音楽とアートが魅せる化学反応!山下良平×Akeboshiのコラボライブをレポート

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明星/Akeboshi(左)と山下良平(右)

明星/Akeboshi(左)と山下良平(右)

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東京・渋谷にあるLIVING ROOM CAFE by eplusにて、今を駆け抜けるイラストレーター・山下良平による"躍動"をテーマとした展覧会『ALIVE』が、2016年2月19日(金)から3月21日(月)まで開催された。今回は、3月19日に展示企画のひとつとして行われた、バンド演奏とライブペインティングのコラボレーションイベントの模様をレポートしたい。

このイベントでアーティスト・山下とタッグを組んだのは、数多くの映画音楽などを手がけたことでも有名なミュージシャン、明星/Akeboshi(以下、Akeboshi)だ。7年前にAkeboshiのステージを初めて観た山下は、一瞬で彼の紡ぎ出す世界観に心を奪われ、以降、Akeboshiの音楽を聴きながら絵画制作に励むこともあったのだという。「いつか共演できればいいなとずっと前から考えてはいて。音楽とアートがコラボする、今回のタイミングしかない!と思ってオファーしました」と、山下。このラブコールにAkeboshiが快く応じ、本イベントが幕を開けることとなった。

 

それぞれが導き合う、「躍動」に満ちたステージ

ステージ上に立つ山下とAkeboshi。見つめあい、無言で固く握手を交わす。今回Akeboshiのバックバンドを務めるのは、ドラムス・川崎昭(mouse on the keys)と、トランペット・佐々木大輔の2名。山下がカンバスに掛けられた布をおもむろに取り去ると、そこには真っ白な…ではなく、なんと、黒一色に塗りつぶされた画面が姿をあらわした。暗闇を彷彿とさせるこのカンバスに、山下はいったいどのようなイメージを描きこんでいくのだろうか。期待が高まる。

山下良平

山下良平

 

1曲目は、穏やかなピアノのループが馴染みのよいスローナンバー「Fragments of memory」。曲に合わせて山下も左足でリズムを刻み、右へ左へと、たおやかに筆を動かしていく。その後も、演奏される楽曲の雰囲気に溶け込むように、時には8ビート、時には16ビートのリズムで、山下も軽快に筆を躍らせる。

明星/Akeboshi

明星/Akeboshi

 

3曲目が終わったところで、MCが入る。「今日はゆっくり、いい緊張感の中でできればいいかなと思ってます」と、落ち着いたトーンで話すAkeboshi。あまり多くは語らないまま、再びスッと演奏へと舞い戻る。そして、高らかな歌い出しが印象的な「Sounds」。ブレイクと盛り上がりの差が顕著なこの曲において、山下も曲中の展開に合わせるかのように、筆の動きにダイナミクスをつけていく。その姿はまるで、演奏を共にする第4のバンドメンバーのようでもあり、ステージ上の4人を取り巻く一体感が、会場全体を包む込む。

 

何曲か重ねていくうちに、ようやくカンバスにメインとなるモチーフが見えてきた。そう、星空の下を回る、光り輝くメリーゴーラウンドだ。前半戦ラストの楽曲「ニワトリ」にて、抽象的であった画面に一頭の『馬』が描きこまれていく。会場が感嘆に包まれるなか、Akeboshiは一旦退場。舞台に残された山下は、静寂に身を置き、一人黙々と手を動かし続ける。

 

20分間のブレイクタイムを終え、再びステージに登場したAkeboshi。今度はアコースティックギターを手に、舞台中央へと腰掛ける。前半とは打って変わったアプローチに、観ているこちらも新鮮な心持ちのなか、いざ後半戦へと突入。ピアノの音色も素晴らしいが、柔らかく広がるギターのアルペジオも、聴いていてまた心地よいものだ。

 

「Peruna」を演奏し終えたところで、ギターを置き、再びピアノの椅子に腰かけるAkeboshi。するとなぜか、会場にまたしても「Peruna」のイントロのメロディーが響き渡る。なぜまた同じ曲が…?と不思議に思っていると、ステージのスクリーンに、つい先ほど「Peruna」をアコギ演奏していたAkeboshiの姿が映し出される。そしてなんと、その映像と同期させたピアノアレンジで2回目の「Peruna」の演奏に突入!ある種のパフォーミングアートを彷彿とさせるような気の利いた演出に、見守る観客も思わず息をのんだ瞬間であった。

ステージ左側に設置されたスクリーンに、直前に行われたライブ映像が投影される

ステージ左側に設置されたスクリーンに、直前に行われたライブ映像が投影される

 

ノスタルジックなピアノのメロディで始まる代表曲「Wind」で、会場の熱量もいよいよピークに。その後も珠玉の名曲が続くなか、あっという間に迎えたラストソングは、こちらも言わずと知れたヒットソング「Yellow Moon」。Akeboshiが伸びやかな声色で「Yellow Moon.今も、三つ、数えて、目を開けて」と歌うと、その歌詞に合わせて、山下がおもむろにカンバス上部の紙をめくりだす。と、なんとそこに姿を現したのは、大きな満月!最後の最後に、アッと驚くトリックが隠されていたのだ。この山下のサプライズ演出に驚かされたのは観客だけではなかったようだ。Akeboshi自身も、今回のステージングに隠されたとっておきの"オチ"を事前に聞いていなかったそうで、「最後に満月が出てきたときにはゾクゾクっとしました」と、その後興奮気味に語った。

 

今回のドローイングのモチーフとなった「メリーゴーラウンド」について、山下はこう語る。

「Akeboshiさんの音の世界というのは、遊園地っぽいんですよ。遊園地のなかに光がこもっていて、そのなかで彼が歌っているようなイメージ。何気なく哀愁や寂しさがあるんだけども、そのなかにも明るさがあって、おもしろい」

 

また、今回のセッションは、両者の息がとても合っていたため、ある程度の打ち合わせを通じて計算して創り上げたものなのかと思っていたのだが、実際のところはまったく違っていたようだ。

「一番最後に『Yellow Moon』をやる、ということ以外は何も打ち合わせしていませんでした」と、山下。「あらかじめ考えている仕込みの部分と、まったく考えない未知の部分の組み合わせが、おもしろいエンターテイメントになるんですよ。全部計算されつくされたエンターテイメントはおもしろくない」と言葉を続ける。Akeboshiも、そんな山下に呼応するかのように「どこにいくのかわからない山下さんの絵を見ながら演奏していて、こちらもドキドキしましたし、感情がすごく入ってきました。彼に導かれて、普段やっていないような楽曲展開になりましたし、ダイナミクスのある演奏になったんじゃないかな」と述べた。

舞台に立ち、パフォーマンスを繰り広げる彼らであっても予想だにできない展開に包まれた今回のコラボレーション。まさに、後にも先にもない、一夜限りの伝説のステージとなったのではないだろうか。

 
 
 
インタビュー・文=まにょ 撮影=岡本麻由

 

アーティストプロフィール
山下良平(やました りょうへい)
 
”躍動”を一貫したテーマに絵画作品、イラストレーションを制作。マガジンハウス『Tarzan』 表紙をはじめ、ナイキなどのビジュアル制作や、音楽フェス『SUMMER SONIC』でのライブ・ペインティング、横浜マラソン2016公式ビジュアル作成などアート・ディレクションを含めた活動にも力を入れる。画家としての活動も本格始動し、自身のアートブランド『LIKE A ROLLING STONE』を立ち上げ絵画作品の発表、販売を行う。 2015年、大阪で開催されたアートフェア『UNKNOWN ASIA』で『イープラス賞』受賞。

 
明星/Akeboshi

明星嘉男によるソロ・プロジェクト。学生時代からバンド活動を行い、高校卒業後にリバプールの音楽学校LIPAに留学。在学中の2002年にミニアルバム『STONED TOWN』でデビューする。以降、井上陽水と共作した『Yellow Moon』や、イギリス・アイルランドでレコーディングを行ったアルバム『Meet Along the Way』などを発表し、松たか子や一青窈へも楽曲提供。

橋口亮輔監督の映画『ぐるりのこと。』『恋人たち』の劇伴や主題歌、村上春樹・是枝裕和・仲間由紀恵とコラボレートしたサッポロビールの2012年箱根駅伝特別CMなど、映画やCM音楽も数多く担当。2014年に発表した最新作『After the rain clouds go』では、全曲の作詞・作曲・ミックス・マスタリングを自ら手掛けた。ライブではピアノ弾き語りにサポートメンバーを加え、毎回異なる編成で行なっている。
 
上映情報
ドキュメンタリー映画「あめつちの日々」

日時:2016年5月7日(土)より上映開始
会場:シアター・イメージフォーラム、ほか
出演:松田米司(読谷山焼 北窯)
音楽:明星/Akeboshi
 
ストーリー:沖縄県読谷村やちむんの里。60を超える窯元が集まり、焼き物作りがさかんな地区である。4人の親方で営む共同窯「北窯」もここにある。親方の一人、松田米司。工房では使うための器、伝統工芸品が今日も作られている。故郷、沖縄の月で粘土を作り、自分たちの窯で焼く。その伝統的スタイルは、かつての風景と変わらない。とはいえ、多くの問題もある。途絶えた伝統技術、そして地元の白土が入手困難になりつつあること…。

明星/Akeboshi「今回、こちらのドキュメンタリー映画の音楽を僕が担当しました。アイリッシュやケルトのような響きで、すごく熱を入れて作ったので、どうぞ楽しみにしていてください」
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