チョン・ミョンフン(指揮) 東京フィルハーモニー交響楽団

2016.2.19
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クラシック

チョン・ミョンフン ©ヴィヴァーチェ

愉悦と興奮、贅沢すぎる2本立て

 思えば2001年、チョン・ミョンフンが合併後初の東京フィル定期で第2番「復活」を指揮し、会場を熱い感動に包んで以来、当コンビのマーラーは毎回が一期一会の熱演だった。そしてシェフ格から桂冠指揮者に変わった10年以降、共演自体その貴重さを増した。東京フィルの2月定期は、その彼が登場し、マーラーの交響曲第5番と、弾き振りでモーツァルトのピアノ協奏曲第23番を披露する。むろん必聴だ。

 まずはマーラー。チョン・ミョンフンは、昨年も第6番「悲劇的」で壮絶な名演を聴かせたが、今度はよりポピュラーな5番。葬送行進曲から光輝なフィナーレに至る「暗→明」の流れは6番とはまた異なっており、各楽章の描き方と同時に全体の構築が言うまでもなく注目点となる。シネマ・クラシックの定番である第4楽章「アダージェット」、トランペットやホルンのソロ、最後の畳み込みなどは、誰もが馴染める聴きどころ。またマエストロは、こうした曲では弦楽器の人数を通常より増やして重量感を増幅することが多いので、そこも楽しみだ。

 次いで弾き振り。チョン・ミョンフンのピアノの腕は日本でも広く知られているが、協奏曲の演奏に触れる機会は少ない。モーツァルトのピアノ協奏曲第23番は、明朗さと哀愁を相持つ名曲。リリカルな慈愛を湛えた彼のピアノで聴く今回は、至福の体験となるに違いない。ちなみにこの曲、昨年長岡で披露した際には、弦と管をピアノの左右に分けた配置だったとの由。今回はその点にも注目したい。

 世界のマエストロがおくる豪華な2本立て。またとない機会をお見逃しなく!

文:柴田克彦
(ぶらあぼ + Danza inside 2016年2月号から)


チョン・ミョンフン(指揮) 東京フィルハーモニー交響楽団
第99回 東京オペラシティ定期シリーズ

2/25(木)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
第874回 サントリー定期シリーズ
2/26(金)19:00 サントリーホール
第875回 オーチャード定期演奏会
2/28(日)15:00 Bunkamuraオーチャードホール
問合せ:東京フィルサービス03-5353-9522
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