カノエラナ 「今」を象徴する新星SSWが初ワンマンで「クエスト」クリア!

2016.4.6
レポート
音楽

カノエラナ

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カノエクエスト〜クアトロ城に集いし、500人の勇者達〜 2016.3.31 渋谷CLUB QUATTRO

“前髪斜めの新世代ロックガール”程度の認識で、初の渋谷クアトロ・ワンマンに出向いたところ、軽くカルチャーショックを受けてしまった。アニオタでどっちかと言えばインドア派というか、お家におこもり系。しかし、日々ツイッターで30秒動画をアップしたりするSNSの効果的な発信力をカジュアルに使いこなす彼女は着実にファンを増やし、”ヒトミシリ”なパーソナリティを曲げることのないまま、満員御礼のフロアを沸かせてみせたのだ。

カノエラナ

このライヴ、『カノエクエスト〜クアトロ城に集いし、500人の勇者達〜』というタイトルから察せられる通り、当日までにさまざまな”クエスト”がカノエラナに課せられていた。その1は「本公演に500人以上集客すること」、その2は「ライブを成功させることで、カノエラナの名物マネージャーであり敵でもある『ヨリミツサーン』を倒すこと」。初見の身には「なんのこっちゃ?」だが、どうやらRPG的にライヴが進行するのでは?と期待。すると、一人で登場した彼女は、アコギを抱え、ザクザク小気味いいカッティングで、レペゼンソング「カノエラナです。」の短いバージョン、酔っ払って文句ばかり垂れる男性をディスる「おーい兄ちゃん」など、30秒動画の人気曲の”完成形”をスピーディに披露していく。それにしても声のキャラクターが強い。ストレートで健気、ちょっとドスの効いた声、そして絶妙に色気すら感じる語尾と、想像以上に多彩なボーカリゼーションで曲の世界を立体化していく。

カノエラナ

今日のためにメタルスライム色にカラーリングしたという髪や勇者風の衣装もカノエラナならでは。そんな出で立ちでカオティックなイントロから始まり、内実、そうとう切ない「あなたとわたし、あかねいろ」をピアノで弾き語りする斬新さ。再び、アコギを手に取り、ブルージィなのにどこか人力SEめいたループを弾く「恋する地縛霊」でのプレイも、かなり力技だが、そのオリジナリティに度肝を抜かれる。

中盤には二十歳になる前に書いた曲の紹介として「20年振り返ると楽しいことより、辛いことや苦しいことの方が多くて、何度も音楽を辞めそうになりました。でも今、皆さんの顔を見ていると、ほんとうに笑顔で歌えるようになりたいと思います」と、音楽とカノエラナの関係をこれ以上ない純度で切々と歌うシンプルな弾き語り「キミにコイしてニジュウネン」を披露。その瞬間、曲調の振り幅などどうでもよくなってしまった。歌い終わると一旦ステージ袖にはけ、再びスクリーンには魔王・ヨリミツサーンが「まだまだ足りない」と、さらなるレベルアップをカノエにもファンにも求める。

カノエラナ

単身で500人強のファンと向き合って気持ちを解き放った彼女が再登場し、“魔王からのクエスト”を完遂するため(?)「私一人の力じゃ足りないようで…」とバンドメンバーを呼び込む。そして今度は「カノエラナです。」をグッとソリッドな抜き差しのアンサンブルで叩きつけ、フロアからはOiコールが上がるほどの盛り上がり。また、超絶妄想恋愛系の歌詞ながらリスナーにも、いや普通にドラマやアニメに熱中してる人にも大いに共感されそうな「あたしの彼氏は二次元の人」も、思わず”あいたたた…”な内容ながら、タフなバンドサウンドも相まって、新鮮な歌の表情を見せてくれた。

そしてこれまた”カノエラナの取り扱い説明書”めいた(人が多いところは嫌い、そもそも出かけるのに2時間はかかる、など)「ヒトミシリ」を歌う前に、ラストの<そんなに私を知りたいならば3回まわってワン!と鳴け>のワン!の練習をした上で演奏に突入。相当大きなワン!がクアトロに響きわたったのはいうまでもない。友だち面されるのが嫌いで、自分の部屋が好きだけど、人見知りのままでいいとも思わない、そんな気持ちに頷く人がいかに多いのか?も分かった場面だった。本編ラストは彼女の力強い地声から伸びやかな高音に抜けていくボーカルが牽引する「START」で、また新たにここから始まる決意を笑顔とともに刻み込んだ。

カノエラナ

男性の「カノエー」、女性の「ラーナ」というオリジナル・コールが音量を増していく中、スクリーンでは魔王・ヨリミツサーンが敗北を宣言、加えて5月から関東各地のライヴハウスで連続5ヶ月ワンマンライヴ開催の告知が映しだされ、会場が分かるごとにフロアで歓声が上がる。そこへ再登場した彼女は、これからの季節に思いを馳せたくなる爽快なポップチューン「真夏に片想い?」、そしてこの日最後の1曲はダンサブルな「モットアタシヲ」を歌う。その際、入場時に配られたグリーンのサイリウムがサビで揺れ、その光景に感極まった表情が遠目でも確認できたほどだ。このサイリウムもアンコールのオリジナル・コールも有志ファンによるサプライズ企画。カノエラナ自身も参加型ライヴを自由に発想するのと同様、ファンもこの空間を自ら演出する。アイドル以降のカルチャーとロックのライヴが自然に融け合うあり方もまた新鮮で、まさに「今」、だったのだ。


レポート・文=石角友香

カノエラナ

イベント情報
カノエラナ「月1ワンマン!!カノエがよかごて5連続」

5月27日(金) 東京・渋谷 Milkyway
6月23日(木) 東京・代官山 晴れたら空に豆まいて
7月28日(木) 東京・新宿 LOFT
8月19日(金) 横浜・O-SITE
9月15日(木) 東京・新代田FEVER
 
【オフィシャルサイト先行受付】
受付期間:3月31日(木)21:00~4月11日(月)18:00