【blur映画公開記念】アルバム「ザ・マジック・ウィップ」収録曲全曲解説+インタビュー特集 第3弾
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ブラーの最新ドキュメンタリー映画『ブラー:ニュー・ワールド・タワーズ』の日本公開を記念して、メンバー4人によるアルバム収録曲全曲解説とオフィシャルインタビューをご紹介するブラー特集の第三弾をお届け。
香港でのレコーディングに期待していたものとは?アルバム完成は想定外?
日本で出演するはずだったイベントがキャンセルになったことが、今回レコーディングを行うきっかけとなったのは以前ご紹介した通り。偶然実現することとなった4人による香港でのレコーディングだが、果たして初めからアルバムが一枚完成することを想定していたのだろうか?
グレアム:そうだな、レコーディング中は、これはアルバム制作の始まりだと思ってた。でも正直言うと、そんなものじゃなかった。昔みたいに、デーモンが作ったデモとかそういうものがあるときみたいな感じで。だからコーラスやヴァースになるかもしれないパーツはあるっていう、今回はそれよりもっと少なかった。コードがひとつかふたつあったかもしれない。それからAセクションがひとつと別コードのBセクションがひとつとか。それから『そいつをちょっとやってみようか』って感じになって、徐々にアルバムになっていくものを作るプロセスが始まったんだと思うよ。
デイヴ:何かを完成させたいとか、そういう期待をしてスタジオ入りするのは難しいんだ。それって現実的なことじゃないと思うし、あんまりクリエイティヴなことじゃないと思う。だから僕達が思っていたのは、僕が覚えてる限り、ただ自由になった時間をスタジオで過ごしてみて、何が起きるかやってみようってことだった。
期待と希望っていうのは完全に別物で、僕がいつも願うのはアイデアが雪だるま式に大きくなっていくことなんだ。僕達が会ってお茶を飲むときは、それが雪だるま式に大きくなって何かが生まれることを願ってる。一緒に音楽を作るときはいつだって、アルバムにして人に買ってもらえるほどおもしろいものになるといいと願うもので。そういう希望を抱くことはできるけど、期待っていうのはまた別のことだ。期待というのはプレッシャーになるだけで、何のアイデアも産まないから。恐ろしいことだよね、
人生には期待通りの行動を期待されるときがあって、たとえば法廷に出るとしたら、法廷でするべき行動をするように求められるわけで。『すみません裁判長、プレッシャーがすごすぎて依頼人の冒頭陳述ができません。だって、クリエイティヴになりたいからです。だからやめるか、来週にでもやりませんか』なんて言うのは通用しない。でも音楽の世界では、特にある程度成功したバンドにいると、『好きなようにやるよ。なるようにしかならないんだ。僕達にはプレッシャーなんかないんだから』なんて言う贅沢が許されるわけで。ゾッとする話だよ。
これを聴いてる人は『ひどい! 何て奴らなんだ?』って思うに違いないよね。
考えてもみてよ、朝乗ったタクシーの運転手が、『目的地まで着くかもしれませんけど、そこに到着するように、しかも時間通りに着くように仕向けようと私にプレッシャーをかけても無駄です』って言ったらどうなるかって話だよ。
【アルバム全曲解説】5.アイ・ソート・アイ・ワズ・ア・スペースマン
デーモン:『僕は宇宙飛行士だと思ってた/心を掘り出しながら/駐車場にできた、どこか遠くの砂丘で』。これってすごく暗いイメージだよね? まあ、そのとおりで、これは香港を地球上の場所とすら見てないっていう。火星かどこかにあるみたいな、どうだろう、もしくは未来に人間が移り住むどこか遠くの惑星とかにあるような。何ていうか…これって結構サイエンス・フィクションに近くて、その意味で、自分のブラックボックスを探してるっていう。
かなり奇妙だね。この曲に出てくる人物は死んでるのかもしれないし。もしかしたらそういう…内容としてはそうかも…実際今回のアルバムには亡霊がたくさん出てくるんだ。でもそれはどこかに戻っていくこと、すでに終わって過ぎ去ったものを再び生き直そうとすることの本質であって、必然的にああいう雰囲気に浸ってしまうことになるんだよ。
【アルバム全曲解説】6.アイ・ブロードキャスト
グレアム:この曲はすごく変わってると思う。あまりに素早くできたから、『何だ? こんなのどこから生まれたんだ?』って思う曲のひとつで、その後みんなが別のことをやるようになったから、そのまま捨てられたみたいになってたんだ。それから僕とスティーヴンがたくさん手を入れなきゃいけなかった曲で、二人で一緒にスタジオでなんとか組み立てようとして、その後で僕がギターを加えた。それからデーモンが手を加えて、キーボードとかも入ったのを聴いたときには、『わあ、だいぶすっきりした。コーラスみたいなものができたから、曲の流れがわかりやすくなった』って思ったよ。とにかく奇妙な曲だった。コード進行がほとんど変わらなくて、大体同じだから、ひとつの奇妙なかたまりにまとまってる感じがするんだ。いまだにどこへ向かってるのかわからなくて、今でも混乱してしまうし、そういう曲はたくさんあるんだよね。
デイヴ:ああ、これは古いブラーと新しいブラーに片足ずつ突っ込んでる感じだね、それって実際、正直なところリスクがあることで。僕達はこれまでずっと、常に前に進もうとしてきたわけで、前に進めないときにはどうするかというと、横に動くんだ。横に動くのも役に立つんだよ。
そんなわけでこれが古いブラーの曲みたいになってしまうというリスクがあったわけで、でも実際のところブラーのクリシェからうまく横に動いたと思うんだ。それでいてライヴで飛び跳ねてるブラーの感じ、その破壊力もあるっていう。そしてこれはドラムを最初からやり直さなきゃいけなかった曲なんだ。スネア・ドラムをブラシで叩いてるのをマイク1本で録ったのが使えなくて、でも結果的にすごくうまくいったと思う。何がライヴでうまくいくのかいかないのかはやってみないとわからないけど、年末までにはライヴでお気に入りの曲になってるといいと思うよ。
出演:デーモン・アルバーン/グレアム・コクソン/アレックス・ジェームス/デイヴ・ロウントゥリー
監督:サム・レンチ 撮影:ブレット・ターンブル、バド・ガリモア 編集:ハミッシュ・リヨン/ベン・ウェイン
ライト-ピアース/レグ・レンチ 製作:ニーヴ・バーン/レジーヌ・モイレット/ビル・ロード
2015年/イギリス/カラー/93分/原題:BLUR: NEW WORLD TOWERS
配給:松竹メディア事業部 宣伝:ビーズインターナショナル
協力:S-O-C-K-S INC./フレッドペリー/British Music in Japan/ワーナーミュージック・ジャパン
(c)Blink TV 2015
blur-movie.jp
The Magic Whip / ザ・マジック・ウィップ
発売日:2015年04月29日
価格:¥2,457(本体)+税 / 規格番号:WPCR-16444
収録曲:
1. Lonesome Street / ロンサム・ストリート
2. New World Towers / ニュー・ワールド・タワーズ
3. Go Out / ゴー・アウト
4. Ice Cream Man / アイスクリーム・マン
5. Thought I Was A Spaceman / ソート・アイ・ワズ・ア・スペースマン
6. I Broadcast / アイ・ブロードキャスト
7. My Terracotta Heart / マイ・テラコッタ・ハート
8. There are Too Many of Us / ゼア・アー・トゥー・メニー・オブ・アス
9. Ghost Ship / ゴースト・シップ
10. Phyongyang / ピョンヤン
11. Ong Ong / オン・オン
12. Mirror Ball / ミラー・ボール
13. Y'All Doomed / ヤオール・ドゥームド (*日本盤ボーナス・トラック)