“韓国に日本が侵略されていた?” ~ 流山児★事務所が韓国現代演劇の傑作を韓日逆転の脚色上演『代代孫孫2016』

2016.6.15
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流山児★事務所『代代孫孫2016』


流山児★事務所が6月15日(水)より、東京・下北沢のザ・スズナリで、『代代孫孫2016』を上演する(21日まで)。

流山児★事務所『代代孫孫2016』舞台稽古

『代代孫孫』は、韓国の現代演劇を代表する劇団、コルモッキルを率いるパク・クニョンが2000年に発表した人間喜劇であり、彼の代表作だ。ある一族の物語を、現在から日帝時代まで遡りながら描き出す手法で、韓国現代史を新たな視点から浮かび上がらせた。

パク・クニョン(劇団コルモッキル)

しかし今回、日本での上演にあたり、入り組んだ劇構造を持つ原作戯曲をそのまま上演することは観客にとってあまりにも分かりにくいとの判断で、脚色・演出を担当するシライケイタ(温泉ドラゴン)が、韓日を入れ替えた日本の話として大胆アレンジすることとなった。過去の場面では、日本は朝鮮の植民地。自衛隊は、集団的自衛権の名のもとに、アメリカ軍の後方支援でベトナム戦争に参戦するという、「あり得たかもしれない歴史=想像力の物語」としてスリリングに再構築される。歴史の相対化の試みというには荒療治の感なきにしもあらずだが、日韓両国の、互いに凝り固まった主観の壁を溶解させる効能を得るには、このくらいの大胆さも時には必要なのではないか。これこそが演劇ならではの特権である。

流山児★事務所『代代孫孫2016』舞台稽古

本作の初日を前に、流山児★事務所主宰・芸術監督の流山児祥と、脚色・演出のシライケイタのコメントが届いたので紹介しよう。

流山児祥(流山児★事務所主宰・芸術監督)
 
日本の現代演劇が韓国で初めて上演されたのは1972年戒厳令下のソウル西江大学での紅テント=状況劇場『二都物語』無許可上演である。わたしたちは20年後の1991年ソウル教育文化会館で『流山児マクベス』を2500人余りの観客を集めて上演し、いまや「伝説」として語られている。日韓演劇人の熱い友情の交流は、半世紀に渉ってたゆまなく続いているのである。
 
2002年、韓国現代戯曲ドラマリーディングも始まり現在も続いている。その第1回リーディングでパク・クニョンの『代代孫孫』が上演された。韓国演劇の代表的劇作家:パク・クニョンは一貫して家族の問題を真正面から捉えた作品を発表している。『代代孫孫』は、四代にわたる家族史を通し、三つの無残な戦争(大東亜戦争、朝鮮戦争、ベトナム戦争)が韓国現代史として描かれる。
パク氏の信頼を得て、今回、シライケイタは大胆にも「韓国に日本が侵略されていたという、ありえたかも知れない《歴史と現在》の劇」として日本人の『代代孫孫』に創り変えた。
 
そこに浮かび上がるのは「もう一つ」の日本現代史である。戦争と家族を描くニンゲン喜劇『代代孫孫2016』、ごゆっくりお楽しみください。
 

流山児★事務所『代代孫孫2016』舞台稽古


シライケイタ(温泉ドラゴン)
 
日韓を入れ替えて脚色すると決めてから約一年。「そんなことが本当に可能なのか?」と自問しながらの一年。何度も躓き、勇気を無くし、「無理かもしれない」と弱気になることも何度もあった。 これまでの演出活動の中で、ダントツ圧倒的にしんどかったことは間違いない。
 
そのしんどさを乗り越える勇気をくれるのは、やはり人間であった。稽古場にいる、共に作品を作る仲間達であった。演劇界の大先輩から大後輩(?)まで集った14人の出演者と、スタッフたち。総力を挙げて作りました。これが今の僕らの精一杯。
「日本と韓国を入れ替えて両国の今を考える」というテーマを掲げていますが、社会問題を本質に据えた作品ではありません。国も時代も超えた、人類普遍の物語がここにはあります。
 
「命を授かる」ということ。「授かった命を大切に生きる」ということ。「新たな命に、命の大切さを教える」ということ。
人間の営みの根源的なテーマがここにはあります。必死に生きる人間達の姿は、喜劇的ですらあります。これは、社会的テーマを超えた人間喜劇です。
 
6月15日から、下北沢スズナリにて。皆様のご来場、心よりお待ちしております。
 

(左から)シライケイタ、洪明花、清水直子、流山児祥

公演情報
流山児★事務所『代代孫孫2016』
 
■日程:2016/6/15(水)~2016/6/21(火)
■会場:ザ・スズナリ (東京都)
■作:パク・クニョン(劇団コルモッキル) 
■脚色・演出:シライケイタ(温泉ドラゴン) 
■出演 
塩野谷正幸 
近童弐吉 
里美和彦 
筑波竜一(温泉ドラゴン) 
いわいのふ健(温泉ドラゴン) 
阪本篤(温泉ドラゴン) 
五島三四郎 
伊藤弘子 
清水直子(俳優座) 
植野葉子 
洪明花(ユニークポイント) 
山丸莉菜 
廣田裕美 
竹本優希 
 
翻訳・舞踊振付:洪明花 
音楽:諏訪創 
美術:松村あや 
照明:沖野隆一 
音響:益川幸子 
衣裳:竹内陽子 
殺陣:上田和弘 
舞台監督:青木規雄 
演出助手:小形知巳 
企画:流山児祥

 
■公式サイト:http://www.ryuzanji.com/
 
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