SEKAI NO OWARI、25公演ツアー終幕「本当に生まれてきてよかった」

レポート
音楽
2016.6.21
SEKAI NO OWARI(撮影:太田好治)

SEKAI NO OWARI(撮影:太田好治)

SEKAI NO OWARIの全国ツアー「SEKAI NO OWARI 全国ツアー2016『The Dinner』」最終公演が、6月19日に埼玉・さいたまスーパーアリーナにて開催された。

3月25、26日の千葉・幕張メッセ国際展示場9~11ホール公演から、全国11会場にて25公演が実施された今回のツアー。機関車を模した入口や案内スタッフの扮装など、入場時から始まるさまざまな演出と圧巻のパフォーマンスで全国のファンを魅了してきた。

開演前のステージには大きな洋館がそびえ立ち、メンバーの登場を待ち構える。開演時刻を迎え、オープニングアニメではメンバー4人が車に乗って森の奥深くへ向かう様子が映し出された。そのままステージ右手から映像と同じ車が登場し、左手に停車してメンバーが降りると、場内からは大歓声が沸き起こる。スタンバイを終えた4人が最初に鳴らした曲は「ANTI-HERO」。夜の庭を模したステージから、ダークなサウンドが響き渡った。

「スターライトパレード」のイントロではオーディエンスが腕に付けたツアーグッズの制御型ライト「スターライトリング」が一斉に光り、どよめきが起こる。Fukase(Vo, G)の伸びやかな声に合わせ、客席を埋めた光の海が美しく揺れ動いた。ストリングスを加えて披露された「Never Ending World」では、Saori(Piano)の奏でる美しいフレーズが冴え渡る。ここでDJ LOVE(DJ)は「『The Dinner』へようこそ! まずはこのステージに立つ素晴らしい仲間を紹介します」と、このツアーに加わったバックバンドとストリングスを紹介した。すると彼らとNakajin(G)、Saoriが軽やかなセッションを披露して場内をさらに盛り上げるが、この演出は最終日のみのサプライズ。このことを知らされていなかったFukaseとDJ LOVEは「いつ(リハーサルを)やってたの!?」と驚いた様子を見せていた。

「生物学的幻想曲」が始まる前にはメンバー全員がステージ上の洋館の中へ入っていき、室内で演奏する姿を場内のスクリーンに映し出す演出を展開。オーディエンスを不思議な空間へと連れ去るひとときとなった。この曲のあとに上映された恒例の人形アニメでは「メンバー4人の正体は人間を食べてしまう化物で、いろいろな誘拐事件を起こしている」というストーリーが繰り広げられる。「今日はたくさん人間が集まってくるから、1人ぐらい捕まえられるよ」といった会話のあと、4人はアリーナに歩いて登場し場内を沸かせた。センターステージに到着した4人が披露した曲は「Death Disco」。髪型をオールバックに改めたFukaseはときどき目を見開きながら、スリリングな歌声を届けた。

その後に演奏されたのは新曲「Monsoon Night」。ドラムの力強いリズムに合わせるようにセンターステージ上のシャンデリアが大きく揺れ、楽曲の世界を演出する。曲が終わるとSaoriは「この『The Dinner』のために持ってきた新曲です」と紹介し、観客から拍手を浴びた。さらにSaoriは千秋楽を迎えた心境を「今日は200人ぐらいいるスタッフと集合写真を撮って。この200人、例えば同じ技術を持った違う200人だったとしたら、こんなライブはできなかっただろうなと思えるツアーでした」と語り、25公演を支えたスタッフへの感謝を表した。

「もう1曲、リリースしていない曲を聴いてください」というSaoriの言葉に続いてはさらなる新曲「Mr.Heartache」が演奏される。この曲はAuto-Tuneを使ったボーカルが印象的なエレクトロなナンバー。その後はSaoriのピアノが神秘的な世界を構築する「SOS」で、会場の空気を染め変えた。「SOS」が終わるとアリーナにいた女性ファンがスタッフに招かれ、メンバーとともに花道を歩いてメインステージへと向かう。何が起こったかわからないまま動揺する彼女をFukaseは優しくエスコートし、洋館の前で待ち受けるコック2名に託した。彼女が洋館へ入った後、館の中からは悲鳴と何かを調理する音が響く。先ほどの人形アニメのストーリーの結末が意外な形で付けられ、客席からは笑い声や驚きの声が沸き起こっていた。

“何か”を調理し終えたコックが料理を乗せた皿を手に庭に戻り、忙しく立ち働く中で「深い森」が演奏され、さらに「幻の命」、「MAGIC」と強力なナンバーが続く。MCではNakajinが、オープニングで車に乗って登場するシーンで運転手を務めていたことを明かし「25公演、無事故でよかったです(笑)。ほっとしてます」と語ってファンの笑いを誘った。そしてスタッフやファンへの思いを「音楽を通していろいろな人と出会って。音楽って、自分の人生にすごいことを起こしているなと思いました。そして僕たちの音楽が、みんなにとってのお守りや武器になったらうれしいと思っています」と語り、大きな拍手を浴びた。

本編はいよいよ終盤へ。「RPG」では場内の照明が灯り、メンバーの煽りに合わせてオーディエンスが大合唱を繰り広げた。赤く光るスターライトリングが照らす中で披露された「Dragon Night」が終わると、Fukaseは「ありがとう、SEKAI NO OWARIでした!」と挨拶。その赤い光が燃え移ったかのように洋館が激しく炎を上げる中、ステージを去っていった。

アンコールでメンバー4人は再びセンターステージへ。4人のストリングスメンバーも続き、共に「炎と森のカーニバル」を奏でる。Fukaseはアリーナに降り立ち、すみずみまで声を届けるようにスタンド上方を見上げつつ場内を1周して歌い続けた。センターステージに戻ってきたFukaseは「皆さんにお知らせがあります。来年、ドーム&スタジアムツアーが決定しました!」と、2017年に全国5公演のツアーを開催することを発表。オーディエンスを狂喜させた。さらにFukaseは「リリースもね、まだ決まってないんだけど秋ごろには。今、海をテーマに作ってます」と新作を制作中であることも明かし、さらにファンを喜ばせた。

この後のMCで、Fukaseはこのツアーの始まりからを振り返る。ツアーに変化をもたらすためにSaoriを演出面でのリーダー役から外すことを画策したものの、ずっとこの役目を担ってきた彼女からの反発を受けたこと、200名を超えるツアースタッフとの交流、重い病気を持ったファンを楽屋に招いたことで自分自身が励まされたこと、そして最終的に演出を務めたSaoriが最終日のこの日に200人のスタッフの前でマイクを握り「子供たちに夢を与えたい」と話したこと。さまざまな出来事を振り返ったFukaseは、言葉を詰まらせ宙を見上げつつ「そしてこうやってみんなが集まってくれて。……本当に俺は生まれてきてよかったと思った。ありがとう」と、ファンに対して心からの感謝を述べた。

そんな彼の言葉に続いて披露されたのは「Fight Music」。Saoriは素早く涙を拭ってエモーショナルに鍵盤を叩き、NakajinとDJ LOVEも笑顔を交わしつつそれぞれの音を鳴らした。最後の曲「インスタントラジオ」では銀テープが場内を舞い、メンバーもオーディエンスも全開の笑顔でこの空間を楽しんでいた。演奏が終わり、4人は大きな拍手と「ありがとう!」という言葉に見送られながら、名残惜しそうに洋館の中へと姿を消していった。

SEKAI NO OWARI 全国ツアー2016「The Dinner」
2016年6月19日 さいたまスーパーアリーナ セットリスト

01. ANTI-HERO
02. スターライトパレード
03. Love the warz -rearranged-
04. Never Ending World
05. ピエロ
06. 眠り姫
07. 生物学的幻想曲
08. Death Disco
09. Monsoon Night(新曲)
10. Mr.Heartache(新曲)
11. SOS
12. 深い森
13. 幻の命
14. MAGIC
15. RPG
16. Dragon Night
<アンコール>
17. 炎と森のカーニバル
18. Fight Music
19. インスタントラジオ

音楽ナタリー
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