カフェに見慣れぬ大きな楽器。マリンバ奏者・塚越慎子が登場
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志村和音(ピアノ) 塚越慎子(マリンバ) [撮影=原地達浩]
塚越慎子が奏でる“マリンバ”のあたたかな音色に包まれた安らぎの時間。
第15回 “サンデー・ブランチ・クラシック”2016.2.21ライブレポート
今週も、日曜日がやってきた。2月21日の午後、LIVING ROOM CAFE(リビングルームカフェ)by eplusにやってくると、何やらいつもとちょっと景色が違う。ステージの真ん中に置かれていたのは、大きな“マリンバ”。第15回目の「サンデー・ブランチ・クラシック」には、マリンバ奏者の塚越慎子が登場し、その魅力を余すところなく伝えてくれた。
塚越慎子(マリンバ) [撮影=原地達浩]
皆さんはこの“マリンバ”という楽器についてご存知だろうか。マリンバは、もともと中南米で生まれた楽器で、クラシック界に登場したのは、20世紀初頭とまだその歴史は浅い。形状は木琴に非常によく似ているが、音域は約5オクターブあり大きさは木琴の約二倍。音色の違う板を叩き、それを楽器の下部に取りつけてある共鳴管に響かせ音を生み出すため、ジャンルとしては打楽器に分類される楽器だ。どうやってここまで持ってきたのだろう?と不思議に思ったが、なんと解体して折りたたむこともできるという。
塚越慎子(マリンバ) [撮影=原地達浩]
定刻になると、この日の伴奏を務めてくれた志村和音とともに塚越が笑顔で登場した。最近、知り合ったという二人は、この日が初共演ということで気合充分。13時からの第一部と15時からの第二部と、まったく違うプログラムを用意してくれた。
第一部は、バレエ≪恋は魔術師≫の中の一曲であるファリャ作曲『火祭りの踊り』からスタート。華やかさと妖しさを併せ持った魅惑のメロディにのめりこむように、塚越はリズムを刻んでいく。曲を終えると「すみません、息が上がってしまって・・・(笑)」と言うほど、まろやかな音色の中に情熱を感じさせる演奏を聴かせてくれた。
志村和音(ピアノ) 塚越慎子(マリンバ) [撮影=原地達浩]
マリンバの印象を大きく覆す演奏で始まったが、次に聴かせてくれたのはクライスラー作曲『テンポ・ディ・メヌエット』。鈴の音が転がるような軽快なメヌエットは、マリンバにぴったりの選曲だった。先ほどの大胆な演奏とは打って変わって、塚越は一音一音繊細なタッチで奏でていく。
続く三曲目は、志村が作曲した曲で初めて披露される曲だという。『星の降る森』と名付けられたこの曲は、これまでもマリンバとの共演経験が多く持つ志村が、マリンバとピアノで演奏するために作り上げた曲だそうで、志村は「木でできているマリンバを“森”、ピアノのキラキラした音を“星”に見立て、自然の音を表現した曲になっています」とその作曲意図を明かした。この曲を最初に聞いた塚越が「なんてロマンチックで、メルヘンで、ピュアな曲なんだろう!と思いました」と評したように、音色に乗せ心温まる絵本のようなイメージが脳裏に広がるような、素敵な一曲となっていた。(音源化を希望!)
志村和音(ピアノ) 塚越慎子(マリンバ) [撮影=原地達浩]
四曲目に披露してくれたクラシックの名曲、サンサーンス作曲『白鳥』では、塚越はマレットと呼ばれる打楽器演奏用のばちを片手に2本ずつ、計4本を手にした。4つの音の組み合わせが生み出す音色は、なんとも豊かで優しく耳に届く。マリンバの広い音域の中をすべる塚越の両手は、時に優雅に羽ばたく白鳥の羽のようで美しかった。
塚越慎子(マリンバ) [撮影=原地達浩]
最後は、リムスキー=コルサコフ作曲『熊蜂の飛行』。よくマリンバで演奏されている曲なので、マリンバという楽器をご存知の方にはなじみの曲ではないだろうか。しかしこの曲、曲調が速いためあっという間に終わってしまう!そこで、塚越からこんな提案が。
「あっという間に弾いたあとに、“ブギウギ調”にアレンジしたバージョンをお届けしたいと思います!」
まず、スタンダードなバージョンでの塚越のマレットさばきに驚かされたが、そのあとのブギウギ調バージョンも驚きがいっぱい!!志村のピアノが紡ぐ低音のリズムにのって、塚越の刻む音色も軽快さを増していく。マレットの描く軌道は、まさに蜂がブンブンと飛び回る軌道のよう。優雅さとカッコよさを兼ね備えた演奏に、会場は大きな拍手に包まれた。
志村和音(ピアノ) 塚越慎子(マリンバ) [撮影=原地達浩]
第二部では、クラシックの音楽を中心とした第一部とはまたちょっと雰囲気を変えて、「カフェの空間に合うように」というコンセプトのもと、ベートーヴェン作曲『エリーゼのために』のアレンジバージョン、ジャズのスタンダードナンバーのひとつ、グレン・ミラー作曲『ムーンライト・セレナーデ』、塚越の2ndアルバム“Passion”よりコセンティーノ作曲『タンゴ・バロッコ』、リー・ハーライン作曲『星に願いを』、モンティ作曲『チャルダッシュ』などが演奏され、一部とはまた違った雰囲気のライブとなった。
サイン会の様子 塚越慎子(マリンバ) [撮影=原地達浩]
ライブ終演後、インタビューに伺うと、楽屋には山のようなマレットがあり、驚いていると、塚越が「全部種類が違って、音色が微妙に変わるんです。マレットによって一曲の曲の中でも雰囲気を変えられたりするので、曲中に持ちかえたりもするんですよ」と説明してくれた。ちなみに、塚越はすべての所持数を合わせると1,000本以上持っているという。繊細で美しいメロディを生み出す匠の技が垣間見えた。
志村和音(ピアノ) 塚越慎子(マリンバ) [撮影=原地達浩]
改めて、本日のライブについての感想を伺ってみると、「ステージからお客様ひとりひとりのお顔も見えて、とても楽しかったです。雰囲気も温かくてとても演奏しやすかったです」と笑顔で語ってくれた塚越。志村も「お客様がリラックスしながら聞いてくださっている雰囲気が、演奏する僕らにとってもすごく心地よくて。なかなか、お客様と接点がないことも多いので、終演後すぐに反応を頂けるというのが、とても光栄であり幸せなことでした」と振り返った。
今日がライブという場での共演は初だったという二人だが、すでに阿吽の呼吸はばっちり。志村は、塚越の演奏について「マリンバという楽器“そのもの”の人ですね。演奏している時の一体感が素晴らしい」とその魅力を語る。塚越も「志村さんは、作曲もアレンジも手がけられているので、今後も一緒に新しいチャレンジができるのではないかと思っています」も期待を寄せた。
二人の共演は、さっそく4月3日(日)に熊谷文化創造館 さくらめいと太陽のホールで開催される塚越のリサイタルで再び聴くことができる。「ライブでは、毎回お客様から新しい刺激を頂いています。それによって、私も新しいことを考えたり、生み出していけたりするので、今後もどんどんいろんなところで演奏したいと思っております。クラシックだけにとらわれずに、ジャンルを超えて、マリンバを活かした音楽を作っていけたらなと思っています」と語ってくれた塚越の今後の活動にも注目していきたい。
志村和音(ピアノ) 塚越慎子(マリンバ) [撮影=原地達浩]
日曜日の午後、カフェは音楽に溢れている。「サンデー・ブランチ・クラシック」次回もお楽しみに!
撮影=原地達浩 文=友成礼子
平野公崇(サクソフォーン)&田中拓也(サクソフォーン)
第1部 13:00~13:30 / 第2部 15:00~15:30
会場:LIVING ROOM CAFE(リビングルームカフェ)by eplus
MUSIC CHARGE: \500
3/20(日)
La Dill
第1部 13:00~13:30 / 第2部 15:00~15:30
会場:LIVING ROOM CAFE(リビングルームカフェ)by eplus
MUSIC CHARGE: \500
4/24(日)
前川ひろみ(ヴォーカル)
会場:LIVING ROOM CAFE(リビングルームカフェ)by eplus
MUSIC CHARGE: \500
公式サイト:http://livingroomcafe.jp/