#野水映画 “俺たちスーパーウォッチメン” 第二回レビュー『グリーン・インフェルノ』
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TVアニメ『デート・ア・ライブ DATE A LIVE』シリーズや、『艦隊これくしょん -艦これ-』への出演で知られる声優・野水伊織。女優・歌手としても活躍中の才人だが、彼女の映画フリークとしての顔をご存じだろうか?『ロンドンゾンビ紀行』から『ムカデ人間』シリーズ、スマッシュヒットした『マッドマックス 怒りのデス・ロード』まで……野水は寝る間を惜しんで映画を鑑賞し、その本数は劇場・DVDあわせて年間200本にのぼるという。この企画は、映画に対する尋常ならざる情熱を持つ野水が、独自の観点で今オススメの作品を語るコーナーである。
グリーン・インフェルノ。皆さんはこの言葉を聞いたことがあるだろうか?日本では1983年に公開された食人映画の金字塔『食人族』(81)の劇中で取材グループが訪れた、食人族の住む架空の地名である。
そしてそのカニバリズムホラーを鮮やかに現代に蘇らせたのが、4月20日にBlu-ray&DVDがリリースされる、イーライ・ロス監督の『グリーン・インフェルノ』だ!!ロス監督といえば、拷問ホラー『ホステル』(05)で一躍有名になったが、この『グリーン・インフェルノ』は、数々の食人映画への敬愛を込めて作られた“お食事ホラー”(!)なのである。
ご飯の時間だよ!『グリーン・インフェルノ』 (C)2013 Worldview Entertainment Capital LLC & Dragonfly Entertainment Inc.
企業の大規模な森林伐採により危機に瀕しているヤハ族を救うため、学生達による環境保護活動グループが現地に赴く。しかし、あまりに過激なやり方のせいで全員強制送還されてしまう。さらにはその途中で飛行機がエンジントラブルを起こし墜落。生き残った学生達が助けを求めたヤハ族は、食人族だった!
環境保護というと聞こえはいいが、この作品に出てくるのは、いわゆる“意識高い系”と評されている人々。SNSなどで過剰に自己演出をし、経歴や造詣の深さ、グローバルな視野を持っていることをやたらアピールするうわべだけの人を指すネットスラングである。彼らもそういった類に映るのだ。そんなちょっとイラっとさせてくれる彼らが、一人また一人と、自分たちが救おうとしていたヤハ族に喰われていく様は、なんとも皮肉めいているではないか。
本編の冒頭は緑一色のアマゾンの俯瞰映像。始まってすぐ『食人族』のオープニングのオマージュが!こういうところも、分かる人には分かるニヤリポイントだろう。そして、イタリア映画『人喰族』(84)を思わせる展開もあるのだ。
赤や黄に身体を塗りたくったヤハ族 『グリーン・インフェルノ』 (C)2013 Worldview Entertainment Capital LLC & Dragonfly Entertainment Inc.
そういったホラーファンに刺さる細やかなフックに次いで、見応えのあるシーンも多く飽きさせないのがこの作品の嬉しいところ。飛行機が墜落するシーンでは、パイロットが『デッドコースター ファイナル・デスティネーション2』(03)さながらの派手な死に方をしたり、墜落死を免れた後で間抜けな死を遂げたりと、シニカルな描写も欠かさない。『ファイナルデスティネーション』シリーズが大好きな私にとって、この一連のシーンは遊園地のアトラクションに乗っているような楽しさがあったことを報告しておこう!
そして肝心の食人シーン。たとえばグループの1人はヤハ族に手当てをしてもらっている!と勘違いをして喜んでいるうちに、広場の石台で生きたまま“解体”されてゆく。きっとしきたりなのだろう、まずは村の長が一足先に味見をする。くりっとした目玉をくり抜いて口へ運び「もぐもぐ……うん、美味しい!」的な顔。それを見た周りのオーディエンスは大盛り上がり!いい奴だったのに!!ヒロインのジャスティンのことを気遣って優しく声をかけたりしてたのに!!(泣) なんて思っているうちに、肉はしっかりとバラされ、塩を揉み込まれて燻製に……。ヤハ族はテキパキと、熟練の肉屋のように調理してゆく。「生肉はお腹壊すかもしれないもんね。しっかりしてるのねー」と感心してしまう手際の良さ。
こうして「性格の良い奴は生き残る」みたいなホラー映画のセオリーを最初から破られると、誰が生き残るのか……緊張感は高まることだろう。だがしっかりと他の食べられ方もあるので期待してほしい。私が好きなのはラストのほうのあのお食事シーンだ。ネタバレになってしまうので控えるが、見どころの一つだと思うのでお楽しみに!
「自然を壊すな!」とか言ってる場合ではなくなった意識高い系『グリーン・インフェルノ』 (C)2013 Worldview Entertainment Capital LLC & Dragonfly Entertainment Inc.
いやー、この何とも恐ろしい“ヤハ族”。実はその99%が、役者ではなく現地の少数民族・カラナヤク族の皆さんだというから驚き!映画というものさえ知らなかった彼らに、イーライ・ロス監督は例の『食人族』を観せ、こういった種族を演じてほしいと導いたという。ヤハ族という存在に無理が無く、その純朴さが恐ろしく見えるのは、やはり“本物”のパワーのなせる技なのだと感じた(もちろんカラナヤク族の皆さんは食人文化を持っているわけではないけれど)。ロス監督の美人若妻でヒロインを演じるロレンツァ・イッツォたちの熱演もさることながら、ぜひカラナヤク族の皆さんの演技にご注目いただきたい。
『グリーン・インフェルノ』 (C)2013 Worldview Entertainment Capital LLC & Dragonfly Entertainment Inc.
B級ホラー、血しぶきブシャー!ゴアたっぷりの映画が大好物な私。この『グリーン・インフェルノ』はもちろん公開初日に、特集展示も組んでいた新宿武蔵野館(改装のため現在休館中)で鑑賞した。しかし満席の劇場内には、思いのほか女性同士やカップルが多く驚いたものだ……!まぁ私の隣に座っていた女性は、パイロットが死亡するシーンで恐怖し飛びのき、横の彼氏に抱きついていたのだが。……ん?もしかすると“そういう作戦”だったのか?ホラー映画は恋人へのアプローチにも使えるとは……なかなか奥が深い。そんな風におうちデートで恋人に抱きつきながら観るもよし、私のように「ふむふむ」と前のめりで“ぼっち”鑑賞するもよし。ロス監督のカニバル映画への愛が詰まった『グリーン・インフェルノ』 みんな観るんだ!バイヤー!!
バイヤー!! 『グリーン・インフェルノ』 (C)2013 Worldview Entertainment Capital LLC & Dragonfly Entertainment Inc.
『グリーン・インフェルノ』Blu-ray&DVDは、4月20日(水)発売。
4月20日発売
DVD:3,800円(本体)+税
BD:4,700円(本体)+税
発売・販売元:ポニーキャニオン
出演:ロレンツァ・イッツォ、アリエル・レビ、アーロン・バーンズ、カービー・ブリス・ブラントン、スカイ・フェレイラほか
(C)2013 Worldview Entertainment Capital LLC & Dragonfly Entertainment Inc.