坂本真綾LIVE TOUR閉幕、まっさらの彼女はまた歩き出す。ツアーレポート
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坂本真綾
2016年2月7日 坂本真綾LIVE TOUR 2015-2016“FOLLOW ME UP”東京・中野サンプラザ 追加公演ファイナル
2015年11月21日、ハーモニーホール座間 大ホールから始まった坂本真綾の旅は2016年2月7日、中野サンプラザで幕を閉じた。坂本真綾20周年企画の一環として発売されたアルバム『FOLLOW ME UP』を引っさげて行われた今回の全国ツアー。
「ツアーは11月からでしたがあっという間で、座間が随分昔のようです。今日、この日しか歌えない歌を歌います」 冒頭タイトル曲である「FOLLOW ME」、「Gift」、「SONIC BOOM」と立て続けに三曲を披露した後のMCで語った坂本真綾は、どこまでもいつも通りだった。
初日座間公演を体験し、ライブレポートで「坂本真綾の進化は劇的ではない」と書いたが、やはりこの日も同じことを思った。いつだって坂本真綾は私達の理想の”坂本真綾”であり続ける。それは2000年8月に渋谷で初ライブを行ったあの時から変わらない。
「私の独断と偏見で作ったセットリスト」と言い続けてきた今回のツアー。確かにさいたまスーパーアリーナで行われた20周年記念ライブなどに比べると所謂”メジャー“と言われる曲は少ないかもしれないが、その分何かとても近くに彼女自身を感じることが出来た気がする。
「Be mine!」、「さなぎ」、「アルコ」、「Waiting for the rain」と激しい曲、バラードを織り交ぜて歌い上げるが、その後のMCでは「今日は男の人が多いね、お手紙貰ったりするのは9割女の子なんです、男の人どこにいるの!?って思うくらい」と普段通りのテンポで会場を暖かく笑わせる。
坂本真綾は本当にそのままだ、人はここまでニュートラルに自分自身で居ることが出来るのかと思うくらいそのままだ。
表情が無いわけではない、河野伸のピアノに合わせてしっとりと歌い上げた「君の好きな人」などで披露した囁くような歌声は、切なくて胸が苦しくなるほどだし、「まだうごく」では深海に引きこまれそうな感覚に陥る。表現の幅は彼女の声優としての技量も相まって、無限の広がりを見せる。
印象的だったのは彼女の代表曲の一つである「プラチナ」を歌った時である、1999年の発売から既に17年という歳月が過ぎた今、彼女が歌う「プラチナ」は変わらぬ未来への希望を感じさせつつ、確実に当時よりも優しく、強くサンプラザのホール内に響き渡った。あの時”もっとつよくなりたい”と願った少女は大人の女性となり、未来を信じる現在の少女たちの道を照らす。
「ライブで成長していった曲だと思います」と歌ったアルバム曲「アイリス」もそうである、音源を聞くより正直ライブのほうが断然いい。変わらぬ歌を響かせつつも、比べれば驚くくらいアーティストとしての坂本真綾は成長していた。
自分の楽曲ベストを「FOLLOW ME」、「これから」、「シンガーソングライター」の三曲だと語った坂本真綾、「自分で作った曲には思い入れがある」と語ったが、「今日好きなモノが明日は違うかもしれない、ずっと変わらないベスト3も素敵だけど、私は一番新しい曲が常に一番なので、自分のベスト3が入れ替わるのも素敵なことだと思います」と言った彼女に、何か答えがある気がした。
「シンガーソングライター」では一部のスタッフにのみ話しただけ、と客席まで降りて観客とともに歌った彼女。「生きることは音楽」まさにそれは坂本真綾そのものをさした言葉なのではないか。生きてきた道そのものが音楽。たおやかに、決して大風呂敷を広げるでもなく、聞いている人の心の隣によりそう歌。それを奏でられる彼女はとても豊かに生きてきたのだろう。
アンコールではアニメ『たまゆら』の為に新録カヴァーされた松任谷由実の「卒業写真」をゲストに北川勝利を迎えて歌い上げ、そのまま「マジックナンバー」へ。ころころと笑い、楽しそうに歌い、歌詞の主人公一人ひとりの心情を伝え上げる、天性の声が表現として会場を包む。
「旅は終わります、でも明日から日常という旅がまた始まります、いつかまた会えますように」
微笑みながらピアニカを手に取り、最後に演奏されたのは「ポケットを空にして」、ライブ最後の定番曲ではあるが、最後にこの曲を歌う意味が少しだけわかった気がする。経験のすべてを取り入れて、でも「ポケットを空にして」彼女は新たな旅に出る。それは何かを捨てているわけではない、経験の全ては坂本真綾の血肉になり、表現の礎となり、歌になる。
イヤモニを耳から外し、何かを惜しむように歌った坂本真綾は、きっとまたまっさらな坂本真綾として私達の前に帰ってくる。
それが僕達にとっても、新たな旅の始まりの合図なのだ。
文=加東岳史
01.FOLLOW ME
02.Gift
03.SONIC BOOM
04.Be mine!
05.さなぎ
06.アルコ
07.Waiting for the rain
08.ちびっこフォーク
09.君の好きな人
10.That is To Say
11.DIVE
12.セクレアール -INST-
13.Tシャツ
14.まだうごく
15.レプリカ
16.Hello
17.幸せについて私が知っている5つの方法
18.色彩
19.Life is good
20.プラチナ
21.かすかなメロディ
22.アイリス
23.シンガーソングライター
24.卒業写真
25.マジックナンバー
26.これから
27.ポケットを空にして