くるり、2004年まみれの「アンテナ」再現ツアー完結
くるり「NOW AND THEN Vol.3」神奈川・神奈川県民ホール公演の様子。(撮影:五十嵐一晴)
くるりのコンセプトライブツアー「NOW AND THEN Vol.3」が、5月31日に神奈川・神奈川県民ホールで千秋楽を迎えた。
「NOW AND THEN」は2016年9月のバンド結成20周年に向けて行われている再現ライブシリーズで、今回のツアーでは2004年3月リリースのアルバム「アンテナ」がフィーチャーされた。ツアーには松本大樹(G)、野崎泰弘(Key)、クリフ・アーモンド(Dr)、加藤哉子(Cho)、アチコ(Cho)が同行し、盤石のプレイで岸田繁(Vo, G)と佐藤征史(B)を支えた。
この日は「グッドモーニング」で穏やかにライブの幕が上がったのち、岸田が「えー、皆さんこんばんは、くるりです。今日はお日柄もよく、『アンテナ』の世界へ皆さんをお連れしようと思います。しばしお楽しみください」と挨拶。バンドは「グッドモーニング」や「ロックンロール」など、「アンテナ」の楽曲を収録曲順に丁寧に奏でていく。
なお曲の合間で繰り広げられるMCは、おのずと思い出話が中心に。岸田が「『アンテナ』を作ってた頃、我々は何歳でした? 28歳? 28の青年たちとしてはかなり渋い音楽を作ってたよな。趣味に走りましたね」と口にすれば、佐藤が「音が“もあもあ”してるよね」と続ける。これを受けた岸田は「今日も誠心誠意込めてもあもあさせていきます」と意気込み、ディープな世界へと誘う「Hometown」や「黒い扉」などをプレイした。
「バンドワゴン」で陽気なムードを作り出したあと、岸田と佐藤は再び口を開き「アンテナ」の制作時のエピソードをトーク。岸田は手にしたテレキャスターを見せながら、「これは『アンテナ』を作る直前に買ったんですよ。楽器屋で触った瞬間に『これやー!』ってなって。札束持って楽器屋に行った。これがあったからできたアルバムなんです」としみじみと当時を振り返った。そんな言葉に続いたのは、クリフのタイトなドラムや佐藤の骨太なベース、岸田の凜とした歌声が光る「How To Go」。ダイナミックなバンドサウンドの余韻が残る中で、「アンテナ」の再現ライブは終了した。
岸田は「このまま打ち上げいきたいねえ」とうそぶきながらも「まあ、夜は長いです。このあとは精魂込めてお茶を濁していきますんで」と語り、「アンテナ」と同時期に制作していたという映画「ジョゼと虎と魚たち」のサウンドトラックの楽曲を続けてプレイ。「ハイウェイ」が始まると「わあっ!」という歓声が客席から上がり、ノスタルジックな空気がホール内を満たした。その後も「さよなら春の日」「地下鉄」と懐かしいナンバーが続き、「2004年まみれの時間を過ごすことができて、2004年は幸せだと思います」という岸田の言葉をもって本編は「さっきの女の子」で締めくくられた。
懐かしい曲で構成された本編とは打って変わって、アンコールは最新のくるりを提示するモードに。7月6日にリリースされる新作CD「琥珀色の街、上海蟹の朝」に収録される「Hello Radio」「かんがえがあるカンガルー」や、最新シングル「ふたつの世界」の表題曲が続けて披露された。そして「この先の指標になる楽曲ができましたので、このツアーをこの曲でおひらきにしたいと思います」という岸田の紹介から始まったのは新曲「琥珀色の街、上海蟹の朝」。ソウルフルなサウンドと岸田の堂に入ったラップが観客を圧倒し、大盛況のうちに「NOW AND THEN Vol.3」は終幕した。
なおこのライブの模様は、BSスカパー!にて6月25日(土)にオンエアされる。
くるり「くるり 20th ANNIVERSARY『NOW AND THEN Vol.3』」
2016年5月31日 神奈川県民ホール セットリスト
01. グッドモーニング
02. Morning Paper
03. Race
04. ロックンロール
05. Hometown
06. 花火
07. 黒い扉
08. 花の水鉄砲
09. バンドワゴン
10. How To Go
11. ジョゼのテーマ
12. 飴色の部屋
13. ハイウェイ
14. さよなら春の日
15. 地下鉄
16. さっきの女の子
<アンコール>
17. Hello Radio
18. かんがえがあるカンガルー
19. ふたつの世界
20. 琥珀色の街、上海蟹の朝
BSスカパー!(BS241 / プレミアムサービス585)「くるり5ヶ月連続企画 第5弾 20th ANNIVERSARY『NOW AND THEN Vol.3』」
2016年6月25日(土)21:30~