日本の寺社ってこんなに面白かったの?~向源2016~
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2015年、日本3大祭りの1つ神田祭とアニメ『ラブライブ!』がコラボしたのには驚かされました。登場人物の一人が神田祭を行う神田明神の巫女さんということで、『ラブライブ!』のポスターを使ったりグッズを販売したのです。
その神田明神が、『向源2016』でお寺とコラボすることになりました。神田明神でお坊さんがお経をあげるという異色のイベントです。
若い感性は理屈でなく面白いものを見つけ出す
『向源2016』は寺社フェスというだけあって、グルメやゲーム・音楽にものづくりなどの体験コーナーと一通りそろっていますが、普段のお寺や神社の催し物より若い人が多いと感じました。
実際に参加してみると、何故か面白い。面白さは理屈ではなく肌で感じるもので、いつの時代も若い人は楽しむことに関するアンテナが高いのだなと再確認しました。
ラブライブ!に繋がる日本宗教思想
『ラブライブ!』は「みんなで作り上げる」という古くて新しいテーマが受け入れられてヒットしました。神田明神がコラボしているだけに、『ラブライブ!』的な面白さがあるから若い人が集まるという仮説は悪いものではなさそうです。
(『仏教x神道x修験道トークショー』の様子)
5月4日に行われた『仏教×神道×修験道トークショー』で、日本土着の神道と海外から渡ってきた仏教、神道と仏教から生まれた修験道の3つは「場と関連性の宗教」という共通点があると説明されました。自分の意思で環境を変えようとする個人主義的なものではなく、「場」に合わせて自分を変えていく思想だそうです。
「みんなで作り上げる」という事象を、みんなが集まる場に一人一人を繋いで行くことと考えれば、『ラブライブ!』が「場と関連性の宗教」に近いものと言うことができます。『ラブライブ!』の面白さに近い「場と関連性の宗教」を扱うのが寺社フェスと考えれば、若い人が集まったのも納得できますが、それだけならパンフレットを見ればわかりそうなものです。
面白くしたいという姿勢が向源の醍醐味
5月5日に行われた『いろんな宗派で般若心経トークショー』では、般若心経を切り口に色々な宗派のお坊さんが議論しました。般若心経との出会いや人気の理由から始まって、「空」という概念の議論に入ったのですが、わからなくて良いという意見にまとまっていったのです。
(『いろんな宗派で般若心経トークショー』の様子)
どうも腑に落ちない状態のまま議論が終わってしまいました。しかし、最後の質問コーナーで渡邉弘範さんが、全てに輝く可能性があるという目で見るところが真言宗の良さと語ったところで、思わず膝を叩きそうになってしまいました。
面白いか面白くないかではなく、面白くするかどうかという目で見るから、面白くない方がいろいろやることがあるという考え方です。般若心経が人気なのは木魚や太鼓のノリが良いからというちょっとふざけた感じの意見が飛び交っていたのですが、般若心経を少しでも面白くしようという姿勢なのだとわかりました。
パンフレットを見たりネットで情報を集めてもわからなかった面白さが、現地で参加するとわかったのは、少しでも面白くしようとする姿勢を肌で感じることが向源の醍醐味だからなのでしょう。
仏教×DJから生まれた『向源2016』
面白くしようとする姿勢という目に見えないものを楽しむ寺社フェスはどのようにして始まったのでしょうか?
(左:愛$菩薩さん、右:向源代表友光雅臣さん)
向源代表友光雅臣さんはDJなのですが、高校の時に付き合っていた彼女の母親に誘われてお坊さんになったそうです。DJが自分の曲を披露するのではなく、世の中にある様々な曲をどう繋げればお客様に喜んでもらえるかと考えるように、お坊さんはオリジナルの仏教からはみ出さないように説法していくところが似ていると語りました。
仏教と音楽を融合させて音楽フェスとして広まれば良いと始めたのが向源ということですが、DJが代表だけあって、最初から面白くしようとする姿勢があり、回を重ねるごとに広まっていったことになります。
学校で習う宗教は、存在していくために難解な論で権威付け、他の宗教を攻撃していくというイメージがあり、遠い存在と思っていました。寺社が『ニッポンを遊べ。』をテーマに色々なものをコラボしていくような柔軟なイベントができるとは思ってもみませんでした。
写経やお茶やお花といったちょっと敷居の高い日本文化を味わうなら、身近に感じられる向源から始めてみるのが良さそうです。
寺社の面白さに気付くだけでなく、ぬくもりや充実感といったあいまいだけれど素敵なものを肌で感じるために、寺社に立ち寄ってみたいと思えるイベントでした。
日時:2016年4月29日~5月5日
会場:神田明神、増上寺、日本橋三越本店