KERA×古田新太の世界に成海璃子と賀来賢人が挑む!「ヒトラー、最後の20000年~ほとんど、何もない~」インタビュー
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「ヒトラー、最後の20000年~ほとんど、何もない~」 (撮影=こむらさき)
ケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)と古田新太による最新作「ヒトラー、最後の20000年~ほとんど、何もない~」が2016年7月24日(日)から下北沢・本多劇場にて上演される。
「犯さん哉」(2007)、「奥様お尻をどうぞ」(2011)に続き、5年ぶりとなる「フルケラ」企画。大倉孝二、入江雅人、八十田勇一、犬山イヌコ、山西惇らいつもの顔ぶれに加えて、今回は、「鉈切り丸」に出演した成海璃子と、2015年に劇団☆新感線35周年 オールスターチャンピオンまつり「五右衛門vs轟天」で大活躍した賀来賢人が出演する。
…ということで、都内にてKERA、古田、成海、賀来に話を伺ってきた。
――さて、今回はどんなことをする予定ですか?
KERA:前2作同様、デタラメなものを(笑)「元気なデタラメ」はここでしかできないので。同じ事をナイロン100℃でやるとなぜか元気がなくなるんですよ。彼らにはどちらかと言うと引き芸が似合ってるっていうのがある。その点、やっぱ、古ちん(古田)の存在がデカイと思いますよ。古ちんのテンションの高さが舞台を引っ張っていってくれる。あとはいつものメンバーだからね。説明しても仕方がないようなことをやろうと思います。
――基本的な確認をしたいのですが…ヒトラーは登場するんですか!?
KERA:ヒトラーねえ…なにせ20000年前の話だからねえ。まだ生まれてもいないと思うし(笑)
――…何でヒトラーが出てきたんですか?(笑)
KERA:いやあ、みんなでヒトラーの髭つけて写真を撮ったらおもしろそうだなって思って(笑)あとヒトラーの恰好をしているのにヒトラーが全く出てこなかったりするのはいいな、って思ってて。ちらっと出てくるかもしれないけど。少なくともチャップリンの「独裁者」みたいな風刺的なものにはならないと思いますよ!
――古田さん、5年ぶりの企画舞台となりますが、以前よりパワーアップしたものとなりそうですか?
古田:いやもうパワーアップできないよ。限界だよ。…ま、アベレージが取れれば(笑)
もともとやり始めた頃から言っているんだけど「若い人たちがもっとデタラメなことをしていい」と思うんだけどね。80年代のインディーズの舞台をやっていた人間としては「誰がいちばんデタラメか」が大事だったので。最近若い人であんまりデタラメをやっている人がいないなあと。「やっていいんだよ!(レギュラーメンバーは)50オーバーの人たちばっかりになっちゃったけど!一番若いのが大倉孝二なんだけど(笑)喜劇ってこういう方法もありますぜ。若い頃こういうことしかやってなかったんだけどねー…」ってのを観てほしい。KERAっちが言っていたけど、うちら劇団☆新感線なんて今、人情芝居(「乱鶯」)やっているからね。もう、金●マの一言も言ってない(笑) この企画ユニットではひとかどの役者を集めてやっていますので、璃子ちゃんと賀来君には「混ざってください」としか言いようがなく(笑)
――という訳で、成海さんと賀来さんという若い二人が入りますが。
KERA:僕は二人とは一緒に舞台を作ったことはないんですが、賀来賢人は池田成志のお墨付きなんです。
古田:はっはっは。
KERA:「モンティ・パイソンのSPAMARLOT」を観に行ったときに、池田成志が「こいつ、いいよ!」って薦めてくるのを鵜呑みにしました(笑)その後、M&O playsプロデュース「悪霊-下女の恋-」を観て「あ、本当だ」って思ったのも大きい。璃子は映像でいくつか仕事をしていて。なにせ最初に仕事したのは15歳の時だからね。一昨年ドラマに出てもらって、うまくなったなあと思いました。僕らがやる舞台は、人気があるそこらへんの若い子を連れてきて出しとけば集客は安心、みたいなものとは全然求めているものが違うので。璃子もうまくなっていて期待もしているし、きっと新鮮にできると思う。大切にしているものが普段のお芝居とは全然違うと思うから。
――さて、期待されまくりのお二人ですが、「フルケラ」企画に飛び込むお気持ちは?
成海:以前、「奥様お尻をどうぞ」を観に行ったときに、すごく印象的で衝撃だったんです。KERAさんとは映画とドラマはご一緒してますが、ようやく舞台に参加出来ると楽しみにしていて。「どんな作品ですか?」ときいたら「これです」と…(言葉を失う)その衝撃が本当に…今、ドキドキしていますね。
賀来:この企画舞台を観ているときはゲラゲラ楽しんでいたんですが、実際にやるとなるとね。でもこの舞台を経て大ブレイクしたいと思っています(笑)
――古田さんの役どころは、二人にデタラメを教える事?(笑)
古田:いやいやいや、もうおいらは台本を一字一句…(笑)そりゃ俳優としての務めですから(笑)
――古田さん、いろいろなところで「出番はなるべく少ないほうがいい」って話していらっしゃるから…
古田:そりゃそうです。そうですけど、またラストで「古田新太だー!」で終わったらどうしようかと(笑)
全員:(笑)
KERA:すごいセリフだったよね。
古田:ケツに「終」って書いてね。左のケツが糸へんで、右のケツに冬って(笑)それで「俺は古田新太だー!」で終わると。
――「フルケラ」企画も初回から9年が経ちました。(笑)この企画をうまくやりきるコツってありますか?
KERA:ナンセンスものって、演じる人間にとって、他の舞台よりフィルターが1個多いんですよ。観客にとってはデタラメでも、本人の中では筋が通っているように見せないと説得力がない。だからぶつ切りになってはいけない。その芝居を通すためには、例えば自分の中でシチュエーションをずらし、シュミレーションをした上でそれと全然違うことをやる…そんなことを璃子とやった映画のときも散々言ってましたね。こんなくだらないシーンだと思わずに「例えばこうだったらどう?」と考えてみる。だから一つ通過しなければならないフィルターが多いんです。さっき、古ちんがセリフを一字一句…って言ってましたけど、あながち間違ってないんですよ。もちろん稽古場はみんな笑っていますが、アドリブはココとココとココだけ!って決まっているんです。せいぜいが全体の3%。ストライクゾーンの中で遊ぶ、っていうのはありますが、みなさんが思っているほど適当じゃないんです(笑)相当適当だと思っているでしょ?
――いろいろな笑いを計画的に仕込んでいるんですね。
KERA:前回は途中でファンタジックな展開になる場面があって…上演中に古ちんに言われて気が付いたんだけど、「あれ、これファンタジーなんだ」ってお客さんが思ってくれると、その瞬間から突然楽になる。「ファンタジーなら何でもありだ」と笑ってくれるようになるからです。そうした計算はいつもよりしようかなって思っています。あらすじがあるかのように見せる。でないとだいたい1時間くらいでみんな笑わなくなるんです。(古田の方を見て)だよね?
古田:みんな、慣れるのよ。最初「何が行われているんだろう」って注視をするんですが、「この人たち、ちょっとズレてるぞ」と気が付いて。ズレていることを笑っていいんだな、ってわかって30分くらいで笑い始めて…ずーっとズレているからそのうち慣れてくるんだよ。それが当たり前になっちゃうのよ(笑)ナンセンスコメディをテンションあげてどれだけのカロリーで見せるかが勝負ね。
ナイロン100℃でやると冷静にやるんだけど、こっちのチームはカロリーを使う人たちが多い。入江(雅人)さんとか山西(惇)さんとか。山西さんに至ってはそのデタラメに説得力を持たせる。そして客が笑わない(笑)という、恐ろしい状況になる。おいらしか笑ってないっていうすごいスキルなんです(笑)
KERA:山西さんといえば、すごいいいシーンがあって。平岩紙が寝ているところで山西さんが一人でムタラクタラな独白を延々続ける。しゃべっている…そこがちょうど1時間越えのところで(笑)
――この舞台に出る側として、いちばん大切なものって何だと思いますか?
古田:「マジメ」。やっぱ最初のナンセンスの定義じゃないけど、常識的なお芝居ができる人じゃないとナンセンスはできない。この二人は、何がおかしいのか、頭がおかしい人を正しく指摘できるんで。それがないとただのキ●ガイになっちゃう。それはそれでおもしろいんだけどね。
KERA:ただ、見返りが少ないんだよね。
古田:褒められないんだよ。賞獲れないし。
KERA:おもしろかった、って言う割にお客さん笑わないし。で、意外とすぐ忘れちゃうし。
古田:たまにいますけどね。この前北九州のバーに行ったときに、「大阪で『奥様お尻をどうぞ』を観ました!あれが俺の中でいちばんおもしろかった」って言う人が。
賀来:僕の友達にもいますよ。
KERA:あれはタイミング的にも衝撃だったんだろうね。
賀来:客席に降りて皆さんがお尻を見せてるときは感動したって言ってました。
古田:でもそれくらいでしょ、見返りは。これで読売(演劇大賞)とか獲ったら…(笑)
KERA:その時は読売を見直しますよ(笑)
凶暴さだと思うんですよ、根っこにあるのは。僕はナゴムレコードのころからくだらない音楽をやってきた訳じゃない?石野(卓球)とか大槻(ケンヂ)とかと。でも“奇形児”とか“ラフィンノーズ”といった硬派な連中とやっても絶対負けないぞっていう気持ちはあったんです。なぜなら根っこに彼らは負けない凶悪さをもってるから。コメディは強い力を持っていると信じているからやっているんです。それが認めてもらえているかはさておき(笑)
「ヒトラー、最後の20000年~ほとんど、何もない~」 (撮影=こむらさき)
――このあと、もうしばらくしたら稽古が始まりますが…。気になることはありますか?
賀来:稽古場の様子がどんなものか気になりますね。
古田:…必然性があれば脱げるだろ?
賀来:え?(笑)
成海:はあーーー??(笑)
――今、どちらに言いましたか?
古田:どちらにも(笑)
KERA:「脱ぐ」としてもワハハ本舗とは違うから全く必然性のないところで脱いでもらいたいね。
賀来:それがいいです!「なんで裸なの?はあ?」みたいなのがいいです。
古田:きっと、野球拳とかあるよ。ヤソちん(八十田勇一)とヤマニー(山西)とで。
成海:そうですね。何をやるんですかね。楽しみです。舞台はKERAさんとは初。古田さんとも初ですし。
KERA:あ、でもそんなに大きな声出さなくても大丈夫だよ。
古田:「五右衛門VS轟天」のときは池田成志がいたからねえ。大きな声を出さなきゃならないって思っていたからね(笑)
賀来:毎回言われるんです(笑)
古田:成志さんは大きい声は面白いと思っているから(笑)
賀来:あと、もっと変な顔をしろって。それは彼が顔が大きいから成立するのであって!!
――「脱ぐ」という話が出ましたが、NGラインってありますか?どうしてもこれだけは舞台上ではできない、っていう。
成海:私的にはなんでもやらなきゃならないと思っていますけどね。
KERA・古田:ほうー!!
成海:周りの人はいろいろあるんじゃないかな。
古田:事務所的に(笑)
賀来:…たぶん事務所的には「射精」までだと思います…。
KERA・古田・成海:(大爆笑)
古田:「射精」はOKなんだ!?(笑)
――現時点での見どころは?
古田:入江雅人。
KERA:さっきそこだけは打ち合わせしたんだよね。
古田:イリぽんの魅力を引き出そうと。
KERA:イリぽん、本当に楽しそうなんだよねー。いちばん楽しんでいるのは大倉なんだろうけど。普段楽しそうに見えないからこの企画をやる時は本当に楽しそう。
古田:このチームでやると大倉とイリぽんは本当に楽しそうですよ。イリぽんなんて涙ぐんでますから。あの歳になって「終わりたくない」って言いだしますから。入江さんなら一人芝居、大倉ならナイロン100℃の活動とかあるけれど、どうもここが唯一帰れる場所みたいなんで(笑)大倉くんに至っては会うたびに「いつやるんすか?いつやるんすか?」って聞いてくるの(笑)
――「犯さん哉」から9年目、となれば来年10周年記念舞台とか企画できそうなものですが…。
KERA:一年に一本なんてとてもできないです。身体よりアタマが。まず切り替えないといけないんです。こういうものを書くときの脳みそに。
古田:あと、セリフが入らない。ストーリーに脈略がないから。でもそれを信じてしゃべらないといけないから。信じてしゃべるデタラメってアタマに入ってこないのよ(笑)普通そうは言わないだろうっていうことを真剣にしゃべらないとならないから。
KERA:「だけど」って言うのに逆説じゃなかったり、「はい」って返事してまったく違うことしていたり、ね。
古田:アタマおかしくなるよ。ヤソちんとかしょっちゅう「うーーっ」て唸っている。信じている言葉が信じられないっていうから。「俺はお前を愛しているー!」って言いながらこぶし握って殴り倒すとか(笑)
KERA:間違っているけど論理的。ちょっと宴会芸的に見えたとしてもそこには間違った論理がガツンとあるんです。何か妙なことをやらされるとしても、そういうものにも裏付けがあったりする。…射精とかね(笑)
古田:何か意味もなくとずーっと射精しているとか(笑)
賀来:(笑)
「ヒトラー、最後の20000年~ほとんど、何もない~」 (撮影=こむらさき)
●賀来賢人●
ヘアメイク SHUTARO(vitamins)
スタイリスト 伊藤省吾
2016年7月24日(日)~8月21日(日)本多劇場
2016年8月27日(土)、28日(日)北九州芸術劇場 中劇場
2016年9月1日(木)~4日(日)梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ
2016年9月10日(土)、11日(日)りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館 劇場
■出演:古田新太/成海璃子/賀来賢人/大倉孝二/入江雅人/八十田勇一/犬山イヌコ/山西惇