明治座9月公演『三匹のおっさん』松平健・中村梅雀・西郷輝彦インタビュー
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西郷輝彦・松平健・中村梅雀 撮影/岩村美佳
還暦・定年を迎えた“おっさん”たちが、自警団を作り、町のトラブルに立ち向かって大活躍する!
人気作家・有川浩の連作短編小説シリーズでテレビでも大ヒットした『三匹のおっさん』が、9月に明治座の舞台に登場する。
武闘派2匹&頭脳派1匹という“三匹のおっさん”に扮するのは松平健・中村梅雀・西郷輝彦というゴージャスな顔ぶれ。三人一緒の舞台は初めてという彼らだが、同世代だけに賑やかに話が弾んだ演劇ぶっく8月号のインタビューを、別バージョンの写真とともにご紹介。
西郷輝彦・松平健・中村梅雀 撮影/岩村美佳
昔の悪ガキ仲間が集まって自警団を
──それぞれご自分の役について聞かせていただけますか?
松平 僕は剣道の達人であるキヨ(清田清一)で、定年になってこれからどうしようということで、昔からの悪ガキ仲間の2人と一緒に町の自警団になるんです。まだまだ力が余っているので、それを何かの役に立てようと。
中村 僕は頭脳派のノリ(有村則夫)で、機械いじりが好きで物事を機械でなんとかしたいと思っています。妻が亡くなってから男手ひとつで娘を育ててきて、その娘への思いが強すぎて(笑)、それに今の時代や若者への鬱憤が溜まってて、すぐキレやすいんです(笑)。
西郷 シゲ(立花重雄)は柔道の達人で、居酒屋を経営していたんですが、息子夫婦に譲ったとたん繁盛しちゃって、ちょっとがっかりしてるんです(笑)。かみさんにはガミガミ怒られてばかりいて、暇で暇でしょうがないから、「何かしようよ」といつも2人に言ってます。
松平健 撮影/岩村美佳
──三人での共演というのは初めてだそうですが?
松平 聞いたときは楽しみだなと思いましたね。西郷さんとは何度か共演してるんですが、梅雀さんとは初めてで、でもいつもテレビで観てましたから、初対面の気がしませんでした(笑)。
中村 僕のほうも沢山拝見してますから、あ、本物だと(笑)。
松平 僕なんか、舞台でやる現代劇自体が初めてですからね。洋服を着て舞台に出るのに早く慣れないと(笑)。
中村 西郷さんはジャージの上下ですよ。相当珍しいですよ(笑)。
西郷 なんでシゲはジャージなんでしょうね。予算削ったのかなと思いましたよ(笑)。でも楽しみです。今までにない西郷輝彦が観られます(笑)。
西郷輝彦・松平健・中村梅雀 撮影/岩村美佳
居酒屋で飲んでるときも作戦会議です
──この『三匹のおっさん』は原作もテレビも大ヒットしましたが、どこにその人気の秘密があると思いますか?
松平 身近な問題を取り上げていますよね。出てくる事件も今の世の中で起きていることとオーバーラップする。でも最後は爽快に終わるから気持ちいいですよね(笑)。
西郷 よくある昭和レトロ的な良さ、時代は今なんですけど昭和の良さがあるんです。大人がちゃんとした大人だった時代、よその子でも悪いことは叱る。それがなくなったというのが三人の不満で、その不満がぐつぐつ燃えてきて、「じゃあ、一丁やってやろうか」となる。たぶん僕らと同世代の人たちは同じように思っているはずで、僕もテレビ版を初めて観たとき、「やられたな」と思いました。
中村 昭和の時代に育った人たちって、文化も外国との関係も激動のなかで生きてきましたよね。人間同士も直接ぶつかり合ってきた。今の情報化社会のネットで会話してるような、ちょっとバランスの崩れたことに対して「なんか違うな」と思ってる。そういう人たちが、「そうだよな」と思える作品なんですよね。だからヒットしたのも当たり前だと思うし、それをこの三人でやるんですから凄いですよね(笑)。
中村梅雀 撮影/岩村美佳
──身体を張って悪と立ち向かうわけですから、アクションシーンも多そうですね。
松平 アクションは沢山あります。
中村 居酒屋で飲んでるときも作戦会議してますからすごくアクティブで、芝居の中であまりのんびりしてないんです(笑)。それに、それぞれの家族に関わる問題が起きたり、起きた事件がめぐりめぐって自分の家族に関わってきたりするんです。
松平 三人それぞれの家族の話も最重要テーマですから。
西郷 でも、格好いいところばかりではなくて、それぞれ家に帰ったら立場がないんですよね。会話がなかったり(笑)。
松平 それぞれ家族構成が違うところも、今の社会問題をうまく映し出してるなと思いますね。三世代同居の家、息子夫婦に世代が変わった家、娘と父の2人暮らし、観ている方もそれぞれ当てはまる事もあるんじゃないでしょうか。
中村 それに男だけじゃなく女性の抱えてる問題もちゃんと出てきて、うまく物語とリンクしてくるんです。そこがすごくいいなと思いますね。
西郷輝彦・松平健・中村梅雀 撮影/岩村美佳
やっぱりやるべきことはあるんだと
──共演の方についても語っていただきたのですが。
松平 僕の妻役は竹下景子さんなのですが、竹下さんはいつも明るくて、なんといっても「お嫁さんにしたい女優No.1」だった方なので、妻になってくれて光栄です(笑)。
西郷 シゲの妻役は松金よね子さんがやってくれます。うちの夫婦は口げんかばかりしているんですけど、達者な女優さんなので楽しみです。
中村 僕は娘が宮﨑香蓮ちゃんで、ものすごく可愛いんです(笑)。僕も娘がいるのでノリの気持ちはわかります。いつまでも心配で仕方ない(笑)。
──それぞれお互いについても、印象や期待を語っていただけますか。
松平 梅雀さんは芸達者で幅広くて、僕なんか“暴れん坊”一筋で、それしか出来ませんからね(笑)。西郷さんはなんといってもアイドルでしたからね。それだけでもすごいのに、お芝居も時代劇から現代劇までなんでもできるのがすごい。舞台でご一緒できるのが楽しみです。
西郷 健ちゃんはね。今からこの舞台を想像しただけで、笑いがふっとこみあげてくるんだけど、黙って立ってるだけできっとおかしいだろうなと。
中村 キヨが息子にあれ着ろこれ着ろっていろんなもの着せられるんだけど、いちばん得意なものは着せられなくて。その困惑してる姿がおかしい(笑)。松平さんは天下の松平健ですからね。それなのに格好悪さを見せていじられる役なので、そのギャップが面白いだろうなと思います。それにジャージ着てばりばり喧嘩する西郷さんも、相当見ものだと思いますよ(笑)。
西郷 梅雀さんは、このポスターを撮ったとき一番ガキ大将みたいにしてて、すごく面白かった。舞台でも期待してます(笑)。
西郷輝彦 撮影/岩村美佳
──最後にこの舞台への意気込みをぜひ。
松平 初めての現代劇ですから。それなりに緊張しながらやると思います。それから、この作品にはいろいろな家庭が出てきますので、それを見てお客様が自分の人生をふと振り返ってくださるといいなと。
中村 僕自身が還暦を迎えて、今年、子供も生まれて、新しいスタートなんです。だからこの作品でもう1回自分を振り返る部分もあると思うし、この作品に元気づけられて、やっぱりやるべきことはあるんだと。そういうものを投げかけられたら嬉しいし、元気の素になったらいいなと。あと、僕の役が一番現実離れしやすい役なので、「それはないだろ」と思われないようにリアリティを持って演じたいですね(笑)。
西郷 僕らと同じ世代のお客様が多いと思いますから、還暦過ぎてもみんな元気だよねと思っていただけるように。自警団もぜひ作っていただきたいですね(笑)。闘いに電気とか使いますけど、よい子は真似しないように(笑)。
西郷輝彦・松平健・中村梅雀 撮影/岩村美佳
まつだいらけん○75年『座頭市物語』でドラマデビュー。78年に『暴れん坊将軍』の将軍吉宗役に抜擢、シリーズは、25年にわたり放送、累計832回に出演。舞台・テレビでの時代劇作品に留まらず、ミュージカル『王様と私』『ドラキュラ伝説』等でも活躍。明治座にも数多くの作品で出演している。商業演劇としての現代劇作品で主演を務めるのは、今回が初めてとなる。
なかむらばいじゃく○65年、9歳の時『勧進帳』の太刀持ち役で、初代中村まなぶを名乗り初舞台。80年24歳で劇団前進座入座、同年12月歌舞伎座公演で二代目中村梅雀を襲名。07年劇団前進座を退団。NHK大河ドラマなどの時代劇はもちろん、ミステリードラマをはじめテレビでも幅広く活躍している。ベーシストとしても有名。
さいごうてるひこ○64年『君だけを』でレコードデビュー。その後も続けてヒットを飛ばし、『17才のこの胸』にて日本レコード大賞新人賞を受賞。“御三家”の一人となり、アイドルスターの地位を確立。73年に主演したドラマ『どてらい男』が大ヒット。その後も、時代劇、現代劇を問わず、多くの映像・舞台で活躍している。
【取材・文/中山圭 撮影/岩村美佳】
原作◇有川浩(「三匹のおっさん」「三匹のおっさん ふたたび」 )
脚本・演出◇田村孝裕
出演◇松平健、西郷輝彦、中村梅雀 /松金よね子、遠藤久美子、大久保祥太郎、宮﨑香蓮 、河相我聞 、西ノ園達大/竹下景子
●9/4~27◎明治座 (東京都)
http://www.meijiza.co.jp/info/2015_09/
●10/1(木)~10/8(木)◎中日劇場 (愛知県)
●10/17(土)~10/31(土)◎新歌舞伎座 (大阪府)
●11/28(土)~11/29(日)◎はつかいち文化ホールさくらぴあ大ホール (広島県)