スキマスイッチが“新しいアルバムを引っ提げないツアー”でみせた高い自由度と遊び心の詰まったライブ

レポート
音楽
2016.8.4
スキマスイッチ 撮影=岩佐篤樹

スキマスイッチ 撮影=岩佐篤樹

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スキマスイッチ TOUR 2016“POPMAN'S CARNIVAL” ファイナル 2016.7.12 昭和女子大学 人見記念講堂

約3ヶ月間で全国20ケ所23公演を行った全国ツアー『スキマスイッチ TOUR 2016“POPMAN'S CARNIVAL”』が、7月12日の昭和女子大 人見記念講堂でファイナルを迎えた。スキマスイッチは2人組ユニットという形態を生かし、これまでサポートミュージシャンを迎えたバンドスタイルのみならず、そこに管楽器や弦楽器を加えたり、また2人だけでステージを構築した全都道府県ツアーを行うなど、ライブで様々な試みをしてきたが、今回は“新しいアルバムを引っ提げないツアー”というコンセプトを立ち上げ、新たな試みを実行した。これまでの活動を振り返れば、この4月にリリースしたシングルのカップリング曲を中心に収録したアルバム『POPMAN'S  ANOTHER WORLD』を携えたツアーを行う流れになるだろう。

スキマスイッチ 撮影=岩佐篤樹

スキマスイッチ 撮影=岩佐篤樹

しかし彼らは今回のツアーでその流れを自らの意思で変え、自分たちがこれまで作ってきたすべての楽曲の中から選曲をし、このツアーのためにリアレンジを施した曲たちをメニューに並べた。つまり観客たちもリリースしたばかりのアルバムを中心にしたメニューという括りを取っ払い、(ネット上の“ネタばれ”さえ目にしなければ)彼らがスキマスイッチのどの時代のなんの曲を選ぶのか、それらをどう演奏するかなど、そのライブ当日まであれこれ自由に想像できる新たな楽しみがここでまたひとつ増えたはずだ。個人的には『POPMAN'S  ANOTHER WORLD』に収録されていた「壊れかけのサイボーグ」はこれまでにライブで1回もやったことがないし、ようやくアルバムに収録したんだからきっと今回のツアーではやってくれるだろう思っていたのだが、彼らが演奏しなかったことにニヤリとしてしまったのでした。

スキマスイッチ 撮影=岩佐篤樹

スキマスイッチ 撮影=岩佐篤樹

スキマスイッチ 撮影=岩佐篤樹

スキマスイッチ 撮影=岩佐篤樹

MCで大橋卓弥は「今回のツアーで予習は一切必要ありません」「フラットに楽しんでいただければ嬉しい」と言っていたが、普段のツアーではなかなか演奏することのなかった曲をやったらみんなは喜んでくれるかな、大胆にリアレンジしたことで前奏を聴いただけでは原曲がなかなかわからない曲(「水色のスカート」「時間の止め方」「僕と傘と日曜日」「ソングライアー」など)を演奏したら観客はいったいどんな反応をしてくれるのだろうと、新たに立ち上げたコンセプトツアーを二人は思いっきり楽しんでいるように見えた。

スキマスイッチ 撮影=岩佐篤樹

スキマスイッチ 撮影=岩佐篤樹

ライブ中盤のアコースティックコーナーでは、サポートメンバー(Dr.村石雅行、B.種子田健、G.太田貴之、Key.浦清英、Per.松本智也、Sax.本間将人、Tp.田中充)がステージ前方に出てきて2人と横一列に並び、古い曲「君曜日」、CMでお馴染みの「フレ!フレ!」、そして「この曲をアコースティックなアレンジにしたらおもしろいんじゃないかと思って」と紹介した「ボクノート」を演奏し、アットホームな温かい世界を作り上げた。スキマスイッチが人見記念講堂でライブを行うのは今回が初めてだが、この会場がある三軒茶屋は2人が18歳の時に地元・愛知から上京して初めて住んだ街なのだということがMCで明かされ、「専門学校時代、この会場の前をいつも行き来していた」「思い出がたくさんある街でツアーファイナルができるのはとても感慨深い」と、ちょうど20年前のあの頃の自分たちを思い浮かべているように話す2人の表情がとても印象的だった。

スキマスイッチ 撮影=岩佐篤樹

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最新シングル「LINE」に続き、大橋の「行くよ~!」の声をきっかけに始まった「ユリーカ」からライブは一気に加速。客席でタオルが舞った「Ah, Yeah!!」、大合唱となった「全力少年」ではなんと大橋が客席に下り、通路を一周したあと、常田真太郎のグランドピアノの上に上って最後はそこからジャンプ!! そんな大橋のやんちゃな姿(?)と、ピアノを弾きながらニコニコ見ている常田を見ながら、スキマスイッチの楽曲はこの2人のそれぞれの異なる個性が重なって、ぶつかって、溶け合って、一緒になったところから生まれてくるんだなとあらためて思った。

スキマスイッチ 撮影=岩佐篤樹

スキマスイッチ 撮影=岩佐篤樹

本編ラスト曲を歌う前に大橋卓弥はこんなMCをした。僕たちは大橋卓弥と常田真太郎の2人で作詞・作曲をやっているけれど、こうしてライブで、ツアーで歌っていくうちに、曲を作ったときとは違う新しい意味合いやメッセージが乗って、その曲から何かを教わっているような気がします、と。そして「僕らとみなさんの関係性にも思える曲」と言い、本編最後の曲に「ハナツ」を届けた。

スキマスイッチ 撮影=岩佐篤樹

スキマスイッチ 撮影=岩佐篤樹

アンコールの1曲目は大橋が「シンタ(常田)ワールド全開の曲。僕も大好きな曲です」と言っていた「電話キ」。この曲はスキマスイッチ名義で初めて制作された古い曲で、実はもともと常田がボーカルを取っていたが、リメイクバージョンで大橋が歌ったというとてもレアな曲だ。ソフィストケイトなAOR風アレンジを施した「デザイナーズマンション」では、大橋が~三軒茶屋に住もう~と歌詞を変えてフェイクをしたり、間奏ではサポートメンバーがそれぞれにソロを披露した。「POPMAN'S CARNIVALにピッタリの曲」と大橋が紹介した「サウンドオブ」をアンコールの最後に届け、約3時間のライブは暖かな声援と大きな拍手に包まれて終わった。

スキマスイッチ 撮影=岩佐篤樹

スキマスイッチ 撮影=岩佐篤樹

スキマスイッチ 撮影=岩佐篤樹

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今回の『POPMAN'S CARNIVAL』は、新しいアルバムを引っ提げないツアーというコンセプトを掲げ、今自分たちがやりたい曲やリアレンジを施した曲を届けたが、ツアー・タイトルに合わせ、サーカスのテントをデザイン化したロゴをステージ後方に掲げたり、バンドメンバーたちとおそろいの衣装(ワッペンが付いたワークシャツ)を着たり、ライブ開演前と終演後に楽しいアナウンス(声の主は声優・山寺宏一さん!)が流れたりと、そんな遊び心もたっぷり盛り込まれていた。彼らはこのコンセプトツアーを「VOL.2 Vol.3と続けていきたい」と約束してくれたが、2人に大きな刺激を与え、今後のスキマスイッチの音楽やライブに新たな可能性を広げてくれる場所になった初めての『POPMAN'S CARNIVAL』を終えた彼らから、またどんな自由度の高い楽曲が生まれ育つのか楽しみだ。
 

撮影=岩佐篤樹 レポート・文=松浦靖恵

スキマスイッチ 撮影=岩佐篤樹

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セットリスト
スキマスイッチ TOUR 2016“POPMAN'S CARNIVAL” ファイナル 2016.7.12 昭和女子大学 人見記念講堂
1. 晴ときどき曇
2. LとR
3. 飲みに来ないか
4. 水色のスカート
5. かけら ほのか
6. 時間の止め方
7. 1+1
8. 僕と傘と日曜日
9. ソングライアー
10. 君曜日
11. フレ!フレ!
12. ボクノート
13. LINE
14. ユリーカ
15. パラボラヴァ
16. Ah Yeah!!
17. 全力少年
18. ハナツ
[ENCORE]
19. 電話キ
20. デザイナーズマンション
21. サウンドオブ

 

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