最新作『CONTACT−コンタクト』が日本初上陸、演出・振付のフィリップ・ドゥクフレに聞く
フィリップ・ドゥクフレ
31歳の若さでアルベールビル冬季オリンピックの開会式、閉会式を手がけた振付家・演出家、フィリップ・ドゥクフレ。今年はシルク・ドゥ・ソレイユの新作ミュージカル『Paramour』をブロードウェイで上演するなど、精力的に活動を続けている。また、12月には楳図かずお原作の『わたしは真悟』を高畑充希、門脇麦をキャストに迎えミュージカル化することで、日本でもこれまで以上に注目を集めている。そんなドゥクフレが、自身のダンス・カンパニーDCAを率いて最新作『CONTACT−コンタクト』を日本で上演する。それに伴い、取材会が行われた。
フィリップ・ドゥクフレ
『CONTACT−コンタクト』はドイツの文豪ゲーテの『ファウスト』を下敷きにしたミュージカル。といっても、重厚で暗い空気はどこにもない。
「私にとってミュージカルは、さまざまな芸術がミックスされたもの。だから今回はいろんな個性の人を集めて、ひとつの作品をつくりたいと思ったんです。そこで若者からベテランまで、肉体的な特徴もバラバラのキャストを集めました。たとえばバレエ出身の人もいれば、演劇、サーカス、ストリップ出身の人もいる。そういうさまざまなキャストがうまく融合してこの作品はできています。14人のダンサーのうち、11人はダンスのほかに歌も担当しています。残り3人は、あまり歌が上手ではないので、歌っていません(笑)。ピナ・バウシュが亡くなってすぐに取り掛かった作品だったので、彼女へのオマージュも入っています」
フィリップ・ドゥクフレ
生演奏の音楽にのせて繰り広げられるダンスや歌はもちろんのこと、コントあり、サーカスのような空中演技ありと、ダイナミックにステージが変化していく。いくつものステージを一気に見せられているかのように、にぎやかでファンタジックなキャバレー・ミュージカルだ。
「この作品には、映画にインスピレーションを得たシーンがたくさんあります。たとえばオープニングはフレッド・アステアとジーン・ケリーの作品。とあるシークエンスは『ウエスト・サイド物語』。私が15歳のときに夢中になったブライアン・デ・パルマの『ファントム・オブ・パラダイス』にオマージュを捧げたシーンもあります。他には、1920〜30年代のバスビー・バークレーによるミュージカル映画の影響も大きいですね。舞台装置は『カリガリ博士』からインスピレーションを得ています」
フィリップ・ドゥクフレ
これらのあまりにもバラエティに富んだパーツをひとつの作品としてまとめあげるのは、やはり骨の折れる作業だったようだ。
「私は作品ごとにやり方を変えるようにしているのですが、この作品はまず作品プランをつくるところからはじめました。出演するダンサー数人と執筆グループをつくり、週末ごとに田舎に集まって意見交換をするんです。そこで『ファウスト』やピナ・バウシュというキーワードが生まれました。
毎回やり方を変えると言いましたが、ベースとなるメソッドがあるとしたら、それはアイディアを出して、それぞれのアイディアについてワークショップをすること。そうやってパズルのピースをつくるんです。そのパズルを組み立てるのが、僕。今回はやはりピースそれぞれが違いすぎるので、組み立てるのは困難でした。ツアー1年目は公演がはじまってもずっとピースを組み替えていました。しかも、公演がはじまったときに主役級のダンサーが靭帯を痛めてしまうという危機も訪れました。さらに、ダンサー2人が妊娠し、出産しました。その時々に応じて、人生が変わっていくように、この作品も変化を経てきたんです」
日本での公演は、靭帯を痛めたダンサーも無事戻り、14人が揃う完成形として上演される。
「今回はすべて生演奏ですし、ダンスもミリ単位で決め込んでいるようなものではない。だからこそ毎公演同じものはふたつとない、ライブ感溢れるものになっていると思います」
フィリップ・ドゥクフレ
フィリップ・ドゥクフレ
(取材・文・撮影:釣木文恵)
■ダンス・歌・演奏:カンパニーDCA
■作詞・作曲・演奏:ノスフェル、ピエール・ル・ブルジョワ
あいちトリエンナーレ2016
■日時:10月15日(土)19:30、16日(日)16:00
■会場:愛知県芸術劇場 大ホール
■公式サイト:http://aichitriennale.jp/artist/companydca.html
■日時:10月22日(土)18:00、23日(日)14:00
■会場:りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館 劇場
■公式サイト:http://ryutopia.or.jp/schedule/16/1022t.html
■日時:10月28日(金)19:00、29日(土)15:00、30日(日)15:00
■会場:彩の国さいたま芸術劇場 大ホール
■公式サイト:http://www.saf.or.jp/arthall/stages/detail/3602