#野水映画 “俺たちスーパーウォッチメン” 第一回レビュー『ミラクル・ニール!』
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TVアニメ『デート・ア・ライブ DATE A LIVE』シリーズや、『艦隊これくしょん -艦これ-』への出演で知られる声優・野水伊織。女優・歌手としても活躍中の才人だが、彼女の映画フリークとしての顔をご存じだろうか?『ロンドンゾンビ紀行』から『ムカデ人間』シリーズ、スマッシュヒットした『マッドマックス 怒りのデス・ロード』まで……野水は寝る間を惜しんで映画を鑑賞し、その本数は劇場・DVDあわせて年間200本にのぼるという。この企画は、映画に対する尋常ならざる情熱を持つ野水が、独自の観点で今オススメの作品を語るコーナーである。
1年ほど前から映画の魅力にどっぷりハマり、遅咲きの映画好きとして日々鑑賞を続ける声優・野水伊織です。皆さま、はじめまして、こんにちは。そんな私が近日公開の映画や、心に刺さった映画を紹介していくこのコラム。どうぞこれからお付き合い下さいませ。
第一回目は、もうすぐ公開されるサイモン・ペッグ主演のコメディ映画『ミラクル・ニール!』を紹介しよう。
ペッグが大大大好きな私としては、待ちに待った作品だ!去年『したまちコメディ映画祭』で、原題の『Absolutely Anything』として上映された時にはまだ日本公開が決まっておらず……行けなかったことが悔やまれたものである。そんな後悔は二度としない!と、前売り券は発売日に、特典の“ミラクル★クリアファイル”も付いてくることもあって3枚買ったが……。なんと、公開よりも一足早く鑑賞させていただいた。
サイモン・ペッグとソーセージ ©2015 Anything Absolutely Ltd All Rights Reserved
本作は、ペッグ演じる平凡な教師のニールが、右手を振るだけでどんな願いでも叶える力を手に入れたことから、次々と騒動を巻き起こしてゆくドタバタコメディ。なかなかピーキーなその力を使って、愛犬・デニスを喋れるようにしたからさらに大変なことに……!この全能の力、実は宇宙人たちが地球人の知性を測るために無作為に与えたものなのだが。ニールはそんなことなどつゆ知らず、自分の都合のいいことにばかりに力を使ってゆく。想いを寄せる女性と上手くいくように考えたり、面白半分で同僚の片思いに協力したり。一度破壊して全員死亡させてしまった担任のクラスを蘇らせるために、街中ゾンビで溢れ返らせてしまったり。
一方喋れるようになった愛犬のデニスは、「ビスケット!」を連呼してせがみ、ご主人の足で腰を振りたがるおばかわんこ。彼のせいでニールはゲイと勘違いされたり、片付けようとしたウンチが歩き出したり……。ほんのちょっとのブラックさと、「バカだなー!」と大声で笑えるユーモアがたっぷり詰まった作品に仕上がっている。
ロビン・ウィリアムズが声をあてたデニス ©2015 Anything Absolutely Ltd All Rights Reserved
イギリスの人気コメディグループ、モンティ・パイソンのテリー・ジョーンズが監督を務めるこの作品。同じモンティ・パイソンでも、私としては『Dr.パルナサスの鏡』(09)などの監督を務めたテリー・ギリアムのほうが馴染み深かったりするのだけど。そんな私にも嬉しいことに、本作では、モンティ・パイソンメンバー全員が宇宙人の声を当てているのだ!なんとも豪華!さらにデニスの声を担当するのは、一昨年亡くなったロビン・ウィリアムズ。この作品は彼の遺作の一つであり、温かみのあるコメディアンとしての彼らしさが、ふんだんに味わえるのではないかと思う(エンドロールでは、また一つ彼にまつわるサプライズがあるのでお見逃しなく!)
そして何といっても、やはり主人公・ニールを演じるサイモン・ペッグ。最近では、本人も大ファンである『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(15)や、『ミッション:インポッシブル』シリーズのベンジー役など大作への出演も目立つので、一般的にも彼の顔が広まってきているところかと思う。
私がペッグに出会ったのは、やはり『ショーン・オブ・ザ・デッド』(04)ペッグを一躍有名にした海外ドラマ『SPACED ~俺たちルームシェアリング』のエドガー・ライト監督が手掛けるゾンビコメディ作品で、“スリー・フレーバー・コルネット三部作”と呼ばれる、エドガー・ライト×サイモン・ペッグ×ニック・フロストトリオの一作目。残りの二作『ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!』(07)『ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!』(13)を観終わる頃には、すっかり虜になってしまったのだ。初めて見るペッグは表情がとても豊かで、情けないダメダメ男のショーン役がピッタリだった。かと思えば、『ホット・ファズ』ではカタブツでクールな刑事を、『ワールズ・エンド』ではアル中のヤンチャ男を演じ、その表情や雰囲気はころころと変わる!『変態小説家』(12)では、作品の序盤とエンディングで全く異なる顔を見せてくれた。
こんなペッグも…… ©2015 Anything Absolutely Ltd All Rights Reserved
それほど器用に色々な顔を見せてくれるペッグだが、本作『ミラクル・ニール!』では、また絶妙に冴えないキャラクターを呈してくれる。その中で見せるはにかみ笑いや、目をまん丸にして驚くその表情は、不思議と子犬のように愛らしくもある。まるでデニスとペッグ、2匹のわんこを見ているような気持ちになってくるのだ!だがその顔も『SPACED』の頃などと比べると、どこか垢抜けて、スッキリとした印象がある。やはりビッグな作品に名を連ねるようになった成果だろうか(そのあたりも個人的に嬉しい!) しかしこの作品、似た内容の作品の企画を立てていたということで、ペッグは一度オファーを断った経緯があるそうだ。その企画がポシャってしまった後にテリー・ジョーンズと再会し、もう一度オファーを貰い主演することになったという。なんとも嬉しい、“ミラクル”な偶然!
これだけキャストやスタッフの思いが詰まった本作。ドタバタとしたおバカコメディと思いきや、最後はハッとさせられる“愛”を感じることと思う。上映時間は90分未満と短めながら、満足感たっぷりのこの作品。この春のお供にどうぞ!
『ミラクル・ニール!』は4月2日(土)渋谷シネクイントにて先行公開 4月9日(土)新宿バルト9ほか全国公開
©2015 Anything Absolutely Ltd All Rights Reserved
原題:ABSOLUTELY ANYTHING
出演:サイモン・ペッグ:『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』、『宇宙人ポール』
ケイト・ベッキンセール:『アンダー・ワールド』シリーズ
ロビン・ウィリアムズ(声の出演):『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』
モンティ・パイソン(声の出演)
配給:シンカ 宣伝:CAMDEN