21周年を迎えるイベント『zettai-mu』の主催者・1945 a.k.a KURANAKAに訊く
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『Exodus Island 2016』
1995年から続くイベント『zettai-mu』。そのリゾートバージョンともいえる『Exodus Island 2016』が、9月3日(土)・4日(日)に鳥取県は小沢見ビーチで開催される。邦楽アーティストではTHA BLUE HERB、SHING02、DJ KRUSH、BOREDOMS、AUDIO ACTIVE、こだま 和文、三宅洋平、Dry & Heavy、REBEL FAMILIA、OKI DUB AINU BAND、ZAZEN BOYS、toe、 jizue etc……。洋楽ではジャー・シャカ、ディーゴ(4 Hero)、ザイオン・トレイン、アバ・シャンティ・アイも『zettai-mu』常連の様子。他にも、フライング・ロータス、バトルス、マッド・プロフェッサー、マニュエル・ゲッチング、ロニ・サイズ、システム7、アタリ・ティーンエイジ・ライオットといった、列挙すればキリのないビッグネームが並ぶ。そんな今年で21年目を迎える『zettai-mu』を主催する、1945 a.k.a KURANAKAへ先日行われた『SUN LIFE』の模様も踏まえインタビューをしてきた。
『Exodus Island 2016』
――21年って人がひとり成人する年月ですが、その中で印象深かったエピソードを教えて頂いてもよろしいですか?
THA BLUE HERBの最初のツアーをメイクしたのが『zettai-mu』なんです。その関係で他人の力を借りずに、音と言葉だけでのし上がって来た彼らが、初めて他の人に言葉を求めたというか、CDのコメントを書かせてもらったのが俺達だったんです。他にはAUDIO ACTIVE、Dry & Heavy、O.N.O、REBEL FAMILIA、GOTH-TRADらの最初のツアーも同じくだし、数多くの海外アーティストの来日公演などのサポートをしたり、ダフト・パンクの初来日や、リー・ペリーと一緒にツアーを回ったりしたね。
『ZETTAI-MU 12th ANNIVERSARY '07』
『 ZETTAI-MU 13TH ANNIVERSARY '08』向かって左から、1945 a.k.a KURANAKA、こだま 和文、DJ KRUSH
『ZETTAI-MU』向かって左から ADRIAN SHERWOOD、1945 a.k.a KURANAKA
――今まで続けてきて、イベントへ来る客層やその変化ってありましたか?
初期は、クラブミュージックから新しい物好き、レゲエ、ヒップホップ、ハードコア、テクノ、トランス好きなど、いろんな奴らが混ざって押し寄せてて、あらゆるジャンルのお客さんがたくさん来てましたね。そんな時期が5年くらい続いたのかな? その当時の時代の溝にフィットしてたんだと思います。
――ジャングル・ドラムンベース・サウンドシステムを先駆けてたイベントだなという印象が強烈にありました。
それからルーツ寄り、レベルミュージックの色が濃くなっていったりしながら、最初の15~16年はナチュラルに進んでいって。思ってるより遅いペースではあったけど………いい感じで成熟していってると感じてましたね。
『明宝レゲエフェス』
『look up jp』
――成熟という言葉は、歴史無しにはなかなか出ない言葉ですね。
でも5年前の震災以降、世の中がガラッと変わったかな。アベノなんとかや少子高齢化が表立ってきたタイミングともかぶったり。震災がきっかけで今までの都会での生活サイクルを考え直して“人らしい生活”を求めた人達、家族を持ったり、親を介護しなければいけなくなった者、みんなそれぞれ故郷へUターンやIターンなど、もう少し穏やかな場所に移住したり。そんなこともあって、ちょうど通ってくれていた人たちは夜中の街にくり出すって事が少なくなってきた気がします。それに加えてもう一つ、少し理不尽さをぬぐいきれない風営法での取り締まり等の一連の動きも同時期に重なってたね。
――それらが重なって転換期になったんでしょうか?
そう、もう数年経てば当時と似たような形に戻るかも知れないけど、元に戻る事はないと思う。また新しい形に。音の廻りに人が集まって踊ったり話したり、お酒を飲んだり騒いだり。衣食住のそのあとくらい昔から続いてて、もちろん呼び名や場所なんかは変わるけど、人が生きる中で大切な場所だと思ってますんで。
『EXODUS ISLAND FESTIVAL 2012』
――その他に影響を与えてると感じる流れはありますか?
(前述以外の)その他の大多数は、全体的にはより安定志向が強まり、自分で何かを選択し、行動する感じが無くなってきたような気がするかな。何となく、20~25年程前の海外のブランドを買い漁っていたあの世代の雰囲気に似てる感じがします。自分で選べない、自分がない感じが……。そんな中で少しずつ集まってはじまったのが自分達だと思ってるんで、また若い人らも“鬱憤”貯めながら何処かに(それは ネット上とかかもしれへんけど)集まってると思ってます。
――長い目で見て自分で考えて行動を起こしだした人、逆に長いものに巻かれて安心してる人という、二極化が起こってるということですか?
安定の定義もいままでとは変わっていってる気がします。でもこんな不安定な世の中だからこそ、従来の枠組みの中にいる方が安定しているからその中でなんとかなろうと頑張る人もいるし。例えば、大きいステージに出るとか、海外でやってるとか、雑誌に載ったり、TVに出たとか、何とかのチャンピオンとか……でも、自分が感じて動いてないような気もするんです。自分のチョイスに自信が無い感じがバブルの時代に似てるなって。勿論良い面もあるからそうなるんだけど。その中にいて疑問を感じつつも大多数に選ばれる為に、自らのポリシーと葛藤しつつも柔軟になり、自分の意図に反しながらでも売れる道を選んだ、選ばざるを得なかった人達も勿論いるしね。
――他人の価値観で立ち位置を確認して安心したり、そのことに疑問を持たないままの人もいれば、そこの歪みを分かった上で選んでる人もいるということですか?
人それぞれの状況ってものがあるから、どちらが正しいとかはないんですけど。一番変わったと感じるのはやっぱり、震災以降、人の気持ちが大きく変化したことじゃないかなと。
――“人の気持ちの変化”というところがとても興味深くありますが、複雑な部分ですね。
これが影響かといえばとても曖昧だけど、そんな状況だからこそ俺たちのスタンスは変えず、ブレず、惑わされず、目先のあれこれに眩むことなく続けて行こうと思います。
『exodus2012』
――社会の刹那的な部分も受け入れた上で、 時代を俯瞰で捕らえ冷静に分析しつつも、確固たる自分のポリシーでもって確実に歩んでいらっしゃるんですね。逆に、変わらないことって何かありますか?
相変わらず毎日バタバタしてること(笑)。
――音楽の21年間を通してみると、社会と音楽シーンがリンクしているのを感じることができました。話は変わりますが、9月3日(土)・4日(日)で鳥取県小沢見ビーチで開催される『Exodus Island 2016』についてお話しを聞かせてください。大阪の名村造船所や京都の日吉の森、東京ではAgehaでやったり、沖縄では屋我地島、今回の小沢見ビーチなど、いつも新しい土地をうまく見つけてこられますよね。ロケーションへのこだわりはありますか?
何か起こりそうな場所、ハコや地元の方の協力が得られるところかな。サウンドシステムを運営してるクルーや離れた土地でも仲間と呼べる連中が日本中、世界中にいるから、各地でやることができるんです。
――そこの地元の人と交わり、頼りながら、イベントとその土地を盛り上げていけるのはお互いにとっていい関係に感じます。
それと、近年は(先述の)都市を離れた(来れなくなった)人たちの元へ“音や踊りを運んでる”という感覚もあるかな。そういう人たちはここぞとばかりに集まってくれたり、協力してくれたり、集まる喜びを感じてくれてて、そういうのをみるとやってて気持ちいいですね。関西在住時よく通ってました!って人たちもたくさんいる。
――20年前から現在まで、“人”を大切にして続けていらっしゃってるんだなぁと改めて感じます。
『zettai-mu』で繋がったアーティスト同士が新しいものを生んだことも沢山あるし、お客さん同士で結婚して家族を持った人もたくさんいて、今回の『Exodus Island』や『SUN LIFE』に、そんな人達が家族・子連れでまた足を運んでくれるよう願ってます。
『On-U Sound's 30th Anniversary 9th Dec 2012 at SOUND MUSEUM VISION』
――最後に、ネガティブな意見が多く叫ばれる今の音楽シーン全体について思うところをお願いします。
CDや箱の売上が減ってるとみんな口を揃えて言うんやけど、音楽自体は、ネット上やダウンロードでは桁違いに増えていて、ホームパーティーみたいなことや、野外のイベントも昔より増えてますよね。家やレストラン、バーにターンテーブルがあったり、いろんな民族楽器や古典的なことをやってる人も多い。ダンスとかも習い事の一つになってたりと、人生に音楽が溢れてる感じがしてポジティブに捉えてるよ。むしろ、生活の中に音楽が増えてるんだ。
実は聞いた話の中で、書きたいが書けないことの方が多かった。関わってきたバラエティに富んだ仲間たちの話、海外での活動の話をどっしりと構え、表情はあまり変えずに驚きの事実を淡々とゆっくり語ってくれる姿は、虎視眈眈と先を見据えているようだった。
シーンに長きにわたり存在し続け、今も、そしてこれからもシーンを牽引しつづけるであろうクラナカ氏と『zettai-mu』。次の9月3日(土)・4日 (日)の『EXODUS ISLAND』は、現地の野外フェスティバル『SUN LIFE』クルーと共に新しい土地での新展開となっている。鳥取県に位置する小沢見ビーチは、海は驚くほど透明で、山もあり、自然の地形でくるっと囲われた、まるでプライベートビーチの様な環境となっている。多彩なアーティストラインナップの他に、フードやアサラト、ヨガといったワークショップやライブペインティング、スケートランプといった様々なカルチャーが混在している。
ロケーションは間違い無し。『zettai-mu』のセンスに疑いなし。 気になる方は9号線を辿って『EXODUS ISLAND』という夢の島へ足を運んではいかがだろうか。
インタビュー・文=zakkiiee
日時:9月3日(土)9月4日(日)
会場:鳥取県 小沢見ビーチ
■アーティスト
:PAPA U-Gee / 土生"TICO"剛 (Little Tempo) / RITTO / Soft / KURANAKA a.k.a 1945 / LEF!!! CREW!!! / HIKARU(BLAST HEAD) / Kihira Naoki / NAGAN SERVER+YASA(KREEK)+Shoichi Murakami(U.K.N.D) / THEUS(Doppelgenger+武田充貴) / CROSSBRED / KETA RA / MASA a.k.a Conomark / SHIHO the purplehaze / 東京月桃三味線 / halptribe / 白檀 / 鴨印振族 / Coumoly&HandsomeBoy / TARAWAH CRYSTAL / バンヤローズ / JAH93 / DJ KENROU / Yuu Soultime / kiyoca / 符和 (√9) / GREENWORKS / Dayzero / DJ ZEN / DJ NAGA / 2-shanti / KUSU aka KAZOooS / FALCON / HALYA / EY / シャンハイ
■SOUND SYSTEM
:原田音響
■DECO / lighting / VJ
:EKRAN / ONA / Zetc deco / unlight / 中LA / gaku (ひょうたんランプ) / 福島製材 / 今尾 拓真 / G.R.L.S
■LIVE PANT
:ASA3000 / 坂下 明日香a.k.aアス画
■WORK SHOP
:YOGA by Shiho Miyawaki / アサラトワークショップ by 鴨印 / うちワークショップ by アス画
■BEACH SIDE THEATER
:上映会 by ふろむあーす / HOME 空から見た地球 / 戦争のつくりかた
■NATURAL VENTURES / ACTIVITY
:CAMPING !!! / SKATE BOARD RAMP !!! / シュノーケリング / サーフィン / パドルボード / シーカヤック !!! / 海水浴 !! / Outdoor cooking !!