フレッシュな顔ぶれで歌舞伎らしい2作品『平成27年度 松竹大歌舞伎 秋季公演』製作発表レポート

2015.8.7
レポート
舞台

今年の秋も、全国各地に本興行さながらの歌舞伎がやってくる!

毎月公演が行われている歌舞伎座をはじめ、新橋演舞場、京都南座、大阪松竹座などの大都市の劇場には足を運ぶ機会の少ない、地方在住の歌舞伎ファンが、地元で本格的な歌舞伎を観ることができる絶好の機会。それがいわゆる「巡業」と呼ばれる『松竹大歌舞伎』だ。今年も、11月1日から25日までの約一か月間、『平成27年度 松竹大歌舞伎 秋季公演』として、北は北海道から南は九州まで、津々浦々の劇場を巡る公演が行われる。

演目は、まずは江戸吉原を舞台に、鳥売りの夫婦が廓の風俗や男女の駆け引きの様子を艶やかに踊るところに、鳥刺し(小鳥をとらえて売る職業)が絡む華やかな舞踊『教草(おしえぐさ)吉原雀』。そして、ある理由でかたく禁酒していた魚屋が妹の死の真相を知り、その誓いを破って殿様の屋敷へ殴り込みに…という、江戸の市井の人々の暮らしをいきいきと描いた世話物の傑作『新皿屋舗月雨暈 魚屋宗五郎』。舞踊と芝居1作品ずつの二本立てだが、歌舞伎の魅力を十分に味わえるラインナップだ。

キャストは、尾上菊之助を中心として、坂東亀三郎、尾上松也、中村梅枝、中村萬太郎、尾上右近のフレッシュで実力派の若手花形たちに、ベテランの市川團蔵が加わって、舞台をぐっと引き締める。

7月29日、都内でその製作発表が行われた。キャストの菊之助、亀三郎、松也、梅枝のほか、安孫子正松竹株式会社副社長/演劇本部長が出席し、挨拶の後、質疑応答が行われた。

梅枝、松也、菊之助、亀三郎、安孫子副社長

【挨拶】
 

尾上菊之助


尾上菊之助 明治年間に、高祖父にあたる五代目(尾上)菊五郎が河竹黙阿弥と語らって、『魚屋宗五郎』ができました。音羽屋にとって大事な財産の演目ですし、歌舞伎にとっても財産の演目に現代ではなっております。これを(市川)團蔵さんをはじめとして、この若いメンバーで、北は北海道、南は九州まで、全国各地を回らせていただく公演のチャンスをいただけたことに非常に感謝いたしておりますし、父(尾上菊五郎)から『魚屋宗五郎』を継承するということで、身の引き締まる思いです。この機会を大切にして、世話物の面白さを、普段歌舞伎劇場が身近にない方に歌舞伎の面白さを伝えられればいいなと思っております。
 

坂東亀三郎

坂東亀三郎 久々の巡業なので、何をどうしようかいろいろ考えているんですが、なかなか歌舞伎を生で観ることができない方たちの許に行って、菊之助さんをはじめ、團蔵のお兄さんもそうですが、いつも仲良く一所懸命がんばっている菊五郎劇団と仲間でその土地に行って、歌舞伎を皆さんに楽しんでいただけるように一所懸命がんばりたいと思います。『吉原雀』も3人で、華やかに幕開けを彩りたいと思います。『魚屋宗五郎』は、父(坂東彦三郎)また劇団の先輩たちが大事にしてきた役を、今の年齢の僕で勤められるかどうかわかりませんが、菊之助さん同様、父から継承して一所懸命勤めたいと思います。
 

尾上松也


尾上松也 巡業は人生で二度目で、非常に久しぶりで、個人的にも楽しみにしております。序幕に梅枝さんと亀三郎さんと『吉原雀』をさせていただけますことを本当にありがたく思いますし、菊之助お兄さんが初役で挑戦される『魚屋宗五郎』に、磯部主計之助として出演させていただけること、本当に光栄です。普段なかなか足を運ぶことのできない皆様にも観ていただける良い機会ですし、今回の演目は、歌舞伎に馴染みのない方でも楽しんでいただける演目立てです。先輩方のお力添えを得て、多くの方に歌舞伎を楽しんでいただけるよう精進したいと思っております。
 

中村梅枝

中村梅枝 『吉原雀』はとにかく明るく、3人でお客様に楽しんでいただけるようにと思っております。『(魚屋)宗五郎』のおはまは、父(中村時蔵)が菊五郎のおじさまと幾度となく組んでやっておりますし、それを息子である菊之助のお兄さんと僕とでペアを組んでできることは、こんなに光栄なことはございません。しっかり習って、一所懸命勤めたいと思っております。
 
【質疑応答】
 

菊之助


──お父様の当り役を演じる意気込みをお願いします。
 
菊之助 父の当り役ということで、歌舞伎は先代、先々代と比較されて「良い悪い」と言われながら舞台に立つわけです。ですが、役の本質を捉えるということはどの役も変わりはないので、前半の妹を殺されて沈痛な面持ちで帰ってきて、家族が仕返しに行けと言うにも関わらず、それを抑える芯の通った魚屋のお兄ちゃん。後半は事実を知ってから、禁酒を破ってどんどん酒乱になっていく様をどれだけ自分が体現できるか、どれぐらい舞台上で酔えるのか、自分でも楽しみです。
 
──歌舞伎が初めての方に対する見どころなどは?
 
菊之助 『吉原雀』は松也さんからとして(笑)、『魚屋宗五郎』は江戸の市井の人たちの生活を描いた狂言で、皆さん時代劇とかをご覧になると思いますが、それに近く、肩の力を抜いて、江戸の市井の人たちの生活をご覧いただきたいと思います。いつも申し上げますが、初めて歌舞伎をご覧になる方は、意味内容をわかろうとしてご覧いただく必要はないと思うんです。幕が開いたら、音楽、衣装、役者が演じるものを体感してただければ、きっと心に何かお届けできると思うので、大まかなストーリーさえわかっていただければ、役者にお任せくださいということで。
 

松也


松也 『吉原雀』は、幕が開いた時点で非常に明るく、気持ちが晴れやかになるような舞台装置があります。普段の『吉原雀』だと鳥売りの男女が出てきて、自分たちのこと、廓の色事などを踊りながら…というのが一般的ですが、今回はさらにそこに亀三郎さんが出てきてくださって、私たちはいわゆる「ぶっ返り」という歌舞伎独特の手法を用いて、鳥売りなんだけど実は雀の精だったということで。そういう形で『吉原雀』を上演することはあまりなく、もちろん普段ご覧になった方にも新鮮にご覧になっていただけますし、あまり歌舞伎を観たことがない方でも、舞踊なので意味はすべてありますが、絵面だけでも楽しんでいただけるし、華やかで楽しい曲目ですし、最終的にはぶっ返って3人で踊って決まって、目でも楽しんでいただけると思います。
 
──皆さん今回初役でいらっしゃいますが、それぞれお役について、どんな役か、どういう風にやりたい、などあればお聞かせください。
 
菊之助 『魚屋宗五郎』は本当に有名な演目で、人気演目ですし、皆さまのご期待に沿えるように演じるのが私の目標です。『(髪結)新三』の勝奴に出てても思いますが、やはり江戸時代の匂いを体から発するというのは、1回や2回じゃなかなか到達できるところではないんですよね。今回、團蔵のお兄さん以外全員が初めてなので、まったくさらの状態から作っていく。でもお兄さんがいらっしゃることで、1公演1公演、必ずお言葉をかけてくださると思うので、巡業中に、少しでも体から江戸の匂いが発せられるような『魚屋宗五郎』を作っていきたいです。
 

亀三郎


亀三郎 初役というとどうしても教わった通り「なぞる」というのがありますが、芸の道というなかで壁にぶつかって前に進んでいけばいいと思うので、道から外れなければいいと思うので、いっぱい壁にぶつかりながらみんなで良いお芝居ができればなと。とりあえず、どこまで性根を掘り下げて、菊之助さん演じる江戸の町人と、僕は江戸の武家のほう(役は浦戸十左衛門)なので、その差を出せるようにとか、いっぱい教わって…まぁ1回じゃできないですよね(笑)。
 
菊之助 そうですよね(笑)。
 
亀三郎 諦めてはいけないんですけど(笑)、ちょっとの諦めがすごい飛躍につながるとは思うので、手を取り合ってがんばっていけたらと思います。
 
──亀三郎さんの『吉原雀』のほうのお役は、皆さんあまりご覧になったことがないと思うのですが、どんなお役ですか

亀三郎 若い2人が踊ってるところに後から出てきて、疑いをして、さらに華やかにお芝居をクライマックスのほうにもっていく役なので、誰が良いとか悪いとか、出るとか引くとかでなく、3人でドーン!と行けるように作っていきたいとは思っています。

松也 『吉原雀』は、最初にお客様にご覧いただく演目で、まずは楽しく華やかにご覧いただきたいので、そのへんを意識して。あまり見慣れない上演形式の『吉原雀』なので、どういう風になっていくのか藤間のご宗家にもご指導いただきながら、3人で楽しみつつ演じることができたら幸いです。『魚屋宗五郎』の磯部主計之助は、私も先輩方の『魚屋宗五郎』をたくさん拝見してますし、私自身も菊茶屋の娘で、何度も菊五郎のお兄さんの『魚屋宗五郎』に出演させていただきました。私自身、主計之助で出演させていただけるのは非常に嬉しいことで、ありがたいです。主計之助の存在があることで、宗五郎の無念が救われて、お客様の気持ちが少し軽くなるということがあると思うので、自分の中では、これまで拝見してきた先輩方のお芝居をイメージしながら、またそこに至るまでの背景もお腹のなかに入れて、役割をしっかり果たせるように、全員でご相談しながら力になれたらいいなと思っております。
 

梅枝


梅枝 『吉原雀』は、我々演者もあまり肩肘を張らずに、お客様も肩肘を張らずに観ていただけるような、幕が閉まった時に「なんか楽しかったね」と言っていただけるような踊りになればと思っております。『(魚屋)宗五郎』のおはまは、生活感というか、なかなか難しいですが、あの時代に生きている世話女房としての雰囲気が出せるようにがんばりたいと思います。あとは、菊之助の兄さんが気持ちよく酔っ払えるように、みんなで作り上げていけたらと思っております。
 
巡業の製作発表だけあって、公演の予定されている各地域からの取材陣が詰めかけた。これ以外にも、「〇〇へ来たら何をしたいか?」など巡業ならではの質問も多く寄せられ、キャストは各地の名物・名所へ思いを馳せたり、ご当地の人々へのメッセージなども交えながら、和気藹々とした質疑応答だった。
 

 

〈公演情報〉

『平成27年度 松竹大歌舞伎』
一、 教草吉原雀
二、 新皿屋舗月雨暈 魚屋宗五郎
出演◇尾上菊之助 坂東亀三郎 尾上松也 中村梅枝 中村萬太郎 尾上右近 市川團蔵 ほか
●11/1◎羽生市産業文化ホール(埼玉県)
●11/2◎羽島市文化センター(岐阜県)
●11/3◎伊勢市観光文化会館(三重県)
●11/5◎わくわくホリデーホール(札幌市民ホール)(北海道)
●11/7◎一関文化センター(岩手県)
●11/8◎多賀城市民会館 大ホール(宮城県)
●11/9◎新潟県民会館(新潟県)
●11/10◎柏崎市文化会館アルフォーレ(新潟県)
●11/11◎こまつ芸術劇場うらら(石川県)
●11/13◎和歌山市民会館(和歌山県)
●11/14◎岡山市民会館(岡山県)
●11/15~16◎宇和島市立南予文化会館(愛媛県)
●11/18◎上野学園ホール(広島県)
●11/20◎大社文化プレイスうらら館 だんだんホール(島根県)
●11/21◎島根県芸術文化センター グラントワ(島根県)
●11/22◎山口県立劇場 ルネッサながと(山口県)
●11/23◎市民会館崇城大学ホール(熊本市民会館)(熊本県)
●11/24◎諫早文化会館(長崎県)
●11/25◎iichiko総合文化センター(大分県)
〈料金〉各劇場へお問い合わせください。
〈松竹ホームページ〉
http://www.shochiku.co.jp

【取材・文・撮影/内河 文】
  • イープラス
  • 尾上菊之助
  • フレッシュな顔ぶれで歌舞伎らしい2作品『平成27年度 松竹大歌舞伎 秋季公演』製作発表レポート