「子どもが大人を連れて行くべき映画」と評判!? ディズニー映画『ズートピア』共同監督&プロデューサーが語る、リアリティーへのこだわりがものすごい
ディズニー映画『ズートピア』の制作者のこだわりがものスゴい!
あらゆる種類の動物たちが人間のように暮らすハイテク文明社会“ズートピア”で、ウサギの新米警官・ジュディの活躍を描いたディズニー・アニメーション最新作『ズートピア』。
モフモフなキャラクターたちのかわいさはもちろん、陰謀渦巻くスリリングなストーリー展開に、大人もハラハラすること間違いなしの本作。すでに封切りされているアメリカでは、『アナと雪の女王』(2014)や『ベイマックス』(2014)を上回るオープニング興行収入を記録するなど大ヒット中です。
4月23日(土)の日本公開に先駆けて、今回は『ズートピア』のキーマンである共同監督のジャレド・ブッシュ氏と、プロデューサーのクラーク・スペンサー氏にインタビューを実施。「誰も見たことのない動物の世界」を目指したという本作の、リアルすぎる世界観などを語っていただきました。
■ 『ズートピア』は、子どもたちが大人を連れて行くべき映画!?
――すでに公開されているアメリカでは大ヒット中ですが、率直なご感想はいかがですか?
共同監督=ジャレド・ブッシュ氏(以下、ブッシュ):「Amazing!」の言葉に尽きます。スタジオの小さな部屋で数人が話し合うところから始まって、『ズートピア』の制作には4年半がかかっているんです。この映画が世界でどう受け止められるのかすごく不安でしたが、結果的にこれだけ多くの方に観ていただけてとてもうれしいですね。
私たちとしては、世界中のいろいろな文化の方が観て、「あぁ、これ僕のことだ!」「私の話だわ!」と思っていただけるような映画を目指していましたので。
プロデューサー=クラーク・スペンサー氏(以下、スペンサー):とてもうれしいですね。特に誇らしかったのは、評論家たちから「とにかく全ての年齢層が楽しめる映画だ」というレビューが出てきた時でした。
日本では宮﨑駿監督作品に見られるように年齢層に関係なくアニメを楽しむ文化があると思いますが、アメリカでは割と「アニメーションは子どもがいるファミリー向けのもの」という見方をされてしまうことが多いんです。私たちとしては年齢に関係なく観ていただきたいという気持ちで制作にあたっていたので、あるレビューの中で「『ズートピア』というアニメーションは子どもたちが親を連れて行くべき映画だ」という一文を読んだ時は、最高の気持ちでしたね。
ブッシュ:このまま興行収入が上がり続ければ、ドナルドダックもやっとズボンを買えるんじゃないかな(笑)
――ひとつずつ謎が解けていく刑事モノのような楽しさや、社会の闇に立ち向かうスリリングな展開もあり、確かに大人もそのまま楽しめる作品だという印象を受けました。
ブッシュ:企画の当初から完成に至るまで、「大人も楽しめる映画を作る」というのは目標として常に持っていました。最近の観客というのは本当に洗練されていて、より洗練された物語、そしてより複雑なキャラクターを求めていると思うんです。また、私たちディズニーは決して子どもたちを見下さず、上から目線で子どもたちに「こうだ」というものを与えることもしていません。子どもたち自身も、最近はより複雑で洗練された物語を求めていると感じています。
■ 「動物たちが大都市を作ったらどうなる?」というアイデアをとことん突き詰めた世界観
――「子どもを見下さない」という部分は、動物のリアルさや、世界観の作りこみにもすごく表れているように感じます。
スペンサー:動物が話すアニメーション作品はたくさんありますが、普通は動物ごとのサイズを調整して、画面に収まるようにしていますよね。でも『ズートピア』では、「誰も見たことのない動物の世界を作る」というミッションのもと、実際に自然の中で生きる動物のサイズにしています。
例えば劇中に出てくるキリンは、ネズミが95匹積み上がったくらいの高さで、自然界と同じです。そんなに高さの違う動物たちが共生する街ってどんなところだろう……と考えていくと、そこから世界観をよりおもしろくするギミックが生まれてくるんです。ネズミ専用のチューブの通路があったり、キリンが売店で飲み物を買えばエアシューターで高いところまで上げてもらったり、という感じで。道路には大きな車からミニカーのようなものまで走っていますし、全てがミニチュアサイズの「リトル・ローデンシア」という地区もあります。
▲全てがミニチュアサイズの「リトル・ローデンシア」のワンシーン!
気候に関しても同じで、ホッキョクグマやヘラジカといった動物は寒いところに住んでいるので、降雪装置によって降雪や気候が調整している「ツンドラタウン」という地区が生まれました。ラクダなど砂漠の動物が暮らす「サハラ・スクエア」地区も同様です。そんなふうに発想がどんどん広がっていって、私たちとしても満足できる世界観ができあがっていきました。
あと、観客の方に「ズートピアってこういう場所なんだ!」と序盤で理解してもらうために、ジュディがはじめて親元を離れて電車で大都市ズートピアへ向かうシーンには特に力を入れました。走る電車に合わせてズートピアの各地区や全体の様子が映し出されていくシーンですが、550人のスタッフが9ヶ月がかりで作っているんです。
▲550人のスタッフが9ヶ月掛けたシーンは、こちら!
――動物の生態などのリサーチにも、18ヶ月をかけたとうかがいました。
スペンサー:アフリカのケニアに行きましたが、とても参考になりましたね。例えば、水場にいろんな種類の動物が集まっているんですが、完全に入り乱れているわけではなくて、あくまで群れ単位が集まってそれぞれ水を飲んでいることに気付くんです。『ズートピア』の世界の中でも同じ場所にいろんな動物がいますが、キリンはキリン、カバはカバ、シマウマはシマウマというように、それぞれのグループで群れているようにしています。些細なことですが、そういう描写も重ねていくことで、さらにリアルになっていると思います。
ブッシュ:それぞれの動物の五感の特徴なども、自然界の実際のところを参考にしています。例えばウサギは左右の耳を別々に動かして360度の音が聴こえるので、ジュディはレーダーのようにして活用しています。逆に眼に関しては夜になるとよく見えないので、ジュディは必ず懐中電灯を使っているんです。反対にキツネのニックは、夜目がきくので懐中電灯を使っていません。動物のそういった特色を、ひとつひとつの動作の中にも活かすようにしました。そして“人間性”を与えれば、最終的なキャラクターのできあがりです。
▲動物たちのしぐさに注目です!
――『ズートピア』では数千もの個性豊かな動物キャラクターが出てきますが、おふたりのお気に入りや、自分と似ていると感じるキャラクターはいますか?
ブッシュ、スペンサー:(どうぞどうぞとお互いに譲りあう)
ブッシュ:いま譲りあったのは、ふたりとも「ジュディ」がお気に入りだからなんです(笑)。ズートピアから遠く離れた故郷・バニーバロウでニンジン作りに従事するのがウサギの人生とされる中で、「立派な警察官になる」という夢に向かって奮闘するジュディに、私自身も近いところがあります。
私はアメリカ東海岸の小さな街の出身で、12歳の時に父がビデオカメラをプレゼントしてくれてから、自分で映画を作るのが好きだったんです。ハリウッドに行って映画を作れればいいな~と漠然と思っていたんですが、自分の住んでいる街からハリウッドまでは2000マイル(約3200km)あって。ストーリーテラーになりたいなんていう壮大な夢を実現させるのは、すごく難しいだろうと思ってました。でも、「自分は絶対できるんだ!」という気持ちを持って、街を出てハリウッドに行ったんです。ジュディと同じだったと思います。そこから現実にはいろいろな障害や苦難を乗り越えなければいけませんでしたが、私は努力を続けて、間違いを犯したらそれから学んで、そしてまた再トライすることを続けてきて、やっとディズニ―に加わることができたんです。
そして今は、自分の夢だった映画を作ることができる――。だからなおさら、小さい頃からの夢を実現させたこのウサギの物語を、みなさんに届けたいと思っています。『ズートピア』を公開できることは、私にとって特別な意味があるんです。
スペンサー:僕自身の物語も、ジュディに、そしてジャレド(ブッシュ氏)に似ているんです。いつの日かディズニ―で映画を作りたいという大きな夢を持っていた自分がこうして4本目のプロデュース作品を送り出していますが、本当に夢が叶ったなと感じています。
ジュディ以外で言うと、ナマケモノのフラッシュがお気に入りですね。免許センターの職員をナマケモノにしたらどうかというアイデアが出た時は、スタッフみんなで大受けでしたね。そういうアイデアが絵コンテになり、アフレコされて、アニメーターたちが命を吹き込んでこうしてフィルムで見られるのも、思えば感慨深いですよね。いま世界中で、あの(免許センターの)シーンがすごくウケているんですよ(笑)。“夢を信じる”ジュディの物語を楽しみつつ、観客のみなさんにもぜひお気に入りのキャラクターを探してみてほしいですね。
▲ナマケモノのフラッシュの大受けのワンシーンはこちら!
――ありがとうございました!
[取材&文・小林真之輔]
■ ズートピア 作品情報
4月23日(土) ロードショー
<イントロダクション>
ここは、動物たちが人間のように暮らす“楽園”、ズートピア──誰もが夢を叶えられる、人間も顔負けの超ハイテク文明社会。
だが、あらゆる種類の動物たちが平和に共存するこの理想の大都会に、いま史上最大の危機が訪れていた──。
ディズニーが、動物たちの“楽園”を舞台に贈る感動のファンタジー・アドベンチャー。
ズートピア初のウサギの警察官のジュディが、夢を忘れたサギ師のキツネ、ニックを相棒に、大都会ズートピアに仕掛けられた恐るべき陰謀に挑む。
“夢を信じる力”とニックとの友情の絆を武器に、彼女は奇跡を起こすことができるのか…?
夢を信じて諦めずに進み続ければ、きっと世界は変わる。感動のファンタジー・アドベンチャー『ズートピア』が、世界に希望の扉を開く。
<ストーリー>
タイムリミットは48時間──「あきらめない。何があっても…」
動物たちの“楽園”ズートピアで、ウサギとして初の警察官になったジュディ。でも、ひとつだけ問題が…。警察官になるのは通常、クマやカバのように大きくてタフな動物たちで、小さく可愛らしすぎる彼女は半人前扱いなのだ。だが、ついにジュディも捜査に参加するチャンスが!ただし、与えられた時間はたった48時間。失敗したらクビで、彼女の夢も消えてしまう…。頼みの綱は、事件の手がかりを握るサギ師のキツネ、ニックだけ。最も相棒にふさわしくない二人は、互いにダマしダマされながら、ある行方不明事件の捜査を開始。だが、その事件の背後にはズートピアを狙う陰謀が隠されていた…。
<スタッフ>
監督:バイロン・ハワード
リッチ・ムーア
共同監督:ジャレド・ブッシュ
製作:クラーク・スペンサー
製作総指揮:ジョン・ラセター
音楽:マイケル・ジアッチーノ
プロダクション・デザイン:デヴィッド・ゲッツ
<キャスト>
ジュディ・ホップス:ジニファー・グッドウィン/上戸彩
ニック・ワイルド:ジャイソン・ベイトマン/森川智之
チーフ・ボゴ:イドリス・エルバ/三宅健太
クロウハウザー:ネイト・トランス/サバンナ 高橋茂雄
ライオンハート市長:J. K. シモンズ/玄田哲章
ベルウェザー副市長:ジェニー・スレイト/竹内順子
フィニック:トミー・“タイニー”・リスター
フラッシュ:レイモンド・パーシ
オッタートン夫人:オクタヴィア・スペンサー
ガゼル:シャキーラ/Dream Ami
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