中村勘九郎、大阪で 『真田十勇士』“出陣”会見
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中村勘九郎 [撮影]吉永美和子(人物すべて)
「映画と舞台の連動で、今年の秋はとんでもないことになります!」(勘九郎)
ワイヤーワークなどを駆使したド派手なアクションと、嘘と真実が入り交じる先の読めない展開で演劇界を騒がせた『真田十勇士』が帰ってきた! しかも堤幸彦監督の映画版と、演出の舞台版を同時期にやるという、本邦初となるダブルリリース形式だ。東京でも会見が行われたが、ここでは両作品で主演・猿飛佐助役を務める中村勘九郎が、物語の舞台となる大阪で、映画と舞台の両方について熱く語った会見をお届けする。
まずは「三谷(幸喜)さんが(NHK大河ドラマ『真田丸』で)パクった結果、真田ブームが起こりましたが…」と切り出して爆笑を取った勘九郎(この後、三谷から「こっちが先!」という抗議のメールが来て謝罪したのはご存知の通り)。「初演の舞台中に、堤さんに冗談半分・本気半分で“これを映像にしたらいいんじゃないか”という話をしましたら、映画と再演を(両方)するということになりました。映画にするのはとても嬉しかったんですけど、再演と聞いた時はちょっと落ち込みました(笑)。佐助はとにかく動き回る役で、一回の公演で体重が3・4kg減るほどハードだったから “あれをもう一回やるのか…”と。でも映画を撮り終えてみて、映画で得たことが再演にすごくつながると思いましたので、また舞台版をやりたいと心から思いました」
映画版の戦闘シーンの撮影は、真田幸村が流された九度山がある和歌山県で行われた。これがまた、舞台版に負けずハードな日々だったそうだ。「毎日本当に戦場にいる雰囲気で、緊張感が半端なかったです。佐助が火だるまになるシーンでは、いろんな人に止められたんですが“ぜひやらせてくれ”と直談判して、(事務所の)社長に報告をせずにやりました(笑)。またエキストラの徳川兵の人たちが、(アクション前に)笑顔で槍を持って僕たちを待ち構えているのを見て“この人たちを切らなきゃいけないのか”と思って、すごく心が痛んだりして。僕は歴史好きで、(戦場も)行ってみたいと思っていたんですけど、今は絶対行きたくないと、映画をやってみて思いました。嘘の戦闘シーンでさえあんなに怖いのに、これが本当の殺し合いだったら、その精神状態はちょっとわからないですね」
「撮影中は和歌山では珍しく雪が積もりました。堤監督が雪男なんです」などの裏話も。
そんな緊張感みなぎる現場だったこともあってか、映画版の方は非常に切ない雰囲気に仕上がったそうだ。「シリアスな描写が多くて、いろんな親子愛が色濃くクローズアップされています。また初演では気づかなかったんですけど、佐助や(霧隠)才蔵は親子の愛にすごく飢えていて、最終的には幸村さんをお父さんみたいな…主従関係なんですけども、親でもあり守りたくなるという所まで到達したんだと。それを(共演の)みんなに話したら、十勇士全員が同じことを思っていたと言うから、それが目からウロコでしたね」。とはいえただ深刻なだけではなく、パロディの名手の堤監督らしく「真田丸ができた時に出てくる文字が、どっかで見た字体なんです(笑)」という遊びも盛り込まれているそうだ。
一方舞台版は再演に向けて、映画ネタや時代性に合わせた改訂が入っているそうだ。「でも脚本を読んだら、初演で一番しんどかった場面はそのまんまでした」と笑いつつも「十勇士たちの出会いとか、大坂城に行くと決断する場面などは、映画版ではアニメーションになってるんです。舞台ではそれを実際に演じますので、より一人ひとりのキャラクターに感情移入していただけると思います。佐助のアプローチも、パワーを持ちつつも深い所というか、映画で覚えた感情を大切にしてやりたいです」と、その魅力と意気込みをアピール。稽古はまだこれからだが「監督が“さらにパワーアップしたものにしたい。回り舞台を使ってセットを動かしたい”など、意味わかんないことを言っていて怖いです。昼夜公演も(初演より)増えていて、僕らに死ねと言ってるのかと(笑)。でも今回は最後の一騎打ちの相手に山口馬木也さんも加わっていて、一緒にできるのが今から楽しみです」
「舞台はハードだけど今回も乗り切りたい」と意気込みを語る勘九郎。
昨年は大阪城内で「平成中村座」の公演を打ち、しかも2演目で秀吉役を演じるなど、最近豊臣家&大阪城とは何かと縁がある勘九郎。実は中村屋自体が大坂方とは縁が深い家系であることを、この会見で明かしてくれた。「初代中村勘三郎のお父さんは(豊臣秀吉に仕えた)蜂須賀小六の家来で、なんと大坂夏の陣の時に、大坂城で討死しているんです。だから豊臣家とは何か縁を感じますし、こうして関西でキャンペーンができたのは嬉しいです。大坂の陣がメインの映画ですから」
「何百年も嘘をつき通せば本当になる」という舞台版脚本のマキノノゾミの言葉通り、大河ドラマ以上に真実と嘘を大胆に織り交ぜた、もう一つの“真田丸”の物語。コミカルなやり取りと体を張った生の芝居に圧倒される舞台版と、映画ならではのリアルな戦場&人物の描写で人間の悲しみにも迫る映画版、どちらを先に見ても楽しめるのは間違いない。「今年の秋はとんでもないことになります!」と勘九郎が胸を張る、誰も観たことがない “大坂秋の陣”に、いざ参らん!
■監督:堤幸彦
■主題歌:松任谷由実『残火』
■出演:中村勘九郎、松坂桃李、大島優子、永山絢斗、高橋光臣、松平健(特別出演)、加藤雅也、大竹しのぶ、ほか
2016年9月11日(日)~10月3日(月) 新国立劇場 中劇場
■横浜公演
2016年10月8日(土)~10日(月・祝) KAAT神奈川芸術劇場
■兵庫公演
2016年10月14日(金)~23日(日) 兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール
■演出:堤幸彦
■出演:中村勘九郎、加藤和樹、篠田麻里子、高橋光臣、村井良大、山口馬木也、加藤雅也、浅野ゆう子、ほか