10代のリアルが響く、Amaryllis Bombのツアーファイナルを見た

2016.9.2
レポート
音楽

Amaryllis Bomb

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Amaryllis Bomb 2016全国ツアー ~ハリケーン~
2016.8.20 duo MUSIC EXCHANGE

ライブを見る前と見た後でこれだけ印象が変わった対象はなかったと言うぐらい、最初に謝っておきたい、「Amaryllis Bomb、舐めてました」と。それにしてもYouTubeから広がったラップグループのシーンに対するファンの熱量たるや。会場に入った途端、女子中高生の熱いまなざしと、彼らのテーマカラーである赤と青のペンライトが目に飛び込んでくる。今回のツアータイトルをプリントしたフラッグにはファンの寄せ書きがみっちり書き込まれている。そしてライブなのだが、彼らのYouTuber仲間たちが若手漫才師も顔負けの前説と物販紹介で援護射撃しているではないか。ファンにとっては当たり前の光景なのかもしれないが新しい……。

タケヤキ軍団 / デカキン

客電が落ちた瞬間の悲鳴にも似た黄色い声援の中、映像は今回のツアー各所のスチール写真が投影され、続いてトラクターと軽トラに乗ったゆうこんとサグワがこれから始まるライブがガチな勝負であることを示す(示している、んだよね?)。

そしていよいよ二人が登場。ゆうこんはベレー帽にサングラスとオシャレな感じで、サグワは赤い髪にヘアバンド、Tシャツをタックインしたスタイルで二人の対照的なキャラクターも際立つ。そこに投下されたのがツアータイトルでもあるアッパーでシンセポップなムードもある「ハリケーン」。<何が正解なんて分からない だからやりたい様にやれ オーライ!!>というリリックが、音楽シーンがどうとか、ラップはかくあるべしとか、あらゆるルールをすっ飛ばし、自分たちとファンにとってのリアリティで駆け上がってきたAmaryllis Bombを象徴するようで痛快だ。

ゆうこん

サグワ

ゆうこんが「普段引きこもってるYouTubeを見てる人ばかりだと思うんだけど、まだまだ行ける?」と冒頭からフロアを気遣いながら煽るという高等戦術なMCをかまして、アッパーテイスト満載な「Let's get it on」に突入。どの曲も抜けのいいクリーントーンのゆうこんとドスの効いたサグワの声の対照が聴いていて楽しいし、二人とも大きなアクションでステージを目一杯使って曲を表現する。ほとんどペース配分なんて考えてないようなテンションだ。

そして、まるでマリオみたいなちょびヒゲDJとちょびヒゲマーク2の二人もサンプリングボイスで「おめでとうございます」や、曲のスタート時に「時間切れです」とか、小技を入れて笑わせてくるのも楽しい。初見でも十分楽しめるエンタテインメントが成立しているのだ。

Amaryllis Bomb / マホト

マホト

そして二人が登場した時以上の歓声がスペシャルゲストの登場で沸点に達する。目下活動休止中のカイワレハンマー、そしてquad4sのメンバーでもあるマホトとの「JOKER feat.BEMA」、続いてimigaとの「オーバードライブ!!! feat.imiga」という豪華な二連発。ゆうこんもサグワも先輩を立てながら果敢に攻める。

imiga

Amaryllis Bomb / imiga

さらに夏らしさ満点のEDM×ダンスホールレゲエ調の新曲「夏 da Rock on」では、フロアにビーチボールや浮き輪を投げ込んでのお祭り騒ぎに。こういう気取らない演出もらしさ満点で、ファンの参加感を盛り上げる一因になっていた。一転、シリアスな内容の「STAR ANTHEM」、ピアノサウンドがメロディアスで<もう戻れない日々と通学路>というタームがやけにしみる「REFRAIN」と、彼らの詞・曲の良さをじっくり味わえる場面もあった。

ゆうこん

矢継ぎ早に様々な要素を盛り込んでくるステージには、紅一点のじぇにー。がまず呼び込まれ、再びカイワレハンマーを始め、仲間たちオールスターが全員集合しての「School Bag 2 The Live」。キャップに三つ編み、オーバーサイズのツアーTシャツといういでたちのじぇにー。への女の子からの「かわいい!」コールも絶えることがない。そしてAmaryllis Bombとじぇにー。で新曲も披露。さらにじぇにー。がソロで圧倒的なボーカル力とパワフルなダンスでフロアをバウンドさせて、ライブの流れに女の子目線のストーリーも作り出したことは、Amaryllis Bombの世界観にとってもいいフックになったと思う。

Amaryllis Bomb

Amaryllis Bomb

サングラスを外したゆうこんと、白いツアーTシャツに着替えた二人が再登場して、各々「ツアー回っていろんな気持ちがわかりました」とゆうこん、「始まる前はめちゃめちゃビビってたけど、今は終わりたくねえ~!」と叫ぶサグワ。ラスト2曲はJ-POP的な曲の良さで聴かせる「Take off」、そしてスクリーンに字幕も映し出されて、さらに感動が増した人気曲「花言葉」ではサビのシンガロングがその場にいるすべての人の感情を含んでどんどん大きくなっていくのが分かった。

サグワ

ゆうこん

Amaryllis Bomb

刹那的な楽しみも、学校生活のモヤモヤも、未来への不安や期待も、今の10代のリアルに特化して歌うことで、面白くてイケてるちょっと身近な人気者から、実は相当、ラップユニットとしてもオリジナリティを高めていたAmaryllis Bomb。ノー・ギミック、生身の二人のラップと曲の良さで走りきった本編は清々しいほどの全力投球だった。

Amaryllis Bomb

アンコールではサグワが手持ちでCO2を撒き散らしながらの「Who fool」が、ソウルっぽいゴージャスなネタ使いの派手さをさらに加速させ、最後の最後に再びこのツアーのテーマ曲とも言える「ハリケーン」をオープニングを上回るタオル回しとともに賑やかに締めくくった。ツアーをやり遂げた二人がステージ上でハグすると、さらに大きな拍手と歓声がしばらく続いたのだった。

ちなみに次回ワンマンは12月26日の恵比寿LIQUIDROOM。一瞬しか投影されなかったこの情報に、再び悲鳴が上がったのは言うまでもない。


取材・文=石角友香 撮影=大橋祐希

Amaryllis Bomb

 
セットリスト
Amaryllis Bomb 2016全国ツアー ~ハリケーン~
2016.8.20 duo MUSIC EXCHANGE

1. ハリケーン
2. What's up
3. Action
4. Let's get it on
5. JOKER feat.BEMA
6. オーバードライブ!!! feat.imiga
7. 夏 da Rock on
8. STAR ANTHEM
9. REFRAIN
10. School Bag 2 The Live
11. Vntitled
12. After School!!
13. G3
14. Take off
15. 花言葉
[ENCORE]
16. GGOOD DAY
17. Who fool
18. ハリケーン