『BANZAI』全曲披露にも沸いたウルフルズの日本武道館公演 待望のレポート公開
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ウルフルズ Photo by 後藤壮太郎
ウルフルズ ツアー2016 『ボンツビデカデカ』 2016.1.27 日本武道館
ミスター・スマイルはウルフルケイスケだけじゃない。おそらく武道館にいる老若男女、全員がもれなく笑顔になっていたのではないだろうか。これぞウルフルズと言いたくなるようなハッピーで熱いステージだった。人懐こくて、温かくて、おもろい。なおかつその根底にはロックンロール・スピリッツやガッツやネバー・ギブアップの精神がある。そして何よりも愛がたっぷりある。こんなバンド、他にはいない。
ウルフルズは昨年9月からライブハウスツアー『ボンツビアツアツ』、11月からホールツアー『ボンツビカイカン』、そして今年1月の神戸と東京の2日間に渡っての『ボンツビデカデカ』と、3パターンのツアーを展開してきた。昨年8月に行われた『ヤッサへ15! ボンツビパーティー!!』も入れると通算36本目。ファイナルとなるのがこの日本武道館公演だ。様々な会場でコンサートをやることで、メンバーもウルフルズのなんたるかを肌で感じていたのではないだろうか。序盤のライヴハウス・ツアーでも“ウルフルズがウルフルズを究めている”と感じたのだが、その究めっぷりにさらに拍車がかかっていた。
ウルフルズ Photo by 後藤壮太郎
おなじみのジェームス・ブラウンの「Cross Firing」のSEが流れて、メンバーが登場。1曲目は「ボンツビワイワイ」だった。トータス松本(Vo)、ウルフルケイスケ(G)、ジョンB(B)、サンコンJr.(Dr)というメンバー4人に、サポートで浦清英(Key)が加わる5人編成。タイトでタフでふくよかなグルーヴに乗って、芯のあるトータスの歌声が響き渡る。R&Bやロックンロールをたっぷりと浴びて育ってきて、自分達の血肉にし、さらにそのサウンドを鍛え抜き、磨き抜いてきた彼らだからこそのバンド・サウンドは唯一無二だ。セット後方から巨大なミラーボールが半分くらい見えていて、昇りかけの太陽みたいにキラキラ輝いている。「事件だッ!」では豪快かつしなやかな演奏。この曲の途中で“ULFULS”の電飾が出てきた。ウルフルズにはゴージャスでクラシカルな電飾がよく似合っている。
ウルフルズ Photo by 後藤壮太郎
「メチャクチャ熱い夜にしますので、最後まで楽しんで帰ってください。楽しんでくれるだけでいいんです」
トータスのこの言葉に、彼らのライブに向かう姿勢が集約されている。こ難しい理屈もエクスキューズも一切ない。ひたすら楽しくて、ひたすら潔い。続いて演奏されたのは1992年にリリースされた彼らのデビュー曲「やぶれかぶれ」。この歌と演奏のみずみずしさをなんと形容したらいいだろうか。どれだけ月日がたっても、色あせない。せつない歌声と人間味あふれるハーモニーが染みてくる。つまり彼らは初期の頃から普遍的な歌を作っていたということだ。メンバーのハーモニーがいい感じだったのは「あそぼう」。声が重なって響くのと同時に、キャラが重なり合って響く。ウルフルズのコーラスを聴いていると、ついそう感じてしまう。トータスと一緒に歌うのが楽しくて仕方がない。そんな客席の喜びが伝わってくるようなコール&レスポンスが実現したのは「愛がなくちゃ」。彼らの奏でる音にはまさに愛がいっぱい詰まっている。
「武道館、8年ぶりやってね。そう言われれば、そーかと。初めて武道館でライブをしたのが97年。全然覚えてないです」とトータス。「武道館は大きさは別にして特別なの」とウルフルケイスケ。会場はデカデカだけど、場内の空気はライヴハウスのようにアツアツだ。ウルフルズには武道館が似合っている。
ウルフルズ Photo by 後藤壮太郎
「暴れだす」では目をつぶって歌っていたトータスの歌声が深く入ってきた。トータスの弾き語りで始まった「サムライソウル」での渾身の歌声と、包容力のあるウルフルケイスケのギター、温かいジョンBのベース、推進力を備えたサンコンのドラムスが素晴らしかった。泣きたくなるような、そして笑顔を浮かべたくなるような演奏。さらにはすべてを肯定してくれる大きさを備えた「ええねん」へ。彼らの音楽にこんなにも胸を揺さぶられるのは、彼らの奏でる音がただポジティブで元気いっぱいで明るいからではなくて、人間とは悩んだり、まよったり、後悔したり、傷ついたりするのだという前提があった上で、歌われ、演奏されているからだろう。
中盤はメンバーひとりひとりをフィーチャーしたコーナー。ハンドマイクで「六甲おろし」を歌いながら登場したウルフルケイスケが続いて披露したのは「まいどハッピー」だった。トータスは上手でギターを弾いている。下手へ上手へ歩きながらの歌。ウルフルケイスケの人間性全開の朴訥とした歌に顔がほころんでしまった。サンコンJr.がギター、トータスがベース、ウルフルケイスケがドラムスという布陣になって、パート・チェンジ・バンド、“ウラフルズ”の演奏が始まるかと思いきや、メンバーがステージから姿を消して、ジョンBがハットにトレンチコート、マフラーというハードボイルドなスタイルで登場。打ち込みサウンドでのジョンB・オン・ステージの始まりである。彼が歌ったのはジョンB&ザ・ドーナッツ!名義で発表したフレンチボッサ風の「所在ない」。客席に手を振ったり、ステージを降りて観客にバラの花を手渡したりしながらのキザなパフォーマンスに客席がウケまくっている。このユルい脱力感もワン・アンド・オンリーの魅力だ。続いてはサンコンJr.のドラムソロ。定位置ではなくて、ステージの最前列に設置されたドラムセットをスタッフが押して、上手から下手へと移動しながら、エネルギッシュな演奏を披露していく。なんとドラマーらしいドラマーなのだろう。彼はグッと来るリズムをよく知っている。
ウルフルズ Photo by 後藤壮太郎
「スポーティパーティ」ではアリーナの客席の間をトータスがまるで竹馬に乗るかのようにして、背の高いトレーニングマシーンで練り歩きながら歌うパフォーマンスもあった。ソウルフルな歌声が全開の「チークタイム」、トータスがアコギを弾き、観客も一緒に歌って、会場内がひとつになった「愛すれば」、フレンドリーな歌と演奏に顔がほころんでしまった「ステキだね」などなど、ヒューマンな歌と演奏とに胸が熱くなっていく。トータスは途中から、お尻の部分が開いているおなじみの衣装で登場したのだが、あんなにもコミカルなかっこうで感動的な歌を演奏していける懐の深さもウルフルズの魅力のひとつだ。ジョンBの朗らかなベースで始まった「明日があるさ」ではウルフルケイスケが木琴を演奏する場面もあった。「バカサバイバー」ではバンドのエネルギーが炸裂していく。ミラーボールが回転して輝く中での「ロッキン50肩ブギウギックリ腰」では例によって、アドリブで様々な病名を追加しつつの歌。ディスコもファンクもロックも飲み込んだようなダイナミックな演奏も痛快だ。本編最後の「いい女」ではトータスがおなじみの行きつ戻りつのパフォーマンスもあり。“お約束”の数々をしっかり披露してくれるところもうれしい。しかも“お約束”だからと言って、手抜きがない。目一杯やっている。そこがすごい。「いい女」の歌詞の“ひとつだけ言いたいことは”の続きは“今日の武道館は絶対忘れんわ。みんなほんまにありがとう”になっていて、ウルフルズから観客へのラヴソングのように響いてきた。
ウルフルズ Photo by 後藤壮太郎
アンコールもうれしい選曲だった。大ヒットアルバム『BANZAI』がリリースされたのは1996年1月、ちょうど20年前ということもあり、『BANZAI』収録曲が全曲演奏されたのだ。「ガッツだぜ!!」で始まって、「トコトンで行こう!〜暴動チャイル〜SUN SUN SUN ’95〜てんてこまいmy mind〜大阪ストラット〜ダメなものはダメ〜おし愛へし愛どつき愛〜泣きたくないのに」という怒濤のメドレーを挟んで、アンコールのラストで「バンザイ~好きでよかった~」へ。20年前に戻ったような気がした。もちろん演奏力や表現力は大幅に進歩しているのだが、それぞれの曲に封じ込められた感情や衝動や情熱が鮮度の高い状態で立ち上ってくる。
ウルフルズはウルフルズのままだ。だが、それは進歩していないということではない。日々成長し続けているからこそ、ウルフルズは変わらないように見えるのだ。どの曲も全力。一音一音に心を込めている。その積み重ねで説得力や存在感や深みが増している。人間力も確実にパワーアップしている。濃いところはさらに濃く。熱い部分はさらに熱く。強靱な部分はさらに強靱に。そしてユルいところはよりユルく。つまりウルフルズはさらにウルフルズになっている。2016年にウルフルズがいることのかけがえのなさを痛感した夜だった。コンサート・タイトルのデカデカとは会場の大きさだけを指すのではない。ウルフルズはさらにでっかくなって、そこに存在していた。
撮影=後藤壮太郎 レポート・文=長谷川誠
ウルフルズ Photo by 後藤壮太郎
2016年8月27日(土) ※雨天決行・荒天中止
大阪・万博記念公園もみじ川芝生広場
開場 13:30(ピクニックエリア入場→13:30、スタンディングエリア→14:00)
開演 15:30
キャパシティ 15000名予定
大人 ¥7,000(税込) ※11歳以上。但し小学生(11歳・12歳)は保護者同伴の上スタンディングエリア入場可。
子供 ¥2,500(税込) ※4歳以上10歳以下のみ。子供
大人
3歳以下は入場不可。
スタンディングエリア→ブロック分け・整理番号付。ピクニックエリア→整理番号付