ウィーン・フィル3人の首席奏者への独占取材に成功! 「ウィーン・スペシャル・ガラ」

2016.4.9
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クラシック

「ウィーン・スペシャル・ガラ ウィーン・フィル3人の首席奏者による夢の競演」

歴史とロマンのあふれる音楽都市ウィーン。その優雅な息吹を伝える一日限りのクラシック・コンサートが6月に東京で行われる。その名も「ウィーン・スペシャル・ガラ  ウィーン・フィル3人の首席奏者による夢の競演」という。世界最高峰の技巧と独特の官能性を継承するウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の首席奏者3人が、飯森範親指揮・東京交響楽団と共演する。

ウィーン・フィル3人の首席奏者とは、まず楽団史上、初の女性コンサートマスターに就任した“ウィーン・フィルの女神”アルベナ・ダナイローヴァ(ヴァイオリン)。また、ウィーン・フィルのソロ・ヴィオラ奏者として伝統の響きを支える技巧派トビアス・リー。そして、ウィーン・フィルのソロ・フルート奏者にして早くも現代最高の名手との評価も高い、若き天才カール=ハインツ・シュッツである。このたびSPICEはウィーンにて、彼らへのインタビューをとることができた。ぜひ、ご一読賜りたい。



--皆さん、こんにちは。まず最初にお伺いしたいことは、ウィーン音楽の魅力についてです。

アルベナ・ダナイローヴァ (ヴァイオリン/以下アルベナ)その優雅さや、音と遷移の素晴らしいバランスに私はたいへん魅力を感じます。

トビアス・リー(ヴィオラ/以下、トビアス)ウィーンの音楽は独特な魅力を持っています。これはおそらく古典期以前から現代に至るまで、歴史的にウィーンは音楽の発展において非常に重要な中心地として位置していたからです。実際18~19世紀の著名な作曲家たちは、一度はウィーンに暮らしており、この事実だけでも多くの優れた音楽家を都市に引き寄せ、比較的高いレベルのメンバーと共に演奏することを可能にしました。ウィーンの音楽には特別な魅力があり、エレガントで洗練されたクオリティを持ち、私たちを違う時代へと誘います。

カール=ハインツ・シュッツ(フルート/以下、カール=ハインツ)ウィーンは最も重要なクラシック音楽の作曲家たちのるつぼであり、何百年も前からクラシック音楽やヨーロッパ文化の中心地でした。今もウィーンは世界中のアーティストを魅了し、彼らは演奏するためにやってきます。この街には伝統的で光り輝く芸術シーンがあり、その文化的貢献は膨大です。ウィーン・フィルは、あらゆる重要な作品が創り出された黄金のムジークフェラインを拠点としています。世界各国で多くの人がウィーン・フィルのニューイヤーコンサートで一年をスタートさせますが、シュトラウスのワルツやポルカと併せて幸せで健康な新年を祝うことができるのは、本当に素晴らしい瞬間です。音楽は言葉より多くのことを表現することができます。そしてそこには、多くの人々によって象徴的に、そして神話的にさえ捉えられているウィーンの魅力や温かさが詰まっているのです。

--アルベナさん、トビアスさんが東京交響楽団と共演する、モーツァルトの「ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲」はどのような曲でしょうか。

アルベナ: この曲は、同様のスタイルを持つ他のどんな作品とも比較することはできません。モーツァルトが残した中で、ヴィオラの独奏があるのはこの作品だけです。ヴァイオリンとヴィオラの双方に、ヴィルトゥオージティ(妙技)が満ちています。モーツァルトが母親を亡くした直後に作曲されたので、それぞれの楽章は異なる情緒を呈しています。

アルベナ・ダナイローヴァ(ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 コンサートマスター)

トビアス:  「協奏交響曲」はモーツァルトの最も美しい作品のひとつで、ヴィオラのレパートリーの中でもこの上なく美しいものです。愉楽、希望、悲哀、絶望、興奮、驚嘆など、あらゆる感情を喚起します。ヴァイオリンとヴィオラのコントラスト、そして完璧に融合した2つの音色は曲の冒頭からはっきりと、そして第3楽章まで様々な個性を持って、他の作曲家には類を見ない音楽の旅を示しています。ヴィオラの温かく情緒的な音質をお聴きいただくにはうってつけで、ずっと大好きな作品です。

--カール=ハインツさんが東京交響楽団と共演する、モーツァルトの「フルート協奏曲 第1番」についても教えていただけますか。

カール=ハインツ:  モーツァルトのト長調のコンチェルトは、数あるフルートの協奏曲の中で最も多く演奏している曲で、演奏するたびに新たな発見があります。明るく純潔で、特にオーケストラとの対話部分では若かりしモーツァルトの快活な気持ちが表れており、大好きな作品です。ソリストには最高レベルの古典的なヴィルトゥオージティやスタイルが要求されますので、フルートに限らず、モーツァルトの作品はいつもコンクールの課題曲に選ばれます。

--皆さんそれぞれ、今度日本で競演する他のお二人について、どのような印象をお持ちですか。

アルベナ: ウィーン・フィルでは互いに室内楽をやる伝統があり、ほぼすべてのメンバーと室内楽のコンサートで共に演奏しています。今回日本で再びこの2人の仲間と、そして指揮の飯森範親さんと東京交響楽団の皆さんと一緒に演奏できるのが楽しみです。

トビアス: アルベナ・ダナイローヴァさんとカール=ハインツ・シュッツさんは、二人とも並外れた才能を持つ音楽家で、彼らの音楽とテクニックは際立っています。以前、モーツァルトのフルート四重奏を彼らと録音しましたが、とても素晴らしい出来栄えになりました。もちろんオーケストラではいつも一緒なので、とても尊敬しています。彼らの人間性も素晴らしく、音楽を共にする上でもリラックスできるのです!

トビアス・リー(ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 首席ソロ・ヴィオラ奏者)

カール=ハインツ: アルベナさん、トビー(トビアス)さんのお二人と、以前モーツァルト作品を録音できたことはとても幸運でした。録音を通してより親しくなれましたし、彼らとはオーケストラでも一緒ですし、本当に素晴らしい音楽家です。

--日本公演で皆さんが使用する楽器は何というものですか? それを愛用する理由もお聞かせいただけますか。

アルベナ:  アンゲリカ・プロコップ財団から貸与されている、1727年に製作されたストラディヴァリウスの「Ex.ベンヴェヌーティ」を弾いています。コンサートマスターという立場ですが、この楽器はそれに適う素晴らしいヴァイオリンです。

トビアス:  1667年製のアマティだと考えられている、イタリアの古い楽器を使っています。1952年よりウィーン・フィルが永続的に借りているもので、ウィーン・フィルの首席ヴィオラ奏者が代々弾いています。前任者から20年以上前に受け取りましたが、豊かでダークな音色が気に入っています。ウィーン・フィルを引退するまでこの楽器を弾くことができるのを、心から幸運に思っています。

カール=ハインツ: ムラマツの24金のフルートを使用しており、これは私にとって非常に重要な材質です。この楽器は、テクニックの確実性やアーティキュレーションの良いレスポンス、温かさや華やかさまで様々異なる音色の可能性、そして遠くまで届く倍音豊かで効果的な音など、様々な要求に応えてくれます。

--皆さんにとって、ウィーンとはどのような都市でしょうか。

アルベナ: クラシック音楽の世界的な中心都市であり、ここでは音楽はまるで空気のようなものです。ウィーンほど多くの作曲家や演奏家たちが生活し活動した街は他にありません。しかしここに住む人々には、そういう華やかな人だけでなく、「状況は絶望的だけれど、深刻ではない」という人も住んでいるのです。私はそれが好きなのです。

トビアス: ウィーンは素晴らしい都市です。音楽のためにこの街へやってきて、豊かな伝統と体験できる音楽のクオリティ、そして芸術への関心とすべての芸術的なものにすっかり魅せられてしまいました。ここは家族で暮らすのにも安全です。二人の娘を育てましたが、危険を感じたことはありません。これはヨーロッパの他の都市では感じ難いことです!音楽の中心で暮らせることは本当に幸せです。

カール=ハインツ: ウィーンは今や私にとって故郷とも言える都市です。ウィーンに暮らし始めて10年以上経ちましたが、とても快い生活を送っています。様々なシーンにおいて、大規模な歴史的景観と活気のある現代的な芸術に刺激を受けています。

--今回の訪日で、演奏会以外で何か楽しみにしていることはありますか。

アルベナ: 日本にいる友人と会うことが楽しみです。

トビアス: いつも日本を訪れるのを楽しみにしています。聴衆の皆さんは世界で最も温かく私たちの音楽に熱心に応えてくれます。日本ではいつも心地よい時間を過ごし、日本食が大好きです! 日本料理と、コンサートの後に飲む冷えたビールが待ち遠しいです。

カール=ハインツ: もちろんコンサートがメインではありますが、何度も日本を訪れています。友人に会うのも一つの楽しみですし、いつもフルートメーカーのムラマツと楽器の相談をしています。

カール=ハインツ・シュッツ(ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 首席ソロ・フルート奏者)

--最後に、日本の音楽ファンに向けて、メッセージをいただけますか。

アルベナ: 日本の熱心なクラシック音楽ファンの皆さんの前で演奏できるのは特別な経験です。本当に温かい歓迎が嬉しいです。

トビアス: クラシック音楽ファンの皆さんに、私たちの音楽を聴いていただけることを楽しみにしています。モーツァルトは特に親愛なる作曲家で、私たちの暮らすウィーンにも近しい存在です。クラシック音楽をこよなく愛する皆さんへウィーンの風をお届けできることを嬉しく思います。皆さんに楽しんでいただくのと同じくらい、私たちも楽しんで演奏します!コンサートでお会いしましょう!

カール=ハインツ: 東京でモーツァルトの協奏曲を演奏できることは、本当に幸せです。モーツァルトのオペラを定期的に演奏するようになり、経験を重ねてきました。この作品はいつも私にとってチャレンジであり、皆さんに楽しんでいただければ幸いです。

 
ウィーン国立歌劇場よりアルベナ・ダナイローヴァさんのコメント動画が到着↓
 
公演情報
「ウィーン・スペシャル・ガラ  ウィーン・フィル3人の首席奏者による夢の競演」
 
■日時:6月5日(日)13:00開場/13:30開演
■会場:Bunkamuraオーチャードホール

■予定曲目:
モーツァルト:フルート協奏曲 第1番 ト長調 K313
モーツァルト:ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲 変ホ長調 K364
ドヴォルザーク:交響曲 第9番 ホ短調「新世界より」op.95

■出演:
[ヴァイオリン]アルベナ・ダナイローヴァ(ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 コンサートマスター)
[ヴィオラ]トビアス・リー(ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 首席ソロ・ヴィオラ奏者)
[フルート]カール=ハインツ・シュッツ(ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 首席ソロ・フルート奏者)
[指揮]飯森範親
[管弦楽]東京交響楽団

■公式サイト:http://wien-gala2016.com/

 
プロフィール
アルベナ・ダナイローヴァ[ヴァイオリン]Albena Danailova, Violin
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 コンサートマスター


ブルガリア生まれ。ソフィアでネリー・ジェレヴァ、ドラ・イワノワのもとで研鑽を積み、その後ロストック音楽大学とハンブルク音楽大学でペトル・ムンテアヌに師事。2001年にバイエルン州立歌劇場管弦楽団の第2ヴァイオリン奏者となり、その後第1ヴァイオリン奏者、続いて第1コンサートマスターとなる。2003~04年にはロンドン・フィルハーモニー管弦楽団のコンサートマスターを務め、2008年からウィーン国立歌劇場管弦楽団のコンサートマスターに、2011年からウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のコンサートマスターに就任。これまでに、ハンブルク北ドイツ放送交響楽団(NDR)、ハンブルク・モーツァルト・オーケストラ、ソフィア・フィルハーモニー管弦楽団等と共演。ティボール・ヴァルガ国際ヴァイオリンコンクール特別賞、ヴィットリオ・グイ国際室内楽コンクール第1位およびピアノ・デュオ部門第1位など、数多くのコンクール受賞歴を持つ。

トビアス・リー[ヴィオラ]Tobias Lea, Viola
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 首席ソロ・ヴィオラ奏者


1966年、オーストラリア生まれ。アデレード音楽院でロナウド・ウッドクックに学び、1986年コンサート・ディプロマ、音楽(演奏)学士を優秀で取得。1984~86年、オーストラリア室内アンサンブルのメンバーを務めた。1987~90年には、ウィーン音楽大学でジークフリート・フューリンガーに師事した。1990年、リッカルド・ムーティの勧めにより、スカラ・フィルハーモニー管弦楽団(ミラノ・スカラ座管弦楽団)のオーディションを受け、以後4年間同管弦楽団の首席奏者を務めた。1994年より、ウィーン国立歌劇場管弦楽団に所属。1997年よりウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の首席ソロ・ヴィオラ奏者を務める。

カール=ハインツ・シュッツ[フルート]Karl-Heinz Schütz, Flute
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 首席ソロ・フルート奏者


オーストリア生まれ。エヴァ・アムスラー、フィリップ・ベルノルド、ジャン=ルイ・カペツァリに師事し、オーレル・ニコレからも教えを受ける。カール・ニールセン国際コンクール、クラクフ国際コンクール優勝。シュトゥットガルト・フィルハーモニー管弦楽団とウィーン交響楽団の首席奏者を歴任し、現在はウィーン国立歌劇場管およびウィーン・フィルフィルハーモニー管弦楽団の首席ソロ・フルート奏者を務める。これまでに、ハンブルク北ドイツ放送交響楽団(NDR)、ケルンWDR交響楽団、hr響楽団、バイロイト祝祭管弦楽団等に客演し、ソリストとしては、ウィーン交響楽団、ウィーン・クラシック・プレーヤーズ、シュトゥットガルト・フィルハーモニー管弦楽団、NHK交響楽団等と共演。また、ウィーン・リング・アンサンブルや、アンサンブル・ウィーン=ベルリンのメンバーも務める。CDはカメラータより「ブラームス:フルート・ソナタ op.120」等をリリースし、好評を博す。

飯森範親[指揮]Iimori Norichika, Conductor

桐朋学園大学指揮科卒業。ベルリン、ミュンヘンで研鑚を積み、これまでにフランクフルト放送響、ケルン放送響、チェコ・フィル、モスクワ放送響等に客演。01年、ドイツ・ヴュルテンベルク・フィルハーモニー管弦楽団音楽総監督(GMD)に着任し、日本ツアーも成功に導いた。国内では94年以来、東京交響楽団と密接な関係を続け、現在は正指揮者。06年度芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞。07年より山形交響楽団音楽監督、2014年シーズンから日本センチュリー交響楽団首席指揮者に就任。オフィシャル・ホームページ www.iimori-norichika.com

 
東京交響楽団[管弦楽]Tokyo Symphony Orchestra

1946年創立。音楽監督にジョナサン・ノット、正指揮者に飯森範親を擁する。現代音楽の初演などにより、文部大臣賞、京都音楽賞大賞、サントリー音楽賞、川崎市文化賞等を受賞。サントリーホールでの定期演奏会のほか、川崎市とフランチャイズ、新潟市と準フランチャイズ、八王子市パートナーシップ・オーケストラの提携を結び、コンサートやアウトリーチ活動を展開している。新国立劇場ではレギュラーオーケストラとして毎年オペラ・バレエ公演を担当。 2016年に創立70周年を迎える。