佐藤タイジ、うじきつよし、佐々木亮介が集い、語り歌った『中津川 THE SOLAR BUDOKAN』の意志

2016.8.10
レポート
音楽

うじきつよし / 佐藤タイジ / 佐々木亮介 撮影=風間大洋

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日本各地で大小さまざまなフェスが毎週のように開催される昨今。その中でも際立って独自な立ち位置と意志を誇るのが、佐藤タイジがオーガナイザーを務める『中津川 THE SOLAR BUDOKAN』(以下、NTSB)だろう。“太陽光でロックする!”をスローガンに、震災以降のエネルギー政策のあり方への警鐘を鳴らし、ひとつのカウンターアクションとして多くのミュージシャンやアーティストへと輪を広げているフェスだ。

佐藤タイジ 撮影=風間大洋

今年も9月10日(土)、11日(日)に岐阜県中津川市で開催される同フェスの、キックオフ的な位置付けとなるイベント『SPICE presents 中津川 THE SOLAR BUDOKAN 2016 プレPARTY IN SHIBUYA』が、8月1日、東京・渋谷で行われた。出演は佐藤タイジのほか、MCにラジオパーソナリティとしてお馴染みの中村貴子、ゲストにうじきつよし(子供ばんど)、佐々木亮介(a flood of circle)を迎え、前半は今年の『NTSB』の見どころを中心としたトーク、後半はアコースティックライブという構成で、100名の事前予約枠は全て埋まり、急遽生配信も行われることとなった。

うじきつよし / 佐藤タイジ / 佐々木亮介 撮影=風間大洋

会場がカフェ&ダイナーで飲食しながら観られるということもあってか、来場者は比較的年齢層が高めで、ディナーショー、といったら言い過ぎだけれど、ちょっとそんな感じ。だが、佐藤タイジが登場してイベントが始まるとそんな空気感は一変。軽妙に笑いを誘いながらのトークでフェスの見どころや根幹にあるエネルギーについての考え方が語られるのだが、ときおり国や政治の状況なんかにもズバズバと切り込んでいく。言うべきことはちゃんと言う。この明らかに”踏み込んでくる”感覚は、プレイベントとはいえこのフェスの存在意義そのものをしっかり体現している。

遠藤治郎 / 佐藤タイジ 撮影=風間大洋

途中、タイの大型フェス『Big Mountain Festival』を手がけ、『NTSB』のステージデザインも手がける建築デザイナーの遠藤治郎氏も登場し、スライドに映像を映しながら新設される2つのステージ=REALIZEステージ / RESILIENCEステージのコンセプトやこだわりについでも語られたのだが、とりわけRESILIENCEステージがすごかった。床下にスピーカーを多数配置することで、騒音対策といわゆる“返し”の音をリスナーが直接浴びるという貴重な体験の双方を実現したのだそう。参加者も大きくリアクションしながら聞き入っていた。ちなみにもうひとつのREALIZEステージのコンセプトは“ガーリー×盆踊り”だそうで、“ガーリー”という単語がなぜかこの日の出演者陣の中で流行語になっていたことも、あわせて記しておく。

うじきつよし / 佐藤タイジ / 佐々木亮介 撮影=風間大洋

そこからゲストのうじきと佐々木がトークに加わり、この2人の新バンド・NO GENERATION GAPSを紹介。なんでも佐々木の父親よりもうじきは1歳年上だそうで、佐々木から「バンド名は“親子バンド”で良いんじゃないか」という提案もあったそう。結局は今のバンド名に落ち着いたわけだが、このバンドで新曲も作るかという話まで出ているようで、親子以上に年の離れた2人が意気投合して一つの音楽を鳴らすという事実には、「音楽ってすごいよなぁ」と今更な感想を抱いてしまった。彼らだけではなく、『NTSB』には加山雄三や八代亜紀などさらに上の世代の超大物ミュージシャンも参加するわけで、そんなステージ上で繰り広げられる世代を超越したパフォーマンスの数々も見どころなのは間違いない。

うじきつよし 撮影=風間大洋

佐々木亮介 撮影=風間大洋

また、ゲストそれぞれの中にも『NTSB』の精神が共有されていることが分かる一幕も。時事ネタなどにも触れながら「我々、何か言うとすぐアウトローみたいに言われたりするけど、今はロー(law=法)がアウトだから」(うじき)、「もう時代は取り返しのつかないところまで来ちゃってるんじゃないかと感じたりもする」(佐々木)と、自らの意見、思うところを明確にメッセージとして来場者に伝えていた。佐藤もフェス開催を通して太陽光という自然エネルギーの有効利用を訴えてきた中で、そこに批判や懐疑的意見もあるとし、太陽光発電の電力は実際に音も良い、でも眉ツバだと言われたりもして悔しかったので実際に聴き比べてもらう動画を作っている、と明かし、その予告編をここで初上映。佐々木とのセッションを通常のコンセントと太陽光を利用した蓄電池による電源で弾くという内容なのだが、なるほど明らかに違って聴こえるではないか。実際、機材に映る波形で見ると帯域の広さが目で分かるほどらしいので、動画が公開になった際には是非視聴してみてほしい。

佐藤タイジ 撮影=風間大洋

佐藤タイジ 撮影=風間大洋

そしてお待ちかねのライブはまず、佐藤のソロから。曲は「ありったけの愛」! 会場に集まったファンのほとんどが聴きたかったんじゃないか?というこの名曲が奏でられ、佐藤の熱のこもった歌唱が響くと歓喜の声が上がる。途中にはMinnie Ripertonの「lovin' you」のフレーズが差し込まれ、しかもそこを観客に振ってコール&レスポンスという無茶目のフリもあったのだが、それも何のその。右肩上がりにリアクションが大きくなり、最終的には合唱が巻き起こっていた(あとからゲスト2人につっこまれていました)。再びうじきと佐々木も加わって3人で弾き語って披露したのは、エディ・コクランのカバーでRCサクセションもカバーしたことで知られる反原発ソング「サマータイム・ブルース」と、ソーラーレコーディングされた『NTSB』のマインドを象徴する「もう一度世界を変えるのさ」。ハッキリと意図が感じられる選曲だ。互いに視線や笑顔をかわしながら代わる代わるボーカルを採る3人に、会場中からのクラップが送られ、大きな盛り上がりの中ライブは幕を下ろした。

佐藤タイジ 撮影=風間大洋

佐々木亮介 撮影=風間大洋

うじきつよし 撮影=風間大洋

この日も話題になっていたが、ミュージシャンが政治的な発言をすることに対する是非が取りざたされたりする昨今。賛成/反対はあって良いと思うけどロックって本来そういうものだろ?という気もするのだが、そこらへんはまだこの国の土壌にはあまり根付いていないのかもしれない。そんな状況下でも、しっかりと自らの思想や主義を明らかにした上で、本分である音楽を通して訴えかけることで広がりをみせてきた『NTSB』、その何たるか。演奏はもちろん、彼らのバックボーンまでがプレイベントの時点からしっかり伝わってくる、そして、純粋に本番への期待感が高まる一夜だった。
 

撮影・レポート・文=風間大洋

うじきつよし / 佐藤タイジ / 佐々木亮介 撮影=風間大洋

ツアー情報
中津川 THE SOLAR BUDOKAN 2016
開催日時
Day1: 2016年 9月10日(土)
Day2: 2016年 9月11日(日)
※ 雨天決行(荒天の場合は中止)
出演: 
9月10日(土)
シアターブルック、AFTER SCHOOL HANGOUT(林立夫&沼澤尚 with 鈴木茂, 森俊之, 沖山優司 featuring Leyona and 高橋幸宏)、チャットモンチー、DJダイノジ、怒髪天、H ZETTRIO、麗蘭、ましまろ、MONGOL800、NAMBA69、OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND、RIZE、SA、Spinna B-ILL、10-FEET、Dragon Ash、SCOOBIE DO、THE BLACK COMET CLUB BAND、cro-magnon、加藤登紀子、シシド・カフカ、中川敬(ソウル・フラワー・ユニオン)、オレスカバンド、NO GENERATION GAPS(うじきつよし・佐々木亮介)、Dachambo、DJ NOBU A.K.A. BOMBRUSH! with IO, DONY JOINT & YOUNG JUJU (KANDYTOWN / BCDMG)
Village Of illusion
LIVE: フォークソング部  : NAOKI(SA)&上原子友康(怒髪天)、藤井一彦(THE GROOVERS)、Rei 
DJ:SEIYA、DJ PAIPAI & SWEET RAVE、DJ 吉沢dynamite.jp
Midnight illusion 
瀧澤賢太郎、DJ EMMA、KEN ISHII
9月11日(日)
ACIDMAN、a flood of circle、赤い公園、THE COLLECTORS、ダイノジ(Talk&Live)、the HIATUS、インディーズ電力 大取締役会、Nothing’s Carved In Stone、THE King ALL STARS(加山雄三、佐藤タイジ、古市コータロー、名越由貴夫、ウエノコウジ、武藤昭平、山本健太)、八代亜紀、さかいゆう feat. 福原美穂 、the LOW-ATUS、ROVO
浜崎貴司 GACHI SOLAR SPECIAL(浜崎貴司、仲井戸“CHABO”麗市、佐藤竹善(Sing Like Talking)、PES(RIP SLYME)、山田将司(THE BACK HORN))、MANNISH BOYS、LIVE FOR NIPPON 〜Pray For 熊本〜 (高田漣.・東田トモヒロ・山口洋)、 片平里菜、黒木渚、真心ブラザーズ、ストレイテナー、チャラン・ポ・ランタン、BimBamBoom、Young Juvenile Youth、OZROSAURUS、ROTH BART BARON、TheSunPaulo、Yasei Collective、iCas(インディーズ電力 大取締役会)
(タイムテーブルは後日発表)
 
開催場所:
岐阜県中津川市 中津川公園内 特設ステージ
(岐阜県中津川市茄子川1683-797)

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