フレデリック、大きな挑戦と位置づけたZepp DiverCityで刻んだ完璧パフォーマンス
フレデリック 撮影=鈴木公平
フレデリズムツアー2016 “ONLY WONDER LAND” 2016.7.2 Zepp DiverCity TOKYO
自ら「大きな挑戦」と位置付けていたフレデリックのZepp DiverCityワンマン公演。思えば、昨年末に初ワンマンツアーのファイナルをLIQUIDROOMで終えた約一週間後に、フレデリックはここZepp DiverCityのステージに立っていた。年越しライブ『GT2016』出演時のことだ。1月1日の未明、三原健司(Vo/G)は「2016年、今年中にここでワンマンしてやります!」とぶち上げたのだった。それから6ヶ月――。
2016年7月2日。フレデリックは宣言通り、Zepp DiverCityのステージに、1バンドで立っていた。しかもはSOLD OUT。約半年間で倍以上の動員を集めたということになる。見事に有言実行を果たしたこの日のステージは、完璧だった。もっともこれまでの彼らのライブを全て見てきたワケではないが、それでも眼前で繰り広げられていくステージには「過去最高のライブに違いない」、そう思わせるだけの凄みがあった。
フレデリック 撮影=鈴木公平
ステージ後方には楕円形のスクリーンが設置されており、それを囲むように電球色の少しレトロなイルミネーションが施されている。オープニングSEに合わせてスクリーンにアニメーションが流れた後、「オンリーワンダー」のロゴやツアータイトルが映し出され、周囲のイルミネーションが輝く。「はじめようか!」という健司の一言を合図にダッダッダッダと歯切れの良いビートが打ち込まれ、「オワラセナイト」からライブはスタート。すると2階席のキャットウォークあたりの壁面も光り出した。見ると、スクリーン周りと同じ照明がそこにも設置されている。そんなところにも”オンリーワン”の”ワンダーランド”たる”オンリーワンダーランド”を具現化するための作り込み、彼らのこだわりが窺い知れる。
三原康司(Ba/Cho)は曲に応じて楽曲を支える側に回ったり、逆にアンサンブルのメインを張るズ太い重低音で会場を震わせたりと、懐の深いプレイ。音色やエフェクトも自在に使い分けている。赤頭隆児(G)はすこし高めの位置に構えたギターから高音・高速のリフやソロを軽やかに繰り出していく。通常はシンセで弾くようなパートも彼のギターが担い、ときにはひたすら同じフレーズをリフレインさせることで、フレデリックのサウンドに独特の肉体性を付与している。そして健司は徹底してシャープで正確なリズムギターを刻みながら、どこか金属的な質感とエモーショナルさを併せ持った歌声で、独特のコブシの効いたメロディラインを引っ張る。そんな3人にサポートドラムの高橋武を加えた4人が生み出すアンサンブルは、実に変幻自在だ。
フレデリック 撮影=鈴木公平
それだけでなく、「DNAです」での極端にリバーブを効かせた残響系の音作りと真っ赤なライティングの合わせ技や、「人魚のはなし」での詞世界に合わせた切り絵絵本のようなアニメーションの投影など、会場全体を酔わせる演出面での工夫も際立っていた。なかでも「WARP」「FOR YOU UFO」「ディスコプール」というダンサブルな楽曲が連打されたブロックでは、色や照射パターンを目まぐるしく変えながらレーザーがフロアを射抜く。暴力的とさえ言えるビートの洪水と相まって、サカナクションの「SAKANA TRIBE」を彷彿とさせるほど。そんな演出が大仰にならないのは、彼らのパフォーマンスそのもののスキルと説得力の向上だろう。
フレデリック 撮影=鈴木公平
もうひとつ。開演時点からステージの後方、ドラムの両脇に一段高くなった箇所があり、「あれをどう使うのだろう?」と見ていたのだが、最初にそこが活用されたのは「みつめるみつあみ」だった。演奏の途中で舞台袖から三つ編みの女性が歩み出て高台へと登り、歌詞に合わせて髪を解いていく。ミディアム~スローテンポの楽曲ということもあり、幻惑的な空気が会場を満たす中、曲終わりで女性がもう一人登場し、「うわさのケムリの女の子」へ。おなじみのスモーク噴射に煙るフロア。うっすらと見えるステージでは女性2人が不思議なダンスでシンクロしている。しまいにはステージ中程や後方からもスモークが吹き出して会場全体を包んだ。その量も今までの比ではなく、ここもZepp仕様ということだろう。
8ビートで疾走する「FUTURE ICE CREAM」のような王道感のある展開の曲を交えつつも、基本的にどこか奇妙に響くフレデリックの音。収まりの悪いように聞こえてしっかり帰結するコード、隙間だらけの尖ったフレーズを鳴らしたかと思えば次の瞬間には一斉にヘヴィな音圧でぶん殴ってくるようなアンバランスさと調和、そうして不安定と安定を頻繁に行き来して振れまくるサウンドに、いつの間にか飲み込まれる。そうしているうちに気づけばアドレナリンがガンガン出てくる。よく分からないメロディによく分からない歌詞が乗り、それでもとびきり身体にくる「プロレスごっこのフラフープ」などはその極致だった。間奏では康司のスラップベースも飛び出し、オーディエンスに両手をかざさせてからの「飛べるか、お台場!!」の号令にZeppが揺れる。
フレデリック 撮影=鈴木公平
ライブはクライマックスだ。<Zeppは最高なんです 俺はお台場大好きなんです>と健司が歌詞を変えて歌い、康司と赤頭が楽しそうに向き合いフレーズを交わした「愛の迷惑」。彼らの快進撃のはじまりともいえる「オドループ」では、高速4つ打ちビートがフロアを容赦なくかき混ぜる中6人のダンサーが登場して、背後の高台でMVと同様のダンスをみせ、会場は大盛り上がりだ。そういえば、ここまで曲間のあいさつや煽り程度はあったものの、MC無しのノンストップ。実に16曲もの間、歌い続け演奏し続けた彼らの気合と集中力たるや凄まじい。この日にかける意気込みが何よりも表れていたし、濃密すぎるステージは体感的には「もう16曲!?」という感覚だ。
フレデリック 撮影=鈴木公平
「音楽が好きという人、両手を挙げてもらっていいですか?」と健司。会場全体から一斉に挙がった手を見て、彼は「俺たちは7年バンドやってきて、Zeppなんて絶対埋まらへんって言われて。それでもSOLD OUTできたのは、こうやって両手を掲げてくれるあなたがいたから!」と感情をあらわに叫ぶ。そのまま放たれた本編最終曲は「オンリーワンダー」だった。ツアータイトルにもなっている彼らにとって初のシングル曲。ここでもMVの再現として、野球帽にメガホンという高校野球の応援団スタイルのダンサーが大勢登場、視覚面からも楽しませてくれた。一度聴いたら耳に残るこの曲は、ありきたりな言い方だが中毒性バツグン。今後も彼らのライブに欠かせない一曲となりそうである。
フレデリック 撮影=鈴木公平
アンコールでやっとMCの時間だ。赤頭が「みんな多分、いや絶対。(フレデリックを)好きなんやなって思った」と改めて喜びを噛み締れば、康司も「みんなめっちゃ笑ってるやん! 思い切り伝えたら答えが出ました。あんたらが答えやな」と、自らの信じてきた音楽への手応えを嬉しそうに語り、健司は「自分たちを肯定するツアーにしたいと思って(オンリーワンダーランドを)作った」と口にする。自身の姿勢や音楽を肯定すること。それは同時にここに集まったファン、他会場に集ったファン、それだけでなく彼らの音楽に触れたリスナー一人ひとりを肯定し、肯定されることでもあったのではないだろうか。そのことこそ、彼らにとっての挑戦=Zepp DiverCity公演を大成功へと導いた原動力だ。
この日、健司からは「来年、新木場STUDIO COASTでワンマンやることも言ってるし、武道館に立ってやろうとも思ってる」という宣言も飛び出した。進境著しいフレデリックは、すでに次のスタートラインに立っている。じっくりと1サビまでを弾き語りで歌ったあと、高らかに鳴らされたラストの「ハローグッバイ」。ハート形の紙吹雪が大量に舞い降りる光景は、ツアーの成功を祝福すると同時に、彼らの進む道を明るく照らしていた。
撮影=鈴木公平 レポート・文=風間大洋
フレデリック 撮影=鈴木公平
・11/12(土) 仙台 CLUB JUNK BOX
・11/19(土) 高松 MONSTER
・11/20(日) 岡山 IMAGE
・12/03(土)新潟 GOLDEN PIGS RED STAGE
・12/04(日) 金沢 vanvan V4
・12/11(日) 札幌 Sound lab mole
・12/17(土) 福岡 BEAT STATION
・12/18(日) 広島 SECOND CRUTCH
・01/08(日) 大阪 なんばHatch
・01/09(月・祝) 名古屋 DIAMOND HALL
・01/22(日) 東京 新木場STUDIO COAST
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