金属恵比須が「キンゾク20年」の<いま>を語った

2016.2.20
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金属恵比須(稲益宏美)

約一年前に発表したアルバム『ハリガネムシ』が“その筋”で爆発的に売れ、さらに人気ドラマーの後藤マスヒロの加入により、日本中の「プログレ」ファンから注目を集める存在となったのが金属恵比須だ。そしてバンドは今年2016年に結成20周年を迎えた。これを記念して、新作ミニアルバム『阿修羅のごとく』が2月17日に発表され、早くも「名曲揃い」と評判を呼んでいる。また、アルバムリリースに合わせ「キンゾク20年の大躍進」と名付けられた実演ツアーも開始された。2月20日には、ツアーの最後を飾るフルセットのワンマン・ライヴ(於・吉祥寺シルバーエレファント、4月16日)が発売となる。勢いに乗る彼らであればこその早期完売が予想される。この機に彼ら自身の口から、バンドの現在<いま>について話を聞いてみた。
 

金属恵比須(左から稲益宏美・後藤マスヒロ・高木大地・多良洋祐・宮嶋健一) (撮影:飯盛大)

――ミニアルバム『阿修羅のごとく』ですが、前作『ハリガネムシ』からちょうど1年ぶりの発表です。発表の経緯を教えていただけますか?
 
高木大地(Gt, Vo/以下、高木)2016年は金属恵比須を結成してからちょうど20年になるんで、そのタイミングで絶対に出したいなと思ったのが最初です。
 
――ああ、20年ですね! おめでとうございます!
 
高木:といってもメンバーは僕以外みんな替わってるんで、20年を実感してるのは僕だけですが(笑)。
稲益宏美(Vo/以下、稲益):20周年、すごいですよねぇ……! というか高木くん以外は2012年以降に入ったメンバーなので(笑)、主に高木くんがしつこくというか粘り強く続けたということなんですけど。私は高木くんとは高校の同級生で。
高木:そう、同級生なんだけど、当時はほぼ絡みはなかったんだけどね(笑)。
稲益:当時から金属恵比須があって、私はそれを見ている方でした。まさかここに来て自分が入ることになるとは思ってませんでした。ちなみに2012年に多良・稲益が、2013年に宮嶋が、2015年にマスヒロさんが正式加入して、今のメンバーになりました。

稲益宏美

――なるほど。ここ4年で新たな体制になったわけですね。
 
後藤マスヒロ(Dr/以下、マスヒロ):ちょうど今から10年前、ある録音の仕事で高木と一緒になり、以降も親交や共演が続いて、気がついたら、金属恵比須のメンバーになっちゃったって感じですね。
稲益:「見に来た人はいずれメンバーになってしまう」ジンクス(笑)。
マスヒロ:高木とはたくさんの共演履歴があるんだけど……。
高木:僕の高校時代の憧れの人だったのに、なぜか共演する機会に恵まれて(笑)。
多良洋祐(Ba/以下、多良):「なぜか」じゃなくて、狙ってたんですよね?(笑)

多良洋祐

マスヒロ:俺が「金属恵比須」名義としての共演は、2011年の『塗仏の宴』というライヴが最初。まあこれは客演的なものだったんです。その後、メンバー総入れ替えとなった金属恵比須のライヴを見に行きました。稲益はそのときゲスト扱いだったんだけど、「絶対にこのお嬢さんを正式にバンドに迎えるべき」と小姑っぽく進言した記憶があります。
稲益:私がこのバンドの正式メンバーになれたのはマスヒロさんのお陰(笑)。
マスヒロ:まさかその後、俺自身までバンドに加わるとはね(笑)。

後藤マスヒロ

――マスヒロさんが加わったのが2014年。『ハリガネムシ』発売からですね。そのころから金属恵比須の認知度が広まってきましたね。
 
宮嶋健一(Kbd/以下、宮嶋):やはりバンド初の全国流通になった『ハリガネムシ』が2月にディスクユニオンの「日本のROCK」部門で1位を獲得したことは大きいです。
高木:「インディーズ」じゃなくて、「日本のROCK」! メジャーな方々に囲まれました。
宮嶋:そこから活動も一気に本格的な感じになって。あとは、9月のNHK-FM『今日は一日プログレ三昧』で「紅葉狩」が流れたことがターニングポイントでした。
稲益:山田五郎さんとスターレス高嶋さんが大絶賛!

稲益宏美・宮嶋健一

――その勢いに乗られて『阿修羅のごとく』の製作が始まったのですね。コンセプトは?
 
高木:今回は、今まで金属恵比須の持っていた「アングラ」な雰囲気を払拭しようと思いました。強いていえばこれがコンセプトです。「猟奇」とか「ホラー」とかそういうのから脱却しようかと。
稲益:でも、最初のタイトルは「赤い実つぶした」だったよね?
高木:少女が、同級生の少女を解剖して「赤い実」を見つけてあげて、苦悩を取り去ってあげるという絶望的な救済を歌おうとした(笑)。
稲益:それはさすがに歌えないだろ! ってことで(笑)。で、「阿修羅のごとく」になったんだっけ?
高木:そう。向田邦子の70年代の傑作ホームドラマをテーマにしました。歌詞に出てくる「でんでんむし」も「虞美人草」も、ドラマで象徴的に使われているワードです。で、このドラマは「不倫」がテーマなんですね。やっぱり文学でも、殺人とか猟奇を追う推理小説よりも人間模様を描く純文学が上じゃないですか。だからこの曲で人間模様を描いて一段上に行きたかったんです。でも出てきたのは、不倫に怒り狂う女性が鬼と化した恐怖感が強調されて、結果的にホラー色強くなっちゃいました(笑)。

高木大地

――音に関してのコンセプトはありましたか?
 
高木:まず1点目は、マスヒロさんファンの喜ぶドラムプレイが聞けるアルバムにすること。2点目に、歌が映えるアルバムにすること。この2つを気にしました。まず、マスヒロさんのハードロック/プログレのスタジオ作というのがしばらくぶりです。全国のマスヒロファンは絶対に期待してるはずなんです。それに応えられる内容になっているかを一番気にしました。この点に関しては、僕が大ファンゆえにその理想形に持っていくのは意外とスムーズでした(笑)。
 
――歌の方はどうですか?
 
高木:金属恵比須が最もないがしろにしていた「歌」をちゃんとしたい思いがありました。特に「阿修羅のごとく」のメロディ作りから最終的なアレンジまで相当頭を使いました。ただし、レコーディングに関しては全くの無知なんで、稲益とエンジニアの諸石政興くんにディレクションをお願いしました。
稲益:最初に録音した時はかなり声を張った感じで歌っていたんです……今聴くとびっくりするくらい(笑)。その後、歌を録りなおす機会があって、エンジニアの諸石くんに、「阿修羅」に関してはシルキーなタッチで歌ってみましょうか、とディレクションしてもらって、ああいう質感の歌い方になりました。

稲益宏美

――たしかに、前作では一直線で張り上げたイメージでしたが、今回は抑揚が素晴らしいですね。
 
稲益:結果、曲に合う感じに仕上がって、自分としてもすごく気に入っているのと、おかげさまで何か新境地が開けた気がします(笑)。
高木:歌のことは全然わからないからね、丸投げしちゃったんだよね。歌を録り始めると「タバコ吸ってくるわ、あとはよろしく〜」って(笑)。歌を中心にした割にはディレクションの仕方がわからない(笑)。
宮嶋:今回は諸石くんが歌のディレクションはかなり頑張ってくれましたね!
 
――一方で「みつしり」は『箱男』にも収録されていますが、今回、新録された理由は?

高木:『箱男』に入っていたバージョンの音が悪かったからいつかは再録音したいと思ってました。作った当初は憧れのマスヒロさんだったらこう叩くだろうなと思いつつアレンジしていったのですが、まさかご本人に叩いていただけるとは(笑)。
 
――ライヴも3曲収録されています。
 
高木:全部、2015年9月に行なわれた「猟奇爛漫Fest Vol.1」からです。あのライヴ、なぜかすごくうまくいって、すべてがいい演奏だったんですね。「ハリガネムシ」なんかはソロがめちゃくちゃ長くなってるんだけど、70年代ロックっぽくていい感じだし。
宮嶋:それまではステージに大量に機材をセッティングして、動きもあまり少ない感じでやることが多かったんです。ところが2015年からインストア・ライヴなどで身軽なセッティングでやることを学んでいきました。ライヴのあり方も変わってきてそれがこのライヴで実を結んだのかなと。
稲益:一切編集なしだしね。
高木:「いつもは編集してる」みたいないい方やめてよ!

高木大地・後藤マスヒロ

――レコーディングにおいて楽器などでこだわったことはありますか?
 
宮嶋:まずメロトロンの調子が「ハリガネムシ」レコーディングのときよりずっと良くなり、安定した良い音で録れました。あと、前回はデジタルのハモンドオルガンとレスリースピーカーを使っていましたが今回はビンテージのB-3を使っています。シンセサイザーは以前からmoogとARPのものを使い分けていますが、ARPを「ソロイスト」からジェネシスが使ってた「プロ・ソロイスト」に変えています。音の良さに感激して新録曲2曲でソロを弾きました。それから、金属恵比須でピアノ系楽器をそれらしく使うのはおそらく初ですね。ハモンドを録った時に時間が余ったのでヤマハのCP80で「阿修羅のごとく」のピアノパートを弾きました。最後に、今回は「みつしり」で僕も大地さんと一緒にベースペダルを担当して
います。
高木:ベースペダルは金属恵比須のキモですね。あの重低音は。
宮嶋:高木のマルチヴォックスのストレートで抜けの良い音を、僕のmoog・タウラスで広げている感じですね。タウラスは上モノにも使いました。
高木:「みつしり」のイントロですね。ラッシュっぽくと頼んだんで(笑)。
 

宮嶋健一

――ツアーが開始されるそうですね。どのような内容ですか?
 
高木:結成20周年の一大興行として東京と神奈川の計5か所を回ります。「キンゾク20年の大躍進」という不吉な名前で(笑)。
多良:1/30でタワーレコード川崎店でのインストア・ライヴを皮切りに、2/21にHMV record shop渋谷のインストア・ライヴ、3/19には吉祥寺CLUB SEATAでプログレ・フェスに、そしてツアーファイルが4/16、吉祥寺シルバーエレファントでのワンマン・ライヴとなります。

多良洋祐

――曲目は?
 
高木:それぞれレアな曲やその日限りのアレンジなどをちりばめる予定で、全部お越し下さっても飽きないように考えています。

――最後に一言お願いします。

マスヒロ:『ハリガネムシ』の録音メンバーである諸石和馬君はShiggy Jr.で忙しく、なかなか参加できてないんですが、欠席中なだけでバンドに籍はあるのでまたいつかダブルドラムの可能性も大いにあります。宮嶋が加入して以降の現体制は大いに充実していて、とても良い刺激になってるのはまぎれもない事実。今後とも金属恵比須にご期待ください。多良君のベースは、世界一だよ! 今までになかった刺激的なリズムセクションになってるのは間違いないと思う! 今回録音を一緒に演って、改めて彼の高いポテンシャルに大いに俺自身が触発された演奏ができたと思う。最後に、これだけ充実したメンバーとスタッフに支えられいる金属恵比須は、絶対、持ってるぞ!
多良:マスヒロさん、「一言」じゃないっす。
マスヒロ:またしゃべりすぎた?

2016年1月30日、川崎の某ファミレスにて
(聞き手:SPICE編集部・安藤光夫)

ミニアルバム『阿修羅のごとく』試聴動画
 
SPICE密着ドキュメンタリー「キンゾク20年の蠢動」
 
イベント情報
金属恵比須・20周年ツアーファイナル「キンゾク20年の大躍進」

■日時:2016/4/16(土)18:30
■会場:吉祥寺シルバーエレファント
■一般発売:2月20日(土)12時~
■問合せ:吉祥寺シルバーエレファント
TEL.0422-22-3331
http://www.silver-elephant.com/


新世代への啓示 21st C Prog Rock Stars Fest1

■日時:2016/3/19(土)17:00
■会場:吉祥寺CLUB SEATA
■発売中
■出演:Fantasy Rock Orchestra/金属恵比須/Yuka & Chronoship
■問合せ:吉祥寺CLUB SEATA
TEL.0422-29-0061
http://seata.jp/


CD情報

金属恵比須20周年記念ミニ・アルバム『阿修羅のごとく』(CD)
【収録曲】
1.阿修羅のごとく
2.みつしり
3.真珠郎 (Live 2015)
4.ハリガネムシ (Live 2015)
5.『箱男』からの抜粋 (Live 2015)
a)破戒
b)みつしり
税抜¥2,000
2016年2月17日発売
※金属恵比須公式サイト:http://yebis-jp.com