BIGMAMA 「母の日」のZepp Tokyoで自信とともに高らかに鳴らした"BestMAMA"

2016.5.11
レポート
音楽

BIGMAMA

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The BestMAMA’s Day 2016 2016.5.8 Zepp Tokyo

5年連続5回目の開催を迎えた、BIGMAMAが「母の日」にZepp Tokyoで行うライヴ『The BestMAMA’s Day 2016』。バンドにとっても記念日といって良い特別な日に用意されたセットリストもまた、「BestMAMA」の名に相応しい特別なもので、キャリアを縦断しながら披露された楽曲は、意外な曲からド定番までなんと全30曲!10年という節目の「母の日」は堂々たるライヴが繰り広げられた。

カーネーションの花束と縁取りのついた緞帳があしらわれ、どこかクラシカルにも映るステージに「第九」の調べが流れると、一気に色めき立ち波打つ場内。登場するメンバーたちの背後ではゆっくりとスクリーンが姿を現し、そこに“LoudMAMA”の文字が浮かび上がった。事前にこの日の一曲目を当てよう、という企画も走っていたのだが、なんとオープニング・ナンバーは「No Way Out」(ちなみに正解者は一名だったそう)だ。

ここから“Loud”ブロックの名の通り激しく重厚な楽曲が続いたのだが、そこはBIGMAMAのライヴ。ただ轟音を叩きつけて頭を振るだけではなく、随所に甘美なメロディや洗練されたアレンジが顔を出す。柿沼広也(G/Vo)と東出真緒(Vn/Key/Vo)によるキラーフレーズの応酬も見応え十分で、フロアものっけからクラウドサー_フィンやサークルを作ってヘドバンしたりと熱狂に包まれる。「アリギリス」の曲中で「会いたかったよ、Zepp Tokyo!!」と金井政人(Vo/G)。続けて「年に一度の大切な日です」とこの日にかける意気込みを窺わせる。リアド偉武(Dr)の印象的な刻みから安井英人(B)のスラップベースが導いたのは「Swan Song」。クラシックの名曲「白鳥の湖」がダイナミックかつ鮮やかにロックへと昇華され、「いつもより高くいけるよね!?」との呼びかけに会場の2500人は早くも総ジャンプ状態だ。

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ここまでの5曲が“LoudMAMA”。この日は楽曲のテイストごとに5曲×6つのブロックで分かれたセットリストとなっており、その最初のブロックを消化したことになる。金井が「母の日にBIGMAMAのZepp Tokyoを選んでしまう親孝行なみなさん、いつもより多めに用意してきました! 親孝行してってね、我々BIGMAMAに……全力で遊んで帰ってねってことです!」と短めのMCながらしっかり掴み、さほどのインターバルを開けずに次なるブロックへ。

今度は“PartyMAMA”だ。東出がタンバリンを手に最前列でキュートなアジテーションを見せた「Zoo at 2 a.m.」、シンセポップ風味のハネたリズムとサウンドが愉しい「Why You Refrigerate Me?」など、ダンサブルかつ多彩な“Party”チューンが披露されていく。中でも、リアドが立ち上がって叩くフロアタムのビートが場内を撃ち抜き、人力EDMの真骨頂を味あわせてくれた「No.9」は格別だった。ビルドアップの快感からの「第九」フレーズの大合唱という展開はとんでもなくチアフルで、まるでクライマックス。まだ前半だよな?と確認したくなるほどだ。

続いて“RomanticMAMA”。どのようなタイプの楽曲にもちゃんと美メロが仕込んである彼らだが、中でも一際酔いしれたくなる楽曲が集中しているブロックだ。「Royalize」では5拍子と6拍子を繰り返すサウンドに乗せて、幻想的なモチーフがスクリーンとステージを染めた。安井がPCへと向いて繰り出したアンビエントなSEから始まり、心地よく反響する歌声とギターの音色で包んだ「君想う、故に我あり」。「ここにいる一人一人に届きますように」と、側壁なども利用した立体的な視覚効果とともに届けられたのは「A KITE」。ミドルテンポやエレクトロ要素をもった楽曲が多いブロックだけあって、フロアも”前へ前へ”という盛り上がり方ではなく、思い思いに聴き入り、音に身を任せていたのが印象的だった。と、ここまでで15曲。通常のライヴであれば終わりが見えてくるところ、この日はまだ折り返し地点である。

“FastMAMA”と題された4つめのブロックは、その名の通り「速い」楽曲が連続投下されていく。「Overture」「HAPPY SUNDAY」では、持ち前のスケールの大きなメロディがメロコア・フォーマットに凝縮され、お待ちかねの高速2ビートが炸裂。次々にクラウドサーファーがステージへと押し寄せていく。ド派手なサウンドスケープを描き出した「#DIV/0!」に続いては、なんと宇宙初披露と前置きしてから新曲を。メインリフをヴァイオリンが担ったり、ファンク要素を思わせるカッティングが色付けする箇所があったりしながらも、“Fast”のブロックに入るだけあってアグレッシヴな楽曲であった。夏ごろに出る予定のHYとの作品に収録される、との発言もあったので楽しみにしておきたい。

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そして5つめのブロックは、“SingalongMAMA”。よくアンセムという言われ方をしたりもするが、シンガロング=ともに歌うことの出来る楽曲というのはライヴでよりその魅力が増すもの。よって、ライヴに欠かせない、そのバンドを象徴するような楽曲が多く含まれる。「Mr. & Mrs. Balloon」や「Lovers in a Suitcase」ではオーディエンスの大合唱に金井が「完璧!」「今日はすごいね、みんなも絶好調だね」と笑みをこぼす。「I Don’t Need a Timemachine」ではAメロとBメロを丸ごと客席に委ねるという大胆な演出をみせたのだが、ここもなんなく歌いこなすファンたちはさすが。先日リリースされたばかりの「SPECIALS」もクラップで迎えられて大きなシンガロングを生んでいた。サークルを作ったり、肩を組んだり、拳を掲げたり。それぞれがみな自分の歌として歌う。

最後のブロックは“BestMAMA”だ。ライヴタイトルにも含まれたこのワードが、背後のスクリーンに10周年のロゴと合わさって映し出され、満を持して放ったのは「交響曲”シンセカイ”」。フロアも爆発的な興奮に包まれ、柿沼がお立ち台でギターをかき鳴らす姿にも大歓声が上がる。「Sweet Dreams」ではミラーボールから360°放射状に光線が会場全体を射抜く中、クライマックスでは東出が、次いで柿沼がボーカルを採り金井へと繋ぐと、そこに2500人の声が重なり圧巻の光景をみせてくれた。「絶対、体力を残して帰るなよ!」と最後の力を振り絞った「Mutopia」では、リアド渾身のキックと安井が淡々と繰り出す重低音が場内を揺るがし、ダンサブル……という言葉を超えるほど強烈に肉体へと作用。トドメは「CPX」で、フロアもステージも完全燃焼の幕切れとなった。

“BestMAMA”とは何か。単に売上順や再生回数順に代表曲を並べていけばいい、というワケでは決してない。この日、6つのブロックで唯一抽象的なブロック名でもあった“BestMAMA”だが、ライヴを通して観ていくうち、先の5ブロック全てが、BIGMAMAというバンドがこれまで何を提示してきたのかを雄弁に物語っていたことに気づかされる。確かなアンサンブルから生み出されるラウドなロックを軸に、パーティーチューンにもなり得る踊れる要素を持ち、ロマンチックなメロディで彩られ、高速ナンバーでブチあげることも(その逆も)可能なフレキシビリティを有し、それでいてともに歌うことで楽曲に込めたメッセージやビジョン、感情をちゃんとオーディエンスと共有できる、そんな音楽。もちろん楽曲によってどの要素が突出するかは違えど、彼らが体現してきた音楽はそういうもので、ラストのブロックにはその全てがあった。それはつまり「BIGMAMAというバンドは何であるか」を、10年のうちに彼ら自身がハッキリと自覚し、揺るがない自信とともに我々に示してくれたということである。

金井はこう言った。
「気づいたら10年経ってました。感慨を聞かれてこう答えました。ウォーミングアップが終わったくらいっすねって。この5人で成し遂げたいことや見たい景色が、まだたくさん残ってます。心配は要りません。期待だけして、長い付き合いになると思いますが、よろしくお願いします」
10年の歩みで生み出してきた楽曲たちのクオリティと一貫性、そして進化を、これだけまざまざと見せつけられたら、どうしたってその言葉に従うほかない。もう期待しかない。


レポート・文=風間大洋

セットリスト
The BestMAMA’s Day 2016 2016.5.8 Zepp Tokyo

1. No Way Out
2. Ghost Writer
3. Paper-craft
4. アリギリス
5. Swan song
6. Zoo at 2 a.m.
7. Why You Refrigerate Me?
8. No.9
9. テレーゼのため息
10. 母に贈る歌
11. Royalize
12. かくれんぼ
13. 君想う、故に我あり
14. A KITE
15. ダイヤモンドリング
16. Overture
17. HAPPY SUNDAY
18. Lucy
19. #DIV/0!
20. 新曲
21. Mr. & Mrs. Balloon
22. 神様も言う通りに
23. SPECIALS
24. Lovers in a Suitcase
25. I Don’t Need a Timemachine
26. 交響曲”シンセカイ”
27. 秘密
28. Sweet Dreams
29. Mutopia
30. CPX
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