上方三人衆「晴の会(そらのかい)」が第二回あべの新作歌舞伎で、世界初のクラウドファンディングに挑戦!
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第二回あべの歌舞伎『晴の会(そらのかい)』公演に挑む左より、片岡千次郎、片岡松十郎、片岡千壽
昨年発足し、大好評を博した「あべの歌舞伎」が今年も開催決定。本作は上方歌舞伎の担い手、片岡松十郎、片岡千壽、片岡千次郎の3人が結成した「晴の会(そらのかい)」が、大阪・近鉄アート館の三面客席という得意な劇空間に挑む、実験的な歌舞伎シリーズだ。第二回の新作上方歌舞伎『伊勢参宮神乃賑』も昨年同様、城井十風の書き下ろし、上方舞山村流宗家の山村友五郎演出、上方歌舞伎の重鎮で松竹・上方歌舞伎塾の指導者も務めた片岡秀太郎の監修でおくる。なお、松十郎ら晴の会トリオは、歌舞伎塾に学んだ第一期生。また、今後は助成金などに頼らず自立した公演形態の確立をめざし、今回より一般から支援金を募る、歌舞伎としては世界初のクラウドファンディングを導入している。出演者3人による合同取材会の模様を、リライトしてお届けする。
--昨年の第一回公演では上方落語「宿屋仇」より『浮世咄一夜仇討』を上演されました。普段の大歌舞伎とは異なり、限られた人数や小道具、三面客席、約300人収容の小劇場での公演を振り返られていかがですか?
片岡松十郎(以下、松十郎):道具も衝立ひとつでしたし、去年はすべてが勉強でした。普段は下からお客様に見られているのですが、近鉄アート館では上からの視線もあったので、舞台がどう見られているのか想像もつかない。それが怖くもあり、熱気を感じられる楽しさもありました。
片岡千壽(以下、千壽):客席が近いのでお客様の表情も見えますし、今ウケている、今すべってるの反応がもろに伝わってくる。私は衝立の中で、女中から奥方に役替わりする場面があったのですが、あれも衝立の奥は照明を落としていたとはいえ、果たして本当に客席から見えていなかったのか…。着物を脱いだり頭をとったりしている姿を見られてるというのは、ものすごく恥ずかしいことなので(笑)。今回も見せ方など、演出家の先生と相談しながらやろうと思います。
片岡千次郎(以下、千次郎):私は序幕で舞踊『浦島』を踊らせていただきました。幕が開く前は客席がシーンとしていまして、いざ舞台に出ると「この子ら大丈夫か?」という、お客様の方が緊張されているのがすごく伝わってきました(笑)。三方面から見られているわけですから、私も気を抜けない。それでも、細部まで研究して創作する作業は、楽しかったですね。その後は、お客様がどんどんと(演者を)のせてくださり、温かいパワーを一杯いただきました。新作を創るにあたっては、改めて古典歌舞伎の基礎の大切さを実感しました。(表現の)引き出しを常日頃から持っていないといけないなと。今回も基礎を大切に務めたいと思います。
片岡千次郎
--今回も舞踊を予定されているのでしょうか。
千次郎:やはり「歌・舞・伎」という、音楽・踊り・芝居の三要素がふんだんに盛り込まれたお芝居にしたい。舞踊や立ち廻りの要素なども入れながら、台詞の掛け合いも楽しんで頂きたいと思います。
--演目の新作上方歌舞伎『伊勢参宮神乃賑』は、上方の若者、喜六と清八がお伊勢参りへ旅立つ物語。道中で悪名高い七度狐を怒らせてしまったことで、楽しい騒動が巻き起こります。
千次郎:私が喜六、松十郎が清八、千壽が狐を演じます。喜六たちは、大阪の玉造稲荷を出発して東へ東へ旅する中で、様々な人や出来事に遭遇します。身売り屋のけったいなお婆さん(千壽)や、奈良の野辺で出会った悪名高い七度狐など。この狐はひどい目に遭わされた相手には、7度だまして凝らしめないと気がすまないというほど執念深いのすが、喜六と清八はこの狐に危害を加えてしまう。当然狐は怒って……というのが大まかな落語の筋ですが、晴の会ではそこに独自のモノを入れたいなと。去年も「封印切」のパロディを入れましたけど、そういうものを折り込みながら、お客様と一体感溢れる芝居にしたいなと思います。
--喜六と清八は、ボケとツッコミのような関係だと思うのですが、ご自身たちの性格にもぴったり?
松十郎:僕が演じる清八がツッコミで、喜六がボケ担当です。性格については、どうなんでしょう(笑)。でも個性に合うようにと先生も書いてくださっているので、それぞれの持ち味を生かしたお芝居にしたいと思います。
片岡松十郎
--千壽さんは執念深い狐役です(笑)。
千壽:私は多少芝居をオーバーにする傾向があって、よくその点を師匠の秀太郎からも指摘されるのですが。ついお客様の前に立つとやってしまう、悪い癖ですね(笑)。今回はそこを加減しつつ、一癖ある狐を務めたいと思います。
片岡千壽
--3人で結成された「晴の会(そらのかい)」でやりたいこととは。
千次郎:上方歌舞伎の魅力に「はんなり」というのがありまして、そういう雰囲気作りを大切にしたい。明るくて品が良いというのが、上方役者や芝居の持ち味のひとつだと思いますので。
松十郎:僕らはもう一つ「上方歌舞伎会」でも活動させて頂いております。そちらでは古典をきっちりと行っているので、「晴の会」ではもう少し分かりやすく楽しめるものを勉強したい思いもあります。関西在住の役者がやることで、より歌舞伎を身近に感じてもらえるのではないかなと。
千壽:とはいえ、毎回どがちゃかと楽しい芝居だけというのも、あれですから(笑)。例えば、今年も夏の公演ということで、怪談物はどうかという話も出ましたし。ゆくゆくは、例えば『勧進帳』をきっちりやるとか、可能性としてはないことはないと思います。
--また、歌舞伎としては世界初のクラウドファンディングについて。目標の100万円はすでに達成されたとか。
製作者:一般の方からのご支援として、一口1万円、3万円、5万円で口数を設けています。4月20日から始めて、5月9日の時点で目標額の100万円を達成しています。ただ、目標額に達成しないと全額返金というシステムだったため、金額はシステム側の最低価格に合わせて100万円にしました。実際に赤字を出さないためには、200~300万円が必要です。ちょうど今設けている口数を全部満たすと300万円になりますので、引き続き7月19日の期日まで、ご支援頂ければと思います。
左より、片岡千次郎、片岡千壽、片岡松十郎
--最後に、出演者の皆様からメッセージを。
松十郎:去年は右も左も分からないなりにも、楽しい舞台ができたと自負しております。一度体験してみると、客席三方向から見られる楽しさや、3人でやらしていただける嬉しさをひしひしと感じました。お客様からも分かりやすい面白かったと誉めていただきましたので、今回も楽しんで頂ければ。
千壽:昨年はドタバタとした楽しい芝居になりました。私も重たい衝立を一生懸命運ばしていただき、一回り腕が太くなったのではないかと思います(笑)。今年も上方らしい面白い芝居をお見せしたい。3人で今熱い気持ちに、燃えているところでございます。
千次郎:昨年はお客様からの暖かいご支援で「晴の会」を盛り上げて頂き、本当に嬉しゅうございました。今年も公演できることに感謝しながら、楽しく分かりやすく親しみやすく、そして可笑し味も一杯盛り込んだ、上方らしいお芝居を作っていきたいと思います。
第二回あべの歌舞伎『晴の会(そらのかい)』公演に挑む左より、片岡千次郎、片岡松十郎、片岡千壽
■作:城井十風(上方落語「東の旅」より)
■演出:山村友五郎
■監修:片岡秀太郎
■出演:片岡松十郎、片岡千尋、片岡千次郎、片岡佑次郎、片岡りき彌