ドレスコーズ “レア曲を葬る”ツアーの最終日に広がった幸福しかない光景
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ドレスコーズ/Photo by HAJIME KAMIIISAKA
『the dresscodes R.I.P. TOUR』ファイナル
2016.3.19(Sat)横浜Bay Hall
オープニングナンバーは「BOYS」。毛皮のマリーズの1stアルバムの最後の曲だった。気怠いギターリフが響き渡るとガラリと景色が変わる。おとぎ話が奏でる荒々しいロックが志麿遼平のヴォーカルと混ざり合い、勢いよく転がり出す。畳み掛けるかのごとく「COWGIRL」、一瞬にしてやわらかい空気に包まれた「小鳥と私」。曲ごとにクルクルと表情を変える志麿の歌声とパフォーマンスに私たちは魅了され、ドレスコーズは僅か3曲で横浜Bay Hallを丸ごとギュッと掴んでみせた。
ドレスコーズ/Photo by HAJIME KAMIIISAKA
最初のMCで伝えられた『R.I.P. 』ツアーの主旨はこんな感じ。「報われなかった曲だけを演奏しようと思って今日は来ました。ずっとずっといい曲ばっかり書いてるのに、なぜ気付いてくれないんだろうと思って」。そして最後には「珍しい曲ばっかりやりますから、落ち着いてどうぞ」なんていうのだけれど、落ち着いてなど聴いていられるはずがない。その流れで披露された「或るGIRLの死」は狂おしいほどに美しかった。
ドレスコーズ/Photo by HAJIME KAMIIISAKA
小さく指揮をするように振り下ろした志麿の腕が合図、牛尾健太と有馬和樹が搔き鳴らす2本のギターが「レモンツリー」という珠玉のポップソングを形作っていく。「(She gets)the coat.」でフロアを強く揺らした鉄壁のバンドサウンドは、10年来の音楽仲間・おとぎ話だからこそ生まれたものだ。「本当にしあわせ者です、僕の曲は」志麿が思わずつぶやく。「いやぁ曲がいいから。ホンットに嬉しいね」有馬が満面の笑顔で答える。出会った頃の話、音楽の話、ツアーでの出来事、やっぱり音楽の話……行ったり来たりしながら展開していく二人のやり取りは実に軽やかで、妙にホッコリして、やたら味があり、なんだか中堅どころの漫才師のようだった。遠征先ではみんなでご飯食べて、音楽を聴いて、ホテルで部屋の飲みしていたらしいですよ。
ドレスコーズ/Photo by HAJIME KAMIIISAKA
「1曲1曲超集中して、心を込めて演奏します」と宣言したら、「1音も聴き漏らさないように超集中してね」ってオーディエンスにも促す、そして「Silly Song, Million Lights」、「嵐の季節(はじめに)」、「平和」、「JUBILEE」をメドレーで一気に届ける。恋に傷つき、愛に溺れ、夢に破れ、それでも“夢はおしまい ぼくはここで生きている”と祈るように歌う志麿は無敵だった。人生におけるありったけの喜怒哀楽をぶちまけた上で放たれる“一瞬でいい 世界をとめて~君だけが 僕の全て”。このフレーズに導かれるように掲げられた何本ものピースサインは、どれもこれもそれもすべてが誇らしげだった。
ドレスコーズ/Photo by HAJIME KAMIIISAKA
今回のツアーにおとぎ話を迎え、ドレスコーズとして共に旅した理由。ここまでのライヴで私たちには十分わかっていたけど、志麿はもっとちゃんと伝えたくて、言葉で語る代わりに彼らに1曲分の演奏時間を贈った。その想いに応えるようにおとぎ話が咲かせた鮮やかな「COSMOS」は、一人ひとりの心に手を伸ばし、そっと触れるような、光が灯るような、目の前の光景がチョッピリ違って見えるような……。見事なまでに、目の前のドレスコーズファンを根こそぎおとぎ話ファンにしてしまった。しかしその余韻に浸る間もなく、ずっと前からおとぎ話ファンの志麿がハイテンションで登場し、キメるカンフーポーズ、響かせる銅鑼、タイトルコールは「上海姑娘」! 音楽で受けた刺激は音楽で返すのが流儀とばかり、ステージ狭しと舞い踊る。ならばとおとぎ話は遊び溢れるアンサンブルで対抗し、負けじとフロアもクラップで参戦。と思ったら、哀愁を帯びた牛尾のギターが描く「メロウゴールド」のドラマチックが止まらない。みんなで歌って踊って思いきり泣いた「クライベイビー」の笑顔がたまらない。加速度を増したままラストナンバー「BABYDOLL」で、エモーショナルなモータウンサウンドで、この日最大の歓声で大団円を迎えたかと思いきや。この曲が誕生して6年、胸に秘めてきたお願いがそっと差し出された。どうやらチープ・トリックの「I Want You to Want Me」よろしく、サビ部分はお客さんの声が入るのを想定して空けてあったらしいのだ。見本としてバンマスの風間に歌わせる荒技ののち、オーディエンスの完璧なる合いの手“ダーリン ダーリン”に、この日ついに完成した「BABYDOLL」に、「ワーオ!」、「ヨッシャ!」、「アリガトー!」とにかく歓喜しまくっていた。こんな幸福しかない光景の中、“全部夢でもかまわない”だなんてできすぎだ。
ドレスコーズ/Photo by HAJIME KAMIIISAKA
アンコールに応えて登場した志麿が「またいつか会いましょうね、この5人と」といえば、すかさず有馬が「ちょっと待って。この5人でドレスコーズなんで」と言い直し、志麿が嬉しそうに「牛尾やっちまえ、ほら!」なんて煽ってみせる。5人のドレスコーズが寄って集ってかき鳴らすロックンロール「ベイビー・モートン」が、Bay Hallを再び熱狂の彼方へと連れ去る。「じゃあまた会う日まで皆さんお元気で。どうかお身体には気をつけてね。あと愛に、愛に気をつけてねー」。もはや歌の一部となった別れの挨拶。“アイム・アン・イミテーション”という告白から始まる「愛に気をつけてね」が、“Baby Baby あんたなんか”のシンガロングで幕を閉じるまでの物語は、本心をさらけ出すことが苦手な志摩が描く唯一嘘のない世界だ。ダイブした客席でみんなの頭上を泳ぎ回るのは単に近づきたいってだけじゃなくて、本能のままにその身を委ねたいからだし、“キライ”の連呼から伝わってくるのはもう“アイシテル”の想いしかないんだもの。
ドレスコーズ/Photo by HAJIME KAMIIISAKA
“レア曲を葬る”ツアータイトルに掲げられた謳い文句に、歌い納められる曲たちの最期を見届ける気持ちで臨んだけれど、実際は実験的なまでに表現方法を変えてきたバンドだからこそ、そしてひとりのドレスコーズになった今だからこそ、普段セットリストに挙がらないけどお気に入りの曲を大好きな仲間と鳴らして、それを大好きなオーディエンスと共有して、とびきり最高のカタチで心と身体に深く刻みたかったのではないか。本当に2度とやらないかどうかはわからない。ただ有馬の言葉を借りるなら、この日みんなで過ごした1時間半はずっと音楽が喜んでいた。
こういう主旨のライヴなので、内容についてSNS等に書き込まないよう各会場でお願いしていたらしい。結果、一件もネタバレのないままこの日を迎えたとのこと。ドレスコーズファン、素晴らしい。という事実を前説で伝えたのは元ドレスコーズメンバー菅大智だった。こういうプレゼントはいつだって嬉しい。そしてまぁチョッピリ憎らしい。
Photo by HAJIME KAMIIISAKA Text by Sachiko Yamamoto
ドレスコーズ/Photo by HAJIME KAMIIISAKA
2016.3.19(Sat)横浜Bay Hall
01. BOYS
02. COWGIRL
03. 小鳥と私
04. 或るGIRLの死
05. レモンツリー
06. (She gets)the coat
<R.I.P.メドレー>
07. Silly Song,Million Lights
08. 嵐の季節(はじめに)
09. 平和
10. JUBILEE
11. COSMOS[おとぎ話]
12. 上海姑娘
13. メロウゴールド
14. クライベイビー
15. BABYDOLL
[ENCORE]
16. ベイビー・モートン
17. 愛に気をつけてね
『SWEET HAPPENING 〜the dresscodes 2015 “Don’t Trust Ryohei Shima”JAPAN TOUR~』
2016年5月11日発売
ドレスコーズ Blu-ray『SWEET HAPPENING 〜the dresscodes 2015 “Don’t Trust Ryohei Shima”JAPAN TOUR〜』
本編:Zepp DiverCity TOKYO公演
特典:“LOVE & HAPPENING” D.T.R.S. JAPAN TOUR DOCUMENT
[DVD]
ドレスコーズ DVD『SWEET HAPPENING 〜the dresscodes 2015 “Don’t Trust Ryohei Shima”JAPAN TOUR〜』
本編:Zepp DiverCity TOKYO公演
■収録曲
【本編】※Blu-ray、DVD共通の内容のものとなります
01. HEART OF GOLD
02. スローガン
03. ボニーとクライドは今夜も夢中
04. jiji
05. もあ
06. 愛さなくなるまでは愛してる(発売水曜日)
07. Lily〜ダンデライオン
08. それすらできない
09. トートロジー
10. あん・はっぴいえんど
11. ゴッホ
12. 愛する or die
13. 犬ロック
14. ビューティフル
15. みなさん、さようなら
【ENCORE】
16. 愛に気をつけてね
【日 程】4月1日(金)
【開場時間】18:30
【開演時間】19:00
【終演時間】21:00(予定)
【出 演 者】志磨遼平、越川和磨、平野宗一郎(EVIL LINE RECORDS)
【会 場】豊島区民センター文化ホール(JR、東京メトロ池袋駅(東口)より徒歩5分)
【会場 URL】http://www.toshima-mirai.jp/center/a_kumin/
【住 所】〒170-0013 東京都豊島区東池袋1-20-10 6階文化ホール
3/4(金)開店時より下記対象商品をいずれか1枚全額内金にてご予約頂いた方に先着で「イベント応募ハガキ」を購入枚数分お渡しいたします。ハガキに必要項目部分をご記入の上、応募締め切りまでに表書き記載の宛先までご応募下さい。
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