全国の若手劇団に要注目の企画「break a leg」開催
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(左から)村上慎太郎(夕暮れ社 弱男ユニット)、瀬戸山美咲(ミナモザ) [撮影]吉永美和子
今年は京都の技巧派と東京の社会派が登場! 来年度の参加劇団募集も。
兵庫・伊丹市の市立劇場[アイホール]が、将来有望な若手集団を発掘・育成する名物企画「次世代応援企画 break a leg(“パフォーマンスの成功を祈る”という意味のフレーズ)」。過去には「冨士山アネット」や「劇団子供鉅人」など、今や全国区で活躍する劇団も参加している。その第5弾となる今年度は、京都の劇団「夕暮れ社 弱男ユニット」と、東京の劇団「ミナモザ」が登場。夕暮れ社 弱男ユニット主宰の村上慎太郎、ミナモザ主宰の瀬戸山美咲の会見の声を交えながら、今回の内容を紹介しよう。
夕暮れ社 弱男ユニットは、役者が床を転げ回ったり、椅子や土嚢(どのう)をぶん投げ続けたりなど、公演ごとに一風変わった演技スタイルを提示する劇団だ。一見実験色が強いけど、描くテーマは意外と誰もが共感しやすい、人間の普遍的な葛藤や関係性だったりする。今回上演する『モノ』は、ドイツ演劇界の注目の作家フィリップ・レーレ作の児童向け喜劇で、彼らにとっては初の翻訳劇。アフリカで生産された「綿」が流通する過程を通して、世界各地で起こる大小様々なドラマを見せていく作品で、フルサイズでの上演はこれが本邦初だ。「世界のいろんな人の考えがズレていくことで、それが“喜劇”に見えるという、日本とは少し違った感覚の笑いがある戯曲。同時多発で起こる世界中の出来事を楽しんでもらえるとともに、世界に対して自分たちがどう立っているか、という立ち位置がわかるような作品です」(村上)
夕暮れ社 弱男ユニット『モノ』 (C)Goethe-Institut Osaka/岡大輔(studio STR)
「ミナモザ」は「演劇でしかできないドキュメンタリー」をコンセプトに、様々な社会事件をベースにした作品を発表。演劇ならではの表現や娯楽性を盛り込みながら、事件や現代社会の本質に鋭く切り込む作風で、年々評価を高めている。これが三度目の上演となる『彼らの敵』は、劇団の舞台写真を担当する写真家・服部貴康の体験をベースにし、「第23回読売演劇大賞」の優秀作品賞を受賞した代表作。パキスタンで強盗団に誘拐されたために大バッシングを受け、特に報道カメラマンに苦しめられたにも関わらず、後に週刊誌のカメラマンとなった青年の姿を通して、社会の「敵」の姿とその向き合い方を考えさせていく。「今回はパキスタンやイスラム教について、もう少し掘り下げるよう書き直しました。今の社会の状況は当時と変わってはいないし、ずっとやり続けたい作品。アイホールのような(今までとは)ワンサイズ大きい劇場で作ることで、今後もいろんな所で上演できる形を作っていけたら」(瀬戸山)
ミナモザ『彼らの敵』 [撮影]服部貴康
ちなみに「break a leg」の来年度の参加団体募集は7月から始まるが、劇場いわく「落とされると傷つくからか、年々応募が減っている。“次出してくれたら”と思った団体が、今年は出してこなくて残念…ということが起こってます」とディレクターの岩崎正裕。実際「夕暮れ社 弱男ユニット」は、3回目の応募で参加を勝ち取れたそうだから、一度落とされた団体もめげずに再挑戦してほしい。また関西の団体に限らず、全国各地から応募を受け付けているので、関西進出の機会を探っている団体にとっては絶好のチャンスだろう。詳細は公式サイトでご確認を。
■日時:5月28日(土)・29日(日) 28日=15:00~/19:00~、29日=13:00~
■料金:一般=前売2,800円 当日3,300円 学生=各300円引
■作:フィリップ・レーレ『Das Ding』
■演出:村上慎太郎
■出演:稲森明日香、向井咲絵、南志穂、鎌谷潤吉、金田一央紀、小林欣也、古藤望、松田裕一郎、西マサト国王
■日時:6月25日(土)・26日(日) 25日=14:00~/19:00~、26日=11:00~/15:00~
※26日11時の回はリーディング劇『ファミリアー』を上演。25日は昼夜公演とも、写真家・服部貴康を招いたポストパフォーマンストークを開催。
■料金:一般3,500円 学生2,000円 高校生以下1,000円
■作・演出:瀬戸山美咲
■出演:西尾友樹、大原研二、浅倉洋介、山森大輔、菊池佳南、中田顕史郎
■公式サイト:http://www.aihall.com/break-a-leg_28/