音楽劇上演に向けてKREVAへインタビュー
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KREVA の新しい音楽劇 「最高はひとつじゃない 2016 SAKURA」 撮影=中田智章
現在も音楽界ではトップアーティストに君臨し続け、日本のヒップホップシーンを牽引すべく、ラップを使ってまだ誰もやったことのないような新しい表現スタイルに次々と挑んできたKREVA(クレバ)。演劇界でも最近話題となった宮本亜門が構成・演出を担当した新感覚ダンスエンタテインメント『SUPERLOSERZ SAVE THE EARTH 負け犬は世界を救う』で物語のキーパーソンとなる謎の男・ミスターXを演じるなど、舞台でもラップを使った新しい表現スタイルに挑んできたKREVAが、2016年3月25日(金)より「KREVAの新しい音楽劇『最高はひとつじゃない 2016 SAKURA』」を上演。2011年にKREVAの楽曲を題材に史上初のヒップホップ×演劇の”新しい音楽劇”として初演、2014年に再演もされた本作。今回は内博貴を主演に迎え、内とKREVAによる“ウチクレバ”なるユニットを結成。この2人を中心に、桜をテーマに展開していく完全新作へ。KREVAに、舞台におけるラップの可能性について話を訊いた。
――最初に、KREVAさんが2011年に「KREVAの新しい音楽劇『最高はひとつじゃない』」をやろうと思った経緯を教えて頂けますか?
元々は「音楽劇やってみない?」と誘われた感じです(笑)。ミュージカルや舞台というものにまったく自分は馴染みがなかったので、この音楽劇のどこが新しいのか、何が何だか自分でもよく分からない中で誘われるままにやったというのが正直なところです。自分発信で「次は舞台に挑戦だ」というものではなかったですね。
KREVA の新しい音楽劇 「最高はひとつじゃない 2016 SAKURA」 撮影=中田智章
――実際、やってみての感想は?
楽しいですよ。プロモーションビデオ(以下、PV)のリアル拡大判みたいな感じで(笑)。PVは最初に音があって、その上に映像がつくじゃないですか? それを生で歌い演じながら、一つのストーリーにつないでリアルタイムで観せていくという。そんな感覚で俺は楽しめてます。
――ストーリーはKREVAさんの楽曲だけで構成されていくんですよね?
ええ。俺の音楽が物語に深く関わってます。しかも、その歌は元々あるものなんで、サントラ絶賛発売中という感じなんですよ。世の中に出ているKREVAの曲たちが散りばめられた舞台なので、KREVAの曲に触れてる方ほど、すでにサントラとして聴いてる感覚なんです。台詞の中にも自分の言葉、歌詞のなかのフレーズが組み込まれているんで、KREVAの曲に触れている方ほど曲に深くタッチできるんじゃないかな。
KREVA の新しい音楽劇 「最高はひとつじゃない 2016 SAKURA」 撮影=中田智章
――自分が作った音楽が舞台になるのは、意外でした?
最初は意外でしたね。でも、今は慣れました。こうやってみなさんに楽しんでもらえるなら嬉しいし。自分も楽しいんですよ。一番楽しいのは、自分のラップを自分以外の人がやることですかね。
――どんなところが楽しいんですか?
他の人が歌うことで、自分の言葉が持っている力に気づけたりするんです。“この言葉、こんな風に表現するやり方もあるんだな”と思ったりして。すごくそこは勉強になります。
――女性キャストの方が歌うと、そういう発見もたくさんありそうですね。
自分の歌では俺のことは“俺”っていうんですけど、そこも含めて女性が歌うことによって伝わる面白さだったり。また、そこを“私”に替えるだけで歌が全然違う表情に見えたりとか。そういう部分も本当に楽しませてもらってます。
KREVA の新しい音楽劇 「最高はひとつじゃない 2016 SAKURA」 撮影=中田智章
――この舞台はKREVAさんが音楽監督も担当してらっしゃいます。キャストたちのラップのディレクションはどんな風にやってらっしゃるのか、教えてもらえますか?
まず自由にやってもらって。あまりにもここはこうだなと思ったところだけ直していくという風にしています。耳がいい方が多いので、俺が何気なくとってる音程まで出そうとする方もいるんですけど、それよりはその人から出てくるものの方が自分はいいと思ってます。ラップっていうのは、基本その人が出ていた方が面白いと思うんですよ。言葉は決まっているんだから、だったら表現の仕方にその人がたくさん出ているものの方がいいなと思うんで、あんまり指導せずにその人を残すようにしています。
――そうしていくと、その人なりのラップが出てくるものなんですか?
はい、出てくるから面白いんですよね。前回だと増田有華(元AKB48)さんの歌が楽しみになるぐらい、彼女は自分なりの表現をしてくれてた。彼女は本当に上手くて、自由に歌うことを楽しんでくれていたからこそ、自分もいろんな発見がありました。前回まで出演してくれてた宮野真守君に至っては、いまだに自分が歌ってるときに宮野真守君が歌ってるシーンが思い浮かんできたりするぐらい印象に残っています。それで、自分としても更にその曲を愛せるようになっていったり。今回の舞台では、一足先に小西真奈美さんに直接ラップを指導する機会があったんですけど、最初にやってきてくれたものがすでにオリジナルになっていたんで、ここはそのまま残そうと思いましたね。その上で、こちらの要求にもすぐに応えてくれるから凄いなと感じました。
KREVA の新しい音楽劇 「最高はひとつじゃない 2016 SAKURA」 撮影=中田智章
――女優の小西さんがラップしているところなんて、まったく想像がつかないんですけど(笑)。
すごい魅力を出してきたなという感じですよ(微笑)。(ブラザー)トムさんはラップしてくれるかどうか分からないけど(笑)、でも、頼んでみようかなと思ってます。
――お芝居以外に「ラップして」といわれるのが、この舞台が他と違うところだと思うんですが。ラップはみなさん、最初は照れながらやられるんですか?(笑)
いやぁー、まずオリジナル(KREVAの音源)を聴いてきてくれる人は最初、若干俺が入ってるんですよ(笑)。そこで俺がいつもいってるのは“リズムの位置だけ決まってる台詞だと思ってやってください”ということ。原曲から抜け出せない人にはそう伝えるだけで、役者さんはものすごく反応がいいから、自分が想像していた以上のオリジナルなものになっていくんですよ。
――そうやって、キャストそれぞれのラップを引き出していくのがKREVAさんの音楽監督としての役目だと。
自分が舞台に触れる機会が多くなるにつれて、ミュージカルと音楽劇とストレートな舞台があるとして、ミュージカルとストレートな舞台の間をとれる表現方法として“ラップ”というものが機能する、存在するんだなといま強く感じています。可能性はあるな、と。
――舞台において、ラップは新しい表現の可能性を持っているということ?
ええ。台詞のようでもあって、歌のようでもある。ラップはその境目を曖昧にできるすごいツールだなと感じるようになってきたんです。
――おぉー!!
そうすると、さっき話したリズムの位置が決まった台詞みたいなものというのが繋がってくるんです。「ラップの舞台? なにそれ」と思ってる人も、そう思って観てもらえれば拒否反応なく観てもらえるんじゃないかと思ってます。
KREVA の新しい音楽劇 「最高はひとつじゃない 2016 SAKURA」 撮影=中田智章
――なるほど。完全新作となる今回の舞台の見どころといえば、やはり新キャストの内博貴さんとKREVAさんが結成した“ウチクレバ”(笑)ですよね?
はい(微笑)。こういうユニットはどうだと制作サイドに提案されたとき、思わず笑いながら「いいんじゃない」と即答しました。これを受け入れた俺と内君の器のデカさを褒めてくれといいたいです(一同笑)。自分のなかの許容範囲が広がってきたんですかね。ちょっとカッコつけてた昔だったら「“ウチクレバ”? なにそれ。ダジャレじゃん」ってなってただろうけど、いまは全くない。どんとこい、ですから(笑)。楽しんで受け入れてますよ。
――当然、舞台ではこの“ウチクレバ”で披露するラップがあるということですよね?
ええ。2人で歌うことを想定して曲は作ってます。
――桜をテーマに?
そうですね。桜を感じられるものにしようかなと思ってます。
――内さんとはもうお話はされましたか?
はい。とりあえず、今回の舞台を成功させるためにはトムさんを怒らせないようにしようというのだけは内君と話しました(笑)
――ユニットをどうしようかという前に。
ええ。トムさん、怖くなきゃいいな〜(笑)。
KREVA の新しい音楽劇 「最高はひとつじゃない 2016 SAKURA」 撮影=中田智章
――KREVAファン、ヒップホップファンはMummy-D(RHYMSTER)さんとのラッパー同士ならではのエキサイティングな掛け合いも見どころですが。
俺的には今回は芝居で掛け合えたらなと思ってるんですよ。ウチの舞台を経て、DさんはTVドラマに出たりしてますから(微笑)。それを今回の舞台に還元してもらいたいな、と。昔は俺とMummy-Dが向かい合ってやってるということに感慨深さもあったんですけど。それすら超えて楽しめた、ということを経ての今回ですから。今回は芝居的な絡みが面白くできたらいいなと俺は思ってます。
――お二人以外に、今回から若手ラッパー・AKLOさんがキャストとして加わりました。
彼はメキシコ人と日本人のハーフなので、「最高はひとつじゃない」っていうことをすごくわかってる人間の一人なのは間違いないです。うまく楽しんでもらえるように自分が雰囲気を作っていけたらと思ってます。
――それでは、いつもKREVAさんのライブに行ってる方たちはこの舞台、どんな風に楽しんでもらえたらと考えてますか?
自分もそうなんですが、KREVAの歌を誰かが歌うことによって、俺の言葉がすごく聞こえてきたり入ってきたりすることがあると思うんで、それを楽しんでくれたらと思います。「最高はひとつじゃない」というタイトルが示すように、いつもとは違う新しい視点で慣れ親しんだ曲を楽しんでもらえたら嬉しいですね。観たら、より俺の歌のことが好きにるんじゃないかなと思います。
KREVA の新しい音楽劇 「最高はひとつじゃない 2016 SAKURA」 撮影=中田智章
――ライブと一番違うところは、他の人がKREVAさんの曲を歌うというところですか?
俺のライブに関しては、脚本・監督・音楽すべて俺がやってるんですよね。でも、今回の舞台は、自分の書いた言葉が元にはなってるんですけど、脚本は自分が書いてる訳ではないし、監督も他にいて。みんなで作り上げていくものですから、そこはまったく違うかなと思います。自分のライブはKREVAの世界ですから。
――では、舞台ファンの人にはこのヒップホップ音楽劇、どう楽しんでもらいたいと思ってますか?
舞台ファンの人はより楽めるんじゃないですかね。ストレートな舞台でもミュージカルでもない。この舞台の曖昧さが、ラップ劇の面白さがより分かるのは普段も舞台を観てくれている方々だと思うんで、そういう人たちにもぜひ観てもらいたいですね。なんか新しいことやってるらしいからどれぐらい新しいのかちょっと感触確かめに行こう、とか。そんな感じで来てもらえたらいいかなと思ってます。
――最後にKREVAさんからメッセージをお願いします。
「ラップの舞台ってなに?」「分からないし、どうしようかな、観に行くの…」と思ってる方が本当に多いと思うんですけど。出てる方もそう思ってると思うんですね(笑)。だから、心配することはまったくないと思います。自分たちも新しい、知らない世界に飛び込んでいくようなものなんです。だから、みんなも安心して飛び込んでもらえればいいです。いますぐ
撮影=中田智章 インタビュー・文=東條祥恵
【東京】3月25日(金)~4月3日(日)
【大阪】4月8日(金)~4月10日(日)
■会場:
【東京】東京芸術劇場 プレイハウス
【大阪】森ノ宮ピロティホール
■演出・上演台本:野村昌史 町田誠也
KREVA、内博貴、増田有華、綿引さやか、AKLO、梅棒、最強歌少女2 、
馬場巧、浅野泰徳、程嶋しづマ、宮崎重信、大岩主弥、熊井吾郎、
ブラザートム、Mummy-D(ライムスター)、小西真奈美