「北番」をベースに新構成・新演出 コクーン歌舞伎『四谷怪談』が開幕

2016.6.8
レポート
舞台

渋谷・コクーン歌舞伎の第15弾公演『四谷怪談』が本日6日に開幕。その初日に先立って囲み会見と公開舞台稽古が行われた。

『東海道四谷怪談』は、中村勘三郎と串田和美のタッグにより、1994年にスタートした本シリーズ第1弾の演目。2006年の第7弾では、第1弾の再演として進化させた「南番」と、上演機会の少ない『深川三角屋敷の場』に焦点を当て、直助とお袖の悲劇を浮かび上がらせた「北番」という二つの異なるプログラムで上演し好評を博した。今回は、「北番」をベースにした新構成・新演出で送る新たな『四谷怪談』に仕上がっている。

初日を前にしてお岩役を担う中村扇雀は「全部が見どころ。休憩を入れても全体で3時間ちょっとと非常にコンパクト。疲れずにあっという観られるし分かりやすい『四谷怪談』です」とコメント。初役の田宮伊右衛門に取り組む中村獅童も「とにかく皆さんに楽しんでいただけるようにしたい。新演出も加わって、見どころたっぷりですので全体を楽しんでください」と続いた。

自身が演じる直助権兵衛を“ちょいワル”と紹介したのは中村勘九郎。コクーン歌舞伎の『四谷怪談』には初参加だが「父が好きな演目だったので思い出はありますね」と話しながら、作品について「串田監督がテーマにしているのは“記憶”。伊右衛門さんの脳内の迷宮に迷い込んでいただけたら」と紹介した。この言葉に扇雀も「現場で、串田さんの脳みその中で(イメージが)どんどん広がっていくのを見るのは、伊右衛門の頭の中を見ていくようでした。最後の夢の場面は、普通の歌舞伎では舞踊劇になるんですけど、本作では伊右衛門が何を考え、何に悩んでいるのか、目の前にビジュアルとして出てきますのでビックリすると思います」と語った。

一方、前回の『東海道四谷怪談』に続きお袖役を演じる中村七之助は「10年前は直助権兵衛を父がやっていて、コテンパンにされた思い出が……(笑)。屏風の裏で寝るシーンでは、毎日、(屏風の)裏側で“ヘタクソ!”“やめちまえ!”と言われました。家に帰ってもですから地獄でしたね」と苦笑い。しかし、今回に向けては「それを懐かしく思いますし、リベンジだなと思っています」と決意を新たにした。

前回、「南版」でのみ宅悦を演じた市川亀蔵は「今回は北版に近く、まだまだ僕の中では分かりにくいのですが、千秋楽までにはなんとか到達したいですね」と役づくりに意欲的な姿勢を見せた。

コクーン歌舞伎おなじみのメンバーとなった笹野高史は「10年前よりもっとアートに、かつ、分かりにくくなっているかと(笑)。感性の鋭い方は面白いといってもらえるに違いないと、自信をもってやらせてもらってます」と冗談を交えながらも胸を張った。また「お父様(勘三郎)のことを思い出さずにはいられません。どこへ行っても“ああ、ここでそうだった”と懐かしく思います。琴線に触れる好きなコクーン歌舞伎です」と感慨深い表情をのぞかせた。

そして今回は、バレエダンサーの首藤康之が参加するということでも話題となっている。しかも、首藤演じる小汐田又之丞は、足腰に病を持ち一歩も歩けないという役どころ。扇雀や勘九郎は「ファンの方はお怒りになるんじゃ」「暴動が起きるんじゃないか」と心配していたが、首藤自身は「新鮮です。とても緊張しているので、この方がよいかもしれません」と笑顔を見せた。

この異例の配役の理由について、囲み会見後にインタビューを受けた串田は「存在感」と断言。「歌舞伎俳優ともわれわれのような俳優とも違う。役者は一番が存在感。ほかの芝居でもそうだけど、テクニックだけの人よりも存在感のある人が大切」と明かした。

また、勘九郎らが“伊右衛門の脳内”と表現した場面について問われると「最後に伊右衛門が自分の罪に呪われながら、回想・幻想のようなイメージの中をさまよう場面ですね。前回『四谷怪談』をやった10年前にはまったくなかったものが、今、当たり前のようにあるし、これから5年後のことは誰も想像できない。それに、お芝居の中では刀で斬った人が悪く見えるけど、僕らだって見えない刀で人をたくさん斬っているかもしれないし、いろいろな人に呪われているかもしれない。そう考えると時代そのものが“怪談”なんじゃないかと。そういったものを代表して、伊右衛門の脳内に現れる迷いや恐れ、それでも生きようとする思いにつながるんです。それが今回の僕の根底にあるもの」と語った。

公演は29日(水)まで。
 

公演情報
コクーン歌舞伎 第十五弾「四谷怪談」

日時:2016年6月6日(月)~29日(水)
会場:Bunkamuraシアターコクーン (東京都)
出演者:中村獅童/中村勘九郎/中村七之助/中村国生/中村鶴松/真那胡敬二/大森博史/首藤康之/笹野高史/片岡亀蔵/中村扇雀