伝説の舞台『シブヤから遠く離れて』の12年ぶり再演に挑む、岩松了と村上虹郎にインタビュー!

2016.8.27
インタビュー
舞台

(左から)岩松了、村上虹郎 撮影=鈴木久美子

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2004年に蜷川幸雄の演出で初演された『シブヤから遠く離れて』は、その出演陣の豪華さももちろんだが、岩松了が初めて蜷川のために書き下ろした戯曲ということでも大いに話題を集めていた伝説の舞台だ。この作品を12年ぶりに、今回は岩松自らが演出するニューバージョンとして再演する。渋谷の繁華街から少し離れた住宅地の一角にすっかり廃墟と化した邸宅があり、そこを舞台に日常と非日常が混然となった物語が展開していく。このストーリーの鍵を握る少年・ナオヤ役には、現在放映中のドラマ『仰げば尊し』で青島裕人役を好演中の若手注目株、村上虹郎が抜擢された。彼を翻弄する謎めいた女性・マリー役には初演に引き続き小泉今日子が扮する以外は、すべて配役を一新。初演とはまたかなり印象の違う作品が誕生しそうだ。そのビジュアル撮影が行われているスタジオ内で、岩松と村上に作品への想いを語ってもらった。

――今回、このタイミングで『シブヤから遠く離れて』を再演しようと思ったのは何かきっかけがあったんでしょうか。

岩松:いや、それがよくわからないうちにこうなっていた感じなんですよね(笑)。ただ、シアターコクーンではずっと新作をやり続けていたので、何かを再演したいなとは思っていて。それに、この『シブヤから遠く離れて』という作品は自分では演出したことがなかったので、そういう意味ではすごく新鮮なんですよ。
 

――この作品に出演することになって、村上さんは最初どう思われましたか。

村上:渋谷の話ということで、少し身近に感じました。実際に東京に住んでいるし、最近は渋谷にいることもよくあるので。岩松さんに初めて会った時、なぜかニヤニヤされていたので「これ、本当に出れるのかな?」って疑ったりもしていたんです(笑)。小泉今日子さんとは去年、ドラマでご一緒したんですが、直接からまない役だったので今回とても楽しみなんです。
 

――岩松さんが村上さんをキャスティングした狙いは。

岩松:誰がいいだろうと迷って悩んでいた時に、どういうきっかけか忘れましたけど村上くんがいいかな、と。

村上:え、忘れたんですか?(笑) そもそも、僕のことは知っていたんですか?

岩松:昨年末の藤田(貴大)くんが演出していた舞台『書を捨てよ町へ出よう』に出ていたことは知っていたんだけれども、自分の作品にどうだろうとはパッと思いつかなかったんだ。でも、ある時「村上虹郎ってどう?」って誰かが言って「あ、いいんじゃないかな」と思ってね。僕の中では、このナオヤというキャラクターについて候補者は他にもいっぱいいたんですが、みんな手垢がついている感じがしていたということと、もうひとつは、この役はちょっと子供の印象がある人でないとイヤだなと思っていたんです。既に大人っぽくなってしまった男の子だと、もう……。
 

岩松了 撮影=鈴木久美子

――ナオヤじゃない、と。

岩松:そうそう。少年っぽい感じがどこかに残っていないとね。だけど最近の若い人って、みんな背が高いじゃないですか。

村上:確かに、そうですねえ。

岩松:そうすると「成長したくない」なんていうセリフも「嘘だろおまえ?」みたいな感じに聞こえてしまうじゃない。

村上:じゃ、僕はちょうどちっちゃくて良かったです(笑)。

岩松:そのセリフを言わせるためには、やはり子供っぽさがないと。それをキョンキョン演じるマリーが、自分自身の身体は朽ち果てていきつつも彼のことを受け止めていくという話なので。そのキョンキョンとの対比ということで考えた時も、虹郎くんという存在が僕の中で非常にいい感じに響いたんですよ。だけど初演当時には30代だったキョンキョンが、今では50代になっちゃって。

村上:その初演の時、僕は7歳くらいでした。
 

村上虹郎 撮影=鈴木久美子

――それもすごいことですね(笑)。

岩松:本当だね(笑)。ただ、この作品はマリーという女は30代でも50代でも成立するんです。だから仮にさらに10年後でも、マリーはまだキョンキョンでいけるかもしれないけれど、ナオヤは虹郎くんでは難しいかもしれない。

村上:(笑)。だけど、その時に僕がまだまだガキだったら……。

岩松:「なんだ、変わってねえじゃん」ってことになるかもね(笑)。
 

――演出的には、前回の蜷川さん演出の舞台とはまた全然違う印象になりそうですか。

岩松:たぶん、違ってくると思いますよ。技術的なこと、衣裳や美術に関してはこれから打ち合わせをするところなんですが。でも芝居に関しては、稽古が始まって、とりあえず役者が動いているのを見てから考えることになると思います。
 

――マリー役を小泉さんが初演に続き続投する以外は、あとは全員新キャストですね。

岩松:もともと、この戯曲はキョンキョンにあてて書いているところがあるのでね。しかもさっき言ったみたいに、マリーというのはわりと年齢を経ていても大丈夫だよねみたいな話をしていたし。だいたい、初演時のキャスティングの際に「キョンキョンはどうですか」って蜷川さんに進言したのも僕だし。だから、どうしてもこの作品の場合は「キョンキョンありき」みたいなところがあるんです。
 

村上虹郎、小泉今日子の撮影風景 撮影=鈴木久美子

――お客様も、この新たな『シブヤから遠く離れて』を心待ちにされていると思います。お誘いのメッセージをいただけますか。

岩松:渋谷は若者の町というイメージだけれど、そこに廃墟の家を置くというのが、この作品の印象につながっていると思うんですね。それ自体が作品のテーマというか、言いたいことであるという風に考えてもらってもいいと思います。そういう意味では、非常に変形した現代の表現の仕方になっているかもしれませんね。
 

――現代的というより夢の出来事のような、ファンタジーみたいな印象もあります。

岩松:そうですね。結局、生きているのか死んでいるのかわからないような話でもあるし、若者の街なのに廃墟があるという、相反するものが同居していて。また、具体的でもないけどまったくの抽象でもないし。そうやって考えていくと非常に混然とした話なんです。そういう面も、ぜひ楽しんでいただければなと思います。

村上:僕は岩松さんの舞台を観たのはまだ一度だけなんですね。それこそ、今日子さんの出ていた『家庭内失踪』だったんですが、僕には正直、難しかったんです。

岩松:難しかった?

村上:初めてだったからかもしれないけど、2回観ても理解するのはちょっと難しい気がしました。『シブヤから遠く離れて』も、自分が演じることになって初めて読んだ時、めちゃくちゃ難しかった。「やることになっているのにそれでも理解できないのか、俺は」と思って悔しかったです。でも、この戯曲は書籍にもなっているじゃないですか。内容は一緒ですけど。それで台本をもらった後だったんですが、もしかしたら本になっているほうが読みやすいかもと思って自分で買ったんです。そうしたら、本として読むとすごくすんなり入ってくるんですよね。

岩松:へえ、上演台本じゃないほうが?

村上:そうなんです。僕の理解力の問題かもしれませんが(笑)。それでも、まだ黙読しかしていないので、この作品のことはあまりわかっていないと思います。これをセリフとして音読してみて、物語を感じて、それから伝えていきたいですね。だけど、それにしても岩松さんはすごいなと思います。僕には、こういう作品はとても書けないですから。こういうお話って、いつか書けるようになるものですかね?

村上虹郎、小泉今日子の撮影風景 撮影=鈴木久美子

――脚本を書いてみたいんですか?

村上:詩は書いたことがあるのですが、物語を書くという感覚が僕にはまだなくて。

岩松:何度かやっていくと、意外に。
 

――書けるようになりますか?

岩松:いやいや、書けるようになるかどうかはわからないけど。まず、書くことが好きでないとやっぱり書けないとは思うなあ。

村上:溢れ出てくるものですか、それとも絞り出す感じですか。

岩松:楽しむ、という要素がまず必要だよね。たとえば「こういうシチュエーションにしたら、どうかな?」と考えることを楽しむとか。さっき言ったみたいに「渋谷の街に廃墟があったらどうだろう」とか、「そこにお金を返しに行ったら友達がいて、でもそいつは本当はもういないはずなのに」とか、「そこに何かから逃げている娼婦が隠れていて、そのふたりの出会いの話にしたらどうだろう」とか、そうやっていろいろ考えていくことが楽しい、という感覚が大事なんじゃないかな。

村上:起きながら夢を見ているような感じですか?

岩松:うーん、かもしれない。でもまあ、こうして考えてみると、どちらにしてもあんまり健康的なことではない気がしてくるね(笑)。

(左から)岩松了、村上虹郎 撮影=鈴木久美子

公演情報
『シブヤから遠く離れて』

 日時:2016年12月9日(金)~12月25日(日)
 会場:Bunkamuraシアターコクーン
 作・演出:岩松了 
<出演者>
村上虹郎、小泉今日子、鈴木勝大、南乃彩希、駒木根隆介、小林竜樹、高橋映美子、たかお鷹、岩松了、豊原功補、橋本じゅん

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