ファーストコンサート『Feel SO Good』間もなく開催! 壮一帆インタビュー
撮影/アラカワヤスコ ヘアメイク/木村美幸
宝塚雪組のトップスターとして宝塚歌劇100周年を牽引した壮一帆が退団して1年、いよいよ本格的に女優として始動することとなった。その再始動の舞台は、Bunkamuraシアターコクーンで上演される壮一帆firstコンサート『Feel SO Good』(8月5日~9日まで。8月28日~29日には大阪サンケイホールブリーゼでも上演)。
新しい壮一帆のいわば船出の時を前に、大きな期待と注目が集まっている。そんな壮に、コンサートにかける意気込み、その内容、また女優として再始動する今の心境、時間の過ごし方などを語ってもらった。
撮影/アラカワヤスコ ヘアメイク/木村美幸
壮一帆の七変化が楽しめるコンサート
幸運にもシアターコクーンという素晴らしい劇場で、単独でコンサートをさせて頂けることになり、ありがたいことだと思っています。
──今、お話頂ける部分でどのような内容に?
私も驚いたのですが、お衣裳がとてもたくさんあって、まさに七変化という感じです。演出の荻田(浩一)先生の愛情がギッシリと詰まっていて、色々な壮一帆を観て頂ける内容になっています。パンツスタイル、着物、スカートもあります。そのあたりは皆様が一番気にされているところではないかと思うのですが(笑)、ポスターを見て頂いてもわかるように、宝塚の現役時代よりもグッと露出も高くなっています。男性ダンサーの方と踊るのも初めてですし、ゲストの方々との日替わりのコーナーもありますし、村井國夫さんとも初めてお芝居させて頂きます。
先日、お稽古で村井さんとご一緒に歌わせて頂きましたが、私自身が心の中でずっとミーハーしていて(笑)、歌稽古の時にはいつも録音するのですが、録音ボタンを押す手にさえいつも以上に力が入ってしまったくらいで(笑)、外に出て活動をするというのはこういうことなのかと。
自分が舞台を観に行く時に、頂いた他の舞台のチラシを見ながら「次は何を観に行こうかな?」と考えるのがいつも楽しみだったのですが、その中に自分のチラシを発見した時にはすごくびっくりして(笑)、わーって思わず置いてしまったくらい新鮮な驚きでした。そういう様々な今の自分の気持ちを踏まえて、新しい私の色々な面を観て頂きたいですし、そこが活かせるように荻田先生が本当に私のことをよく理解して構成してくださっています。
歌にしても現役時代より、もう少し高いキーにも音域を広げることが出来るように目下勉強中です。新しい音域、新しいジャンルの曲にも挑戦しますので、現役の時以上に、色々な壮一帆をお見せできるのではないかと思っています。
──荻田さんの演出はいかがですか?
今はまだ歌稽古の段階なのですが、久しぶりに荻田先生ならではの世界を楽しませて頂いています。選ばれる言葉がとても多種多様で、その中からどこに柱があるのかを自分の中で理解しながら進めていく、あーそうだった、これが荻田先生の世界だったと実感しているところです。ただ現役時代荻田先生とご一緒させて頂いた時には、まだそこまで上の学年でもポジションでもなかったのですが、今回は芯で舞台に立たせていただくので、当時以上に先生も色々なことを要求してこられます。
先生ご自身も外の世界で様々な役者さんたちとお仕事をしていらっしゃるので、宝塚時代とは変わっているところもおありだと思いますし、ワンフレーズの言葉に対しても、様々な捉え方を提示してくださいます。それを如何に運動神経良くキャッチしつつ、自分の中でしっかり消化することが出来るかが大切ですよね。でもただ受け留めるだけではダメだと思うので、心して臨まなければいけませんが、そういう作業も久しぶりで楽しいですね。
これからお稽古も進んで振付も入ってきますので、アンテナをきちんと張って良いものにしていきたいです。私が不安定な部分も荻田先生はおそらく見抜いておられて、そこを踏まえて怯むことがないようにダメ出しをしてくださっています。もちろん自分自身に不安を感じるところはたくさんありますが、それ以上にやらなければならないことが多いので、ちゃんとものにしていって質を高めていきたいと思います。
撮影/アラカワヤスコ ヘアメイク/木村美幸
共演の方々が全員男性である新鮮さ
──やはり宝塚時代にご縁の深かったANJU(安寿ミラ)さんの振付を、今度は男役としてではなく受けることになりますね。
私、ANJUさんが振付された娘役さんへの振付が大好きだったんです。もちろん男役さんの振りもカッコよくて素敵でしたが、娘役さんへの振りが、娘役をこんなにカッコよく動かすんだ!と、とても新鮮でした。ANJUさんご自身も男役から女優になられた方ですから、自分が女性として振付を受けるにあたり、どんどん食らいついて行ってアドバイスを頂けたらなと思いますし、貪欲に学びたいです。
──そこに更に大澄賢也さんもいらっしゃいますが。これまではどんな印象を?
すごいダンサーの方というイメージでした。テレビで踊っていらっしゃるのもよく拝見していましたし、宝塚に振付にきてくださる先生方からも大澄さんを心から信頼しているというお話も伺っていました。どんな振りをつけて頂けるのか、初めての経験なのでとても楽しみです。
──良い形で、新しい方と馴染み深い方が加わっているのですね。
少しずつ1人立ちができるように、上手く段階が踏めているかなと。退団してすぐのディナーショーでは、スタッフの皆さまはすべて宝塚の方々でした。でも今回はまず共演者の方々が全員男性であるということが私にとって100%新しいことで、男性の方とお芝居をする、デュエットソングを歌う、デュエットダンスを踊る初めてづくしです。でも元宝塚の荻田先生が演出をしてくださって、振付においては新しい大澄さんが入ってくださり、一方に宝塚時代に振付をしてくださったANJUさんがいてくださいます。徐々に徐々に、外の世界に慣れていく道があることにありがたみを感じます。
私が男性の方と舞台に立つこと自体が、ファンの方にとっては新鮮でもあるでしょうし、もしかしたら違和感を感じる方もおられるかも知れません。でもその違和感を如何に短時間で取り除くかは、私の心持ちにかかっているのではないでしょうか。1回しかご覧になれないお客様もたくさんいらっしゃると思いますから、そういう方達にも「良いものを観ることが出来た!」と思って頂けるように、仕上げていきたいです。
撮影/アラカワヤスコ ヘアメイク/木村美幸
自分の意志で歩き始めたという実感
──ゲストの皆さんがまた豪華で、どの日を選べばよいのだろうと迷いますが。
いえもう、全日いらしてください(笑)。本当に毎日多彩な方々が出てくださって、「初めまして」の皆さまと舞台上でトークをするのがとても新鮮です。歌やダンスは決まった曲があり、振付もあって稽古ができますが、トークは稽古できないので(笑)、はたしてどんな化学反応が起こるのでしょう。トークコーナーだけでも毎回全く違うものになるのは確実です。その中で私の目標としては、公演を重ねるごとにクレッシェンドしていくのではなくて、最初からフォルティシモで濃くやっていきたいです。ゲストの方が出てくださるのは、例えば初日の石井一孝さんでしたらその1回だけなので、常に全力で行きます。
──ミュージカルの世界で確かな地歩を確立されている方ばかりですものね。
そうなんです、だから私単純に「あ、有名人がいる!」と思ってしまって! ご挨拶をさせて頂きながらミーハーしています(笑)。こんな素晴らしい方々に出て頂けて幸せです。
──宝塚を退団されて1年、本格始動ということで時間の過ごし方も変わりましたか?
退団した後は、今日1日をどう過ごすかを自分で決められるという状態に慣れるのにまず時間がかかりましたが、今は自分で決心して入ったこの世界で、新たにお稽古がはじまり、覚えるという作業に向かっているのでて、あぁこの感覚あったあったと思っています。でもそれは決して同じものではなく、一見遠回りのように見えていたかも知れませんが、自分とゆっくり向き合ったり、人とじっくりお話をさせて頂いたり、というこの1年の時間があったからこそ、今のこの「自分の意思で歩き始めたんだ」という感覚があります。明らかに前とは違う自分を感じるので、良かったなと思っています。
──その中で、今後どう進んでいきたいかというビジョンは見えてきていますか?
色々な方とお話させて頂いて、宝塚の現役の時以上に、自分はこうありたいというビジョンをハッキリ持っていないとダメだよ、と多くの方から言って頂くので、そうありたいと思います。でもそれと同時に、間口を常に広く持っていたいという気持ちも強くあって、必ずこの方向性で行くんだという強いビジョンを敢えて持たないことも、1つのビジョンかな?とも思っているんです。色々なジャンルの方が、色々な視点から壮一帆にこういうことをさせてみたい、と思って頂ける自分でいたいし、様々なこともやっていきたい。例えばそれが芸事から少し外れるようなことであったとしても、役者としての幅をどんどん広げていきたいので、その為にもたくさんの経験を積みたいんです。色々な方達と出会いたいし、お話も伺いたい。やはり私は表現することが好きなんだと改めて感じているので、キャパシティを広く持っていたいと思います。柔軟でいたいですね。驚くような出会いでもどんな化学反応が生まれるかわかりませんし、すべてをプラスにしていきたいです。
撮影/アラカワヤスコ ヘアメイク/木村美幸
女優になって他の舞台への視点も変わって
──来年には山口祐一郎さんとの舞台『エドウィン・ドルードの謎』も控えていますね。
そうなんです!ミュージカル界の帝王、キング・オブ・キングでいらっしゃいますから、またミーハーすると思います(笑)。
──結末が288通りある舞台だとか?
はい、ですから公演日数の方が少ないので(笑)、全部はお見せできないね、と言っているのですが、毎回楽しんで頂けると思います。
──お仕事も含めて、日々充実しているようですね。
退団してから本を読む量もとても増えましたし、先日ちょっと頼まれて絵を描いたのですが、と言っても落書き程度ですが、でもとても楽しかったです。芸事とは違うことをするという楽しみも増えましたし、何より東京に引っ越してきたら、美術館もたくさんあるし、良い舞台もたくさんあるので、お金が足りないくらいの勢いで(笑)観に行っています。お買い物に行きたいところもたくさんありますし、1日がすぐ終わってしまいますね。
──観劇も色々されているんですね?
たくさん観ています。宝塚時代の後半は忙しすぎてなかなか外の舞台を観に行くことができませんでしたし、舞台を観ていても裏はどうなっているんだろうと演じる側として気になってしまい、入り込みすぎてすごく集中力とパワーを使うんです。それで1日しかない休演日に観劇を入れるということは難しくて・・・。でも今はこうして色々な舞台を観に行けるようになり、面白いことに多彩なジャンルの舞台を観に行くと、この舞台に出てみたい、自分だったらどうやるだろう、など、観方が変わったんです。すべてが宝塚につながっていたところから、女優として、自分だったら何をしたいか?この舞台に出られる可能性もあるかも知れないというふうに見る方向が変わって来たせいでしょうね。
──女優さんに目が行くようになったんですね?
そうですね。あ、こんな私新鮮!と思っています。
──ではそんな新しい視点の中で、改めてこのファースト・コンサートへの意気込みを。
色々な方の愛が詰まった作品になっていると思います。壮一帆でこのコンサートを成功させようと企画してくださったスタッフの皆さまの期待に応えられるように、更に期待以上のものを舞台でお見せできるように、何より観に来てくださったお客様すべてに満足をして頂けるような舞台にしたいと思います。それぞれの場面で壮一帆の七変化を観て頂いて、アトラクションに乗っているような気持ちになって頂きたいです。お腹いっぱいと思って頂けるように場面場面で精一杯頑張りますので、お腹を空かせて(笑)、是非観にいらしてください。お待ちしております!
撮影/アラカワヤスコ ヘアメイク/木村美幸
そうかずほ○兵庫県出身。1996年『CANCAN』で宝塚歌劇団の初舞台を踏む。端正な容姿を持つ爽やかな二枚目男役として頭角を現わし、節目節目で花組と雪組に組替えを経験しながらステップアップを重ね、2012年、雪組トップスターに。『若き日の唄は忘れじ』の牧文四郎『ベルサイユのばら~フェルゼン編』のフェルゼン『Shall we ダンス?』のヘイリーなど、数々の作品で主演を務め、特に『心中・恋の大和路』の亀屋忠兵衛などの優れた日本ものの舞台で宝塚の伝統を継承する大きな成果を挙げた。14年『一夢庵風流記・前田慶次』の前田慶次とショー『My Dream TAKARAZUKA』で惜しまれつつ宝塚を退団。15年、宝塚OGによるカバーアルバム第二弾『麗人~Showa Era』に参加し水原弘の「黒い花びら」をカバー。今回のファースト・コンサート開催を皮切りに、本格的な女優活動をスタート。16年には『エドウィン・ドルードの謎』への出演も決まっており、ますますの活躍が期待されている。
【取材・文/橘涼香 撮影/アラカワヤスコ ヘアメイク/木村美幸】
〈公演情報〉
壮一帆 first コンサート『Feel SO Good』