このアンサンブルが昨年から王子ホールで開催しているベートーヴェン全曲演奏会では、各回ごとに初期、中期、そして晩年の傑作群からの作品を一晩で聴ける、よく考えられたプログラムが組まれている。だがそれは、同時に演奏家たちに高い集中力と負担を強いるものだ。形式も楽曲の展開も、加えて楽器の使い方も、それぞれの曲ごとに異なる創意が光る作品群を立て続けに演奏することはとても容易なことではない。だからこそ、それを確かな演奏技術、それぞれの音楽家としての経験、そしてなによりその深い楽曲理解でベートーヴェンの真髄を聴かせた昨年の演奏会は高い評価を受けたのだ。

そして今年、ミケランジェロ弦楽四重奏団は残る八曲を三回に分けて演奏する。演奏家に多くを求めるチャレンジングな演奏会だが、彼女ら彼らがベートーヴェンの音楽を追求することを楽しんでいることは前回の連続演奏会の最中に行われたインタビューからも伺える。今回の演奏会もまた、どこまでも最高の演奏を求めて万全のリハーサルをぎりぎりまで行って、見事なベートーヴェンを聴かせてくれることだろう。来週の演奏会が待ち遠しい限りだ。

妥協のないリハーサルを重ねて最高の演奏を追求するミケランジェロ弦楽四重奏団 (c)Marco Borggreve

公演情報
ミケランジェロ弦楽四重奏団 ベートーヴェン全曲演奏会 Vol.4~6
会場:銀座 王子ホール
出演:ミケランジェロ弦楽四重奏団
  ミハエラ・マルティン、ダニエル・アウストリッヒ(ヴァイオリン) 今井信子(ヴィオラ) フランス・ヘルメルソン(チェロ)
プログラム: 作品はすべてルードヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲 弦楽四重奏曲
●Vol.4 2016年2月16日(火) 19:00開演
第五番 イ長調 Op.18-5
第九番 ハ長調 Op.59-3 「ラズモフスキー第3番」
第一二番 変ホ長調 Op.127
●Vol.5 2016年2月18日(木) 19:00開演
第一〇番 変ホ長調 Op.74 「ハープ」
第二番 ト長調 Op.18-2
第一四番 嬰ハ短調 Op.131
●Vol.6 2016年2月20日(土) 15:00開演
第六番 変ロ長調 Op.18-6
第一三番 変ロ長調 Op.130 「大フーガつき」
公式サイト:http://www.ojihall.jp/concert/lineup/2015/20160216-18-20.html