東 誠三(ピアノ) 意欲的な選曲で、今春から新たなリサイタルシリーズをスタート!

2016.4.2
インタビュー
クラシック

東 誠三(ピアノ) ©寺澤有雅

 2008〜12年に8回にわたりベートーヴェンのピアノ・ソナタ全曲演奏会を福島県の三春で行い、その成果を9枚のライヴ録音CDの全集として発表し高評を得た東誠三。東京芸大や東京音大などで後進の指導も行っている彼が、満を持して臨む新しいリサイタルシリーズの第1回がこの4月に開催される。
「5年間のベートーヴェン漬けの時期を経て、今抱えている激務からも解放される目処がたち、この辺で今まで弾いてなかった曲にじっくり取り組まねばと思い、60歳までの間に毎年リサイタルを開くことを計画しました」

 今回はそのスタートにふさわしく、若き日の記念碑的なショパンの練習曲を核に据えたプログラムを用意。
「ピアニストにとっては試験やコンクールなどにおいて“通過儀礼”ともいうべきエチュードを、原点に戻ってあの頃の情熱を思い出しつつ弾いてみようと思ったのです。『3つの新しい練習曲』は一見地味な曲ですが、改めて弾いてみるとノクターンにも通じる叙情的で繊細な表現に溢れ、非常に奥が深く、それでいてテクニックを取得するためのしっかりとした訓練になっている。その2つの異なる側面の高度な次元での一致は『12の練習曲 op.10』がさらに見事で、徹底的なエクササイズの中から豊かな感情が湧き上がってくる。しかも通して演奏することで変化に富み、うまく繋がっていながら意外性を感じさせる面白さもある。つくづく凄い作曲家なんだと思います、ショパンって」

 一方、ロマン派でありながら古典主義的な形式を尊重するブラームスからはピアノ・ソナタ第2番をセレクト。
「ブラームスが若い時に書いたソナタには、ベートーヴェンを尊敬しながらも、それを超えようとする彼の野心が滲み出ているし、特に第2番には後のシンフォニーのスケッチのような意味合いもあって、単なるピアノ曲の枠を超えている」

 プログラムの最後には、子どもの頃から敬愛していたというスペイン音楽から、アルベニス「イベリア」第4集を選んだ。
「アルベニスの手法は骨格になる和音はシンプルだけれど、たくさんの半音を重ねて複雑な色合いを出し、それを微妙に変化させて感情の変化を表現し尽くしている。第4集の3曲もそれぞれ土着的な風土に根ざしながら“スペインの心”を普遍的なものにまで高めているところが素晴らしい。ラローチャ先生の名盤を聴き、いつか演奏したいと思っていました。他にもまだまだ弾きたい曲がたくさんあります。元気でこのシリーズを続けていきたいですね」

取材・文:東端哲也
(ぶらあぼ + Danza inside 2016年4月号から)


東 誠三(ピアノ)
4/10(日)14:00
東京文化会館(小)
問合せ:ムジカキアラ03-6431-8186
http://www.musicachiara.com
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