日本エレキテル連合単独インタビュー「ダメよ~ダメダメ」から2年、「古事記」にヒントを得た単独ライブ決定!
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日本エレキテル連合 (左)橋本小雪、(右)中野聡子
2014年の流行語大賞にも輝いた持ちネタ「ダメよ~ダメダメ」で一躍人気者になった女性お笑いコンビ「日本エレキテル連合」が、2016年単独ライブを開催。白塗りの(朱美ちゃん)に続く新キャラ続出(!?) 新ネタを詰め込んだ今作『電氣ノ社 ~掛けまくも畏き電荷の大前~』は「古事記」にヒントを得ているというが…。ライブを前にする2人の心境をSPICEが直撃!
――今日は最初に謝らなきゃいけないことがあるんですけど…。
中野:ええ…!? やめてください! こわい!
橋本:なんですか…?
日本エレキテル連合 (左)橋本小雪、(右)中野聡子
――日本エレキテル連合がこんなに面白いと思ってませんでした。
中野:ああ…!
――失礼な話なんですけど、僕はこれまでお2人のネタをテレビで、しかもたったひとつしか拝見したことがなかったんですよ。今回、取材するにあたって初めて様々なネタに触れて圧倒されてしまいました。
中野:ああ、光栄です。
橋本:うれしい!
中野:知っていただけるのであれば、入り口は何でもいいんです。
――僕みたいな人って他にもたくさんいませんか?
中野:白塗り(朱美ちゃん)のインパクトが強すぎてそれ以上先に進もうとしてなかった方が、YouTubeとかでネタを見るうちに「他のことも出来るんだ!」って気付いてくださることがよくありますね。嫌な時期もあったんですけど、やっててよかったなって思います。
――嫌な時期?
中野:はい。朱美ちゃんから先を見てくれないんじゃないかっていう時期があったんです。でも、そこをきっかけに入ってきてくれる人の方が多いので、今は本当によかったなと思ってます。
橋本:「これで止まったらどうしよう…?」っていう気持ちもあったんですけど、自分たちにはいろんなキャラクターがあるし、これをきっかけに見てくれる人が増えたと思います。
日本エレキテル連合 中野聡子
――ネタがひとつヒットすると、次作へのプレッシャーが重くのしかかってくると思うんですけど、お2人の場合は既にクオリティの高い作品がいくつもあったし、そんなに焦りはなかったのでは?
中野:そう言っていただけるのは光栄なんですけど、そんなことは全くなくて。今も本当に焦ってます。
――でも、他にも素晴らしいキャラクターがあんなにたくさんいるじゃないですか。
中野:今はその子たちに支えられてるって感じですね。
――あのキャラクターの豊富さは本当にすごいですよね。なんであんなに次々と生まれてくるんですか?
中野:私たちって普段の姿に全く色がなくてつまらないのに、それに気づかないままお笑いの世界に入っちゃって。それで、漫才がしたくてコンビを組んだのに全く面白くなくて、「このままじゃやべーな」と考えた結果、顔に鼻毛を描いてみたんですよ。それがエスカレートして、中身が空っぽな自分たちにキャラクターを入れ始めたんです。
――では、キャラクターを次々と生み出す行為は、空っぽな自分たちに対するコンプレックスの現れなんですね。それにしても、各キャラクターの設定が無駄に細かい。
橋本:あはは!
中野:本当に無駄だなぁって思います。でも、一度だけじゃなくて何度も観て欲しいし、せっかく生み出したキャラなのでいろんな仕掛けがしてあるんです。コントには出てこない家族の生い立ちもあったりして。
日本エレキテル連合 橋本小雪
――普段のお2人の会話からキャラクターの世界が広がってる感じがしますね。
橋本:ああ、それはあります。楽屋にいる時に急にコントのキャラで喋り出したり。
中野:遊びで広がっていきますね。
――そのせいなのか、ひとつひとつのネタの濃さがすごいというか、一切手を抜かずに全力投球してる感じが伝わってきます。
中野:不器用だし、要領が悪いんですよ。人物像から作っていかなきゃいけないので、ネタ作りはすごく遅いです。
――ネタを拝見してると、女芸人っていうよりもコント師って感じがします。女であることを過剰に武器にすることもないですよね。
中野:そもそも女を武器にするような経験がないし、“女性あるある”がないんです。だから、「敢えてそういう芸風にしない」とか尖った考え方があるわけじゃなくて、単純に武器にできるような女の話がなかっただけっていう。
橋本:でも、メイクとか衣装にこだわるのは女性ならではだなとは思います。
――これだけ独自の世界観でやっていて、ライバルっているんですか?
中野:最近は全員憎いですね。今までは芸人さん全員をリスペクトしてたんです。みんなすごく器用で、ネタも面白いし、フリートークもできるし、リアクションも面白いし……。みんなマルチなんですよ。しかも、全てのクオリティが高い。テレビを観てると面白くてムカつきますね(笑)。
日本エレキテル連合 (左)橋本小雪、(右)中野聡子
――お2人もコント以外のことにチャレンジしたい気持ちはあるんですか?
中野:今はとにかくコントをやっていこうと思ってます。でも、すごいコンプレックスはあります。他の芸人さんみたいに私たちはマルチに出来ないから、「甘かったなぁ」って。
――それを実感したのが2014年のブレイク?
中野:その前からできないことは分かってたんですけど、「ダメよ~ダメダメ」って言っておけばよかったので。
橋本:だけど、それ以外のトークとかが…。
中野:あの頃の映像を見ると笑っちゃいますもん。「ちょっと待って下さいよ~!」とか言いながらみんなが立ち上がってるのに、私たちだけ立ててなかったり。
橋本:グループ芸ができないし、空気も読めないし、求められてることもよく分からず全然違うことやっちゃったり、けっこうひどいもんで。「ダメよ~ダメダメ」もほぼ上手く返せてなかったですから。
――求められてることに気付かず。
中野:「これ、やってくれる?」
橋本:「はい…」
――(笑)僕の勝手な想像なんですけど、2014年の経験を経て「これは舞台に専念した方がいい」という判断で去年の全国ツアー(「死電区間」)に繋がったのかなと。
中野:向き・不向きというのはあるし、自分たちで「これは向いてない」って切り捨てられる立場ではないんですが、今はコントに力を入れたいというのはその通りで、昔のことを笑って喋れるのも今はコントをやることが大事だと思えているからなんです。
――なるほど。お2人のコントって声を出して笑えるところももちろんあるんですけど、時に面白さがジワジワと染みてくるような場面もあると僕は感じてます。2人が目指している笑いはどういうものなんですか?
橋本:別に難しいことをしようとは思ってないし、ベタなことがしたいんですよ。なので、それを見てただ声を出して笑って欲しい。
中野:あと、例えば、人の癖って本来は笑うようなものではないじゃないですか。だけど、そこも愛おしいんだよっていう。明確なボケ以外のところでも笑って欲しいですね。
日本エレキテル連合 (左)橋本小雪、(右)中野聡子
――受け手の自由に楽しんでもいいものなんですか?
中野:しっかり伝えられてないっていうのはあるかもしれないですけど、正解はあるし全部解説できます。なので、「正解はあなたの中にあります」っていうことは基本的にないようにしてますね。
――うーん、やっぱり難しそうですね。
中野:そんなことないんですけどね……私、ドリフが大好きなんですけど、ドリフのコントで最後にセットが崩れるのって意味わからなくないですか?
――たしかに。
中野:説明しろと言われても説明できないのに、今やみんなそれが当たり前のことだと思ってる。タライが落ちてくるのだって「それ、どこにあったんだ?」って思いません? よく考えるとすごくシュールなんですよね。
――「いつか自分たちのジャンルを作りたい」っていうのもそういうことなんですね。
橋本:「これが面白い」っていう風になればいいなって。
――では、今回の単独公演ですが、どんな内容になるんでしょうか?
中野:Twitterでこんなことを言ってくれる人がいて。演じるのはどれも2人が生み出したキャラクターだから、それを生かすも殺すも私次第だし、日本エレキテル連合っていう星で私は神みたいな存在なんだ、って。私、ずっと劣等生だったのに“神”だなんて初めて言われたんですよ。それをきっかけに今回は神になろうと思って、「神様ってことは神社だな…」ということで「電氣ノ社」というタイトルにしました。あと、最近「古事記」を読んでるんですけど、話が無茶苦茶でコントみたいなんですよ。なので、それをヒントにして内容を今考えてます。
――では、中野さんを中心として様々なキャラクターが登場すると。
中野:ほとんど新ネタで、新しいキャラクターばかり出てきます。
――また突拍子もない個性的なキャラが。
橋本:自分たちの中では「こういう人、よくいるよね」っていうのをやってるだけなんですけどね。
中野:「あるある感がない」ってよく人から言われるんですけど、私たち自身は一番あるあるだと思ってます。
――ちなみにライブの客層はどんな感じなんですか?
橋本:女性がけっこう多いです。去年はお年寄りの方も来てくださってたし、幅が広いんです。
中野:下ネタをやってるから一番嫌われるかと思ってたら、若い女性ファンが笑ってくれるんですよ。不思議ですね。
橋本:キャラごとにファンがついたり。
中野:ユキヤっていうホストのキャラがいるんですけど、「ユキヤ! ユキヤーっ!」って歓声が飛んできたり。
橋本:うれしいんだけど、複雑な気持ちになりますよね。コントのキャラだし、そういうつもりで作ってないんで、「かっこいい!」とか言われると戸惑います。「どういうことなんだ、これは!?」って。
――でも、それだけユキヤに成りきれているってことですもんね。
橋本:はい。2人ともキャラに徹してます。
――お2人のライブは、気楽に観に来たら想像以上にエグくてびっくりする人が多そうですね。
中野:先入観なく観に来て欲しいですね。お笑いライブの敷居なんて一番低いし。
橋本:私たちのライブは初めて来る人にも楽しんでもらえるような仕掛けをしてるんですけど、今回もそういうことができたらいいなと思ってます。去年は「笑っていいとも!」のパロディをやったので、コールアンドレスポンスをやってもらったり。
中野:ただ観てるだけじゃなくて、「参加した」って思ってもらいたいので、今回もどこかでお客さんが演者になる場面が出てきます。
橋本:そうやって作品を一緒に作れたら面白いかなと。
中野:お客さんの名前もエンドロールに入れたいぐらいですね。
日本エレキテル連合 (左)橋本小雪、(右)中野聡子
◆日本エレキテル連合のお二人から動画メッセージ到着
取材・文=阿刀 "DA"大志
【公演日・会場】
2016年7月14日(木)~17日(日) シアターサンモール (東京都)
2016年9月1日(木)~4日(日) ABC Hall (大阪府)
【出演】
日本エレキテル連合(中野聡子・橋本小雪)