#野水映画 “俺たちスーパーウォッチメン”　第四回レビュー『ゾンビーワールドへようこそ』

ゾンビといえばホラー映画に欠かせないクリーチャーの1つで、古くから恐怖の対象だった……はずなのだが！サイモン・ペッグ主演の『ショーン・オブ・ザ・デッド』(04)や、イライジャ・ウッドが主演と製作総指揮を務めた『ゾンビスクール！』(14)など、笑いと血飛沫が共存したゾンビもののホラー・コメディはとても増えてきている。今回紹介する『ゾンビーワールドへようこそ』もそんな1本。
 

……いやちょっと待って、ゾンビーワールドって。確かにたくさんゾンビが出てくるのかもしれないけど！　この邦題、ちょっと安直過ぎやしないだろうか？　原題が『SCOUTS GUIDE TO THE ZOMBIE APOCALYPSE』であることを知ればイメージが湧きやすいかもしれない。本作はSCOUTS（スカウト）、つまりボーイスカウトの少年たちが主人公なのである。

ボーイスカウトの高校生、ベン、カーター、オギーの3人は幼なじみ。けれどベンとカーターは、女の子と遊びたくて仕方がないので、オギーを残してスカウトのキャンプを抜け出し、イケてる女子がいるパーティーへ。さらに途中でストリップバーに寄り道だぜ！テンション高く飛び込み、ストリッパーの綺麗なおっぱいを拝めたと思ったら……あれれ？　このおっぱい、青筋が浮いている！？　なんと、このストリッパーはゾンビになっていた！　2人は襲われかけたところを、タフな美人ウエイトレスに助けられ、オギーとも合流。キャンプで身につけた能力でゾンビに立ち向かってゆく！
 

いわゆる“リア充”、“パリピ”とは対極にいるこの3人組。……言わずもがな、女の子と手を繋いだことすらないような“童貞”(！)である。好きな子に話しかけるのにもドキドキしちゃう奥手なベン。恋ってなにそれおいしいの？　な太っちょオギー。おっぱい見たい！　触りたい！　スケベなカーター。まさに思春期の少年を側面ごとに三分割したかのようなキャラクターたち(笑)。冴えない設定の3人だが、ベンもカーターも整った顔立ちだし、オギーは……憎めないおデブちゃん(フォローになってない？)。B級ホラーあるあるな、“主人公なのにパッとしない顔立ち”よりかはパッとしている。なかでもベン役のタイ・シェリダンは、『X-MEN:アポカリプス』(16)でサイクロプス役に抜擢された注目の若手俳優だ。そう、真面目にB級ホラーコメディに取り組みながら、オシャレに整理整頓されている、意外にちゃんと作られた映画なのだ。
 

とはいえあくまでホラーコメディなので、笑いどころも随所にちりばめられている。主人公たちが童貞だからなのだろうか、「小学生かよ！」とツッコミたくなるお下品なギャグや下ネタもふんだんに盛り込まれている。「そういうのやだわ……」なんて方はキャーッと目を逸らしながら観てくれればいい。

そして、何より“ゾンビ―ワールド”らしく、予告でも観られる可愛い猫ゾンビちゃんや、強大な敵となる？　ゾンビなど、個性豊かなゾンビがたくさん登場する。というわけで、この作品で私が気に入ったコメディアンゾンビさんベスト3を紹介しよう！

まず第3位は……

ブリトニー・スピアーズファン？　なゾンビ！　
ゾンビの行動パターンは、音や匂いに反応したり、昼夜とわず獲物を求めたりと、作品によって様々。この作品のゾンビには、生前の行動を繰り返す者もいるようだ。劇中には、あるゾンビとブリトニー・スピアーズを通じて理解し合えそうなシーンも。

続いて第2位は……

うーあー言いながら群れの中をのんびりシニアカーで走る老人ゾンビ！　
これもやはり生前の行動を繰り返す系ゾンビさんなのだろう。なんともまったりしていて可愛さがある。2回ほどある登場シーンでは、ゾンビに追われる緊張感から解放されて、一時の癒しを感じられることだろう。

そして、栄えある第1位はペアで紹介させてほしい……

トランポリン大好きゾンビ&命綱ゾンビ！　
トランポリンで遊んでいるだけなのにとてつもない存在感と、おいしいシーンがあるゾンビ。そして、命綱ゾンビはベンの危機一髪を救う(？)ことになるキーマンだが……あんまり私の口から言いたくもないので本編で確認してほしい。ドイツのヴァイスヴルストでも使ってたのかな……ブツブツ……。

そんな“ゾンビーワールド”のゾンビたちは皆、腐っていないハリのある新鮮なゾンビだ。エンディングには、カーターの“ある趣味”をポップに楽しめる映像＆オマケもあるので、最後までDVDを止めないように！

ショッピングモールなんかに行くと、つい「今ゾンビが押し寄せてきたらどう対処しよう」と考えてしまうゾンビ映画好きな方も多いはず。この作品を観ると、そういういざという時に頼りになるのは、何も出来ないチャラチャラした奴よりも、技能を身につけたボーイスカウトだということが分かるはず。私もボーイスカウト出身者と知り合う機会があったら、来る日のためにゾンビに対抗得るテクニックを伝授してもらいたいものだ。

『ゾンビーワールドへようこそ』DVDは6月3日(金)リリース。