#野水映画 “俺たちスーパーウォッチメン” 第八回レビュー『デビルズ・メタル』
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TVアニメ『デート・ア・ライブ DATE A LIVE』シリーズや、『艦隊これくしょん -艦これ-』への出演で知られる声優・野水伊織。女優・歌手としても活躍中の才人だが、彼女の映画フリークとしての顔をご存じだろうか?『ロンドンゾンビ紀行』から『ムカデ人間』シリーズ、スマッシュヒットした『マッドマックス 怒りのデス・ロード』まで……野水は寝る間を惜しんで映画を鑑賞し、その本数は劇場・DVDあわせて年間200本にのぼるという。この企画は、映画に対する尋常ならざる情熱を持つ野水が、独自の観点で今オススメの作品を語るコーナーである。
6月から公開中の宮藤官九郎監督『TOO YOUNG TOO DIE!若くして死ぬ』(16)では、地獄に落ちたギター少年が、生き返るためにメタルバンドで奮闘する。また、私は未見だが、人気漫画の実写化映画『デトロイト・メタル・シティ』(08)では、デス・メタル界の帝王ヨハネ・クラウザーⅢ世が活躍する。このように、メタルにまつわる映画は意外と日本でも親しまれている。しかし、今回紹介するメタルな映画は、『TOO YOUNG TOO DIE!』の長瀬智也さん演じるコワモテの鬼よりももっと怖い、悪魔を召喚してしまうスプラッターコメディ……その名も『デビルズ・メタル』だ!
(C)METALHEADS LTD 2015.
冴えないメタルオタクのブロディは、母親の入院で叔父の家に預けられることになったのだが、新しい高校にはなかなか馴染めない。出来た友達はTRPG(テーブルトークRPG)が好きなオタクたちだけ。ブロディは、レコード店で出会ったイケてるメタラー・ザックも引き入れ、バンド活動で気を紛らわす毎日だ。そんななか、ザックとともに忍びこんだ憧れのミュージシャンの家で、悪魔を呼び出す「黒い賛美歌」の楽譜を手に入れてしまう。
(C)METALHEADS LTD 2015.
主人公のブロディは、顔色が悪く貧弱で、好きな女の子に対する押しも弱い。そんな彼の居場所は自分の部屋と、バンド練習で使うガレージだけ。家族との関係も学校も上手くいかない」「こんな世の中クソくらえ」「オレは自由になりたいんだ!そんな“厨二病”な毎日を過ごした方もいるではないだろうか? かくいう私もその一人である。けれどブロディは、イケてるザックと出会い、ジャンルは違えどオタク仲間とバンドを組み、なんだかんだ充実した生活を送り始めていた。……が! 結局ネガティブな気持ちから黒い賛美歌を演奏してしまうのだった。
黒い賛美歌を耳にした街の人々は、ドボドボと吐血して悪魔化。目からも血を流し、なかなかエグい顔に大変身。悪魔化していないブロディたちに襲いかかってくるのである。それを見て「自分が悪魔を呼び出したせいだ」と察するブロディに対し、ザックは「なんで言わなかった」と怒りだす。「あれ? 悪魔とか非現実的なもの、そんなすんなり受け入れるのか」と思われた皆さん、そんなことは気にしないように! なぜなら彼らはメタラーだから! メタルと悪魔のイメージが結び付けられる理由は、一部のメタルが黒魔術やサタニズム(悪魔崇拝)を掲げていることなど、挙げればきりがない。しかし、そんなことはすっとばしても、メタルのジャケットデザインやメタラーのファッションを見るだけでイメージできるだろう。……というわけで、メタラーたる者、いつ悪魔が出てきても驚いたりはしないのだ! それよりも、ブロディがそれをナイショにしていたことのほうが、固い友情で結ばれたザックにとっては怒りのデスロードなのである。
(C)METALHEADS LTD 2015.
とはいえ、ホラー映画は悪魔が出てきてからが本番。スプラッターファンの皆さまお待たせしました! 近づくなと言っても聞かない悪魔野郎の顔は電ノコでスライス。パンツを履かずに表を出歩く野郎は、芝刈り機で股間をカット。近づく奴は容赦なく叩っ斬るぜ!……ってあれ? そいつ悪魔じゃなかったんじゃ……まぁいっか。ギュンギュンなメタルの旋律に乗せ、軽いノリと高いテンションで悪魔をなぎ払っていけば、プールで弾ける水しぶきよろしく、血しぶきが大量に飛び散る! なんて夏にピッタリなんだ。じっとりとした暑さを吹っ飛ばしてくれるシーンの連続は、もう爽快としか言いようがない。
そんななかでも、私にとってのの一番の見どころは、ブロディと叔父さんとの戦いだ。敬虔なクリスチャンである叔父さんは、皮肉にも誰よりも早く悪魔となってしまう。そのやられっぷりは毒っ気盛りだくさん。めぼしい武器が見つからなかったブロディたちは、代わりに見つけたあるもので応戦するのだが……「そんなもので戦うんじゃありません!」と叱りたくなるこのシーン。スローモーションでたっぷり堪能できるのが、さらにおバカでヒドい! ある意味厨二病というか、男子の妄想炸裂というか……。あまりに過激な下ネタなので、女性の皆さまはお気をつけあれ。
(C)METALHEADS LTD 2015.
監督はメタルが大好きなのか、それともメタラーをディスってるのか、もはやわからない。わからないくらいおバカなシーンが盛りだくさんなのに、「なんかカッコいい」と思ってしまう。ハッ……もしや観ていく内に、私の知能指数も下がってしまったのだろうか? まぁ難しいことは考えずに楽しめばいいんだと思う。夏だし!
オープニングクレジットのアニメや、クライマックスに向けた武器の自作シーンなど、私的コア映画のツボをしっかりとおさえた本作。観れば君も立派なメタラーだぜヘイルサタン!!
『デビルズ・メタル』は、新宿シネマカリテ「カリテ・ファンタスティック!シネマコレクション2016」にて、公開中。
『デビルズ・メタル』
(C)METALHEADS LTD 2015.
監督・脚本: ジェイソン・レイ・ハウデン
出演: マイロ・コーソーン ジェームズ・ブレイク キンバリー・クロスマン
©METALHEADS LTD 2015.
【上映スケジュール】新宿シネマカリテ
7月23日(土)16:30
7月24日(日)21:15
7月27日(水)21:15
7月3日(水)16:00
8月8日( 月)20:45
8月13日(土)18:30
8月24日(水)16:00